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スクランブル交差点で
あんなに密になって
からだをぶつけあったのに
ほんの数秒あとは
知らないひと
彼らにも
胃袋があり
腹もすくだろうし
彼らにも
青臭い過去があって
初恋に ....
子供のすがたのまま
死んでゆけたなら
毎日が
暑い夏の午後で
おわらない
夏休みのはじまりであってほしい
冬を越えるたび
人は年をとる
心に積もった苦悩や悲しみを
顔のしわに変え ....
首を垂らして歩けば
私の影で縁取られた道路が見える
雨上がり、ミミズが這い上がって
そこいら中でダイイング・メッセージ
無性に腹が立って
傘をぶん投げる
私のこと、好きになってくれよ
先生が窓を開けた
宇宙に抱かれた教室は
零れそうなほどたわわに実った星の下で
たった一棟
冷たい風を鼻孔に満たして
それは冬の前兆
そんなにおいがした
つゆは丸く形をつくって
朝陽を微かに帯びる
土が膨らみ そこから
産毛の生えた芽が覚める
畝を越えて川を走り
山を駆けて峠をとびこえ
叫び声をあげて黙りながら
静かに賑やかに厳かにばかば ....
日焼け止めを嗅いで思う潮のにおい
白黒はっきりつけようじゃないか二の腕の日焼け
日焼け対策を怠れば手の平手の甲まるでお猿のよう
腹だけは未だ純白のままビキニなんて着れないもの
背中はノータッチ ....
赤ん坊のころは一日が途方もなく長かった
太陽の落ちるスピードは メリーゴーラウンドのようにゆったりとして
空の模様は 私が目で追いかけられるほどに やさしく変化した
今よりも朝ごはんは時間を ....
だんだんたくましくなって
太くなる脚、腕、首
子供はいつのあいだに
おおきくおおきく成長するのだろう
草が土に深く腰をおろすように
君も精いっぱいの力で生きたまえ
宇宙 果てしない荒野
まっくらやみの孤独の海
きっとそこは
命の源泉でもなんでもなくて
死にゆく命もないから
墓場にもなりきれなくて
ただ 馬鹿みたいに寂しいだけだ
雨の降っている朝だった
雷が近くでうなっていた
ときどき地がふるえ
木がゆるゆる揺れ
小学生が嬉しそうに道をいく
わたしはゆううつだったが
彼らを真似て
ステップを踏みながら歩いてみた
....
ニキビ薬のかおり 通りすがり
名も知らぬ君だけど
成長のにおいは
知っている
あなたの中では
わたしは未だ幼児の姿を保っている
わたしは最近化粧を覚えた
わたしの右脳と左脳が
けんかをしています
頭が悪いのはきっとそのせいです
わたしの右足と左足が
けんかをしています
足がのろいのはきっとそのせいです
わたしの右手と左目が
....
ふたりでどこかに行かないか
夏のプールで見た底の方の傷に僕ら
惚れ込んだら
もうすぐ息継ぎのいらない世界へ
ふたりで見つけにいこう
夏のプールに浮かんだ小さな虫
助けたら
神様がきっ ....
列車が揺れている
私は寒がりなので
毛布にくるまりながら
じっと座っている
ポケットの中には
手に握りしめられた切符が
入っている
行き先はわからない
....
指先は凍えるほど冷たくて
だからストーブの前で解凍しなくてはいけない
笑ったまま冷凍された表情筋をほぐしながら
わたしは新聞に目を通す
なるだけ 幸せな記事だけを選びながら
途中 クジラが座 ....
きな粉を
グランドの砂粒の中に
一粒落としたら
ありんこしか
気づかなかった
わたしは
わたしで生きてきて
せわしなく動く背景のことなど
ひとつも考えなかった
ありんこよ
....