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施設の中庭のベンチで
ゆっくり日向ぼっこする
老人達の独りが
突然立ち上がって何かを叫ぶ
こんな筈ではなかったと
こんな方向でなかったと
こんな場所に来るはずではなかった
こんな終わ ....
碧い海に円く赤い太陽が輝き
青い空には白い波頭が遠望できる
赤い雲のたなびく先には
山の端が曖昧な稜線を見せて消えて行く
樹木は影しか形成せず
息づく季節はすでに過ぎてていた
夜
闇 ....
地中深くに根差した
大きな球根のような欲望と
その真上の中空に漂う
ふわふわふわふわした
空中クラゲのような希望
地上に生えた剥き出しの古木の幹に
粘菌のようにへばり付いた渇望が
すべて ....
武蔵野を行く快速電車
僕の正面のシートに
座る柔らかな君
君が頬ばる、クリームパンの
甘い香りに誘われて
僕の視線は君の口元に
紅をひいた唇に囲まれ
齧られ押し出され
唇の横にへばり付 ....
冬の寒さに身を委ね
凍れる唇に物を言わせようと
北風の中歩き疲れて
坂道の途中
針の枝振りの銀杏並木を
ゆっくり北風に煽られながら
今年の冬も歩きづらく
また疲れて坂の途中
歩 ....
この子は生まれた時から変わっていた。
どう変わっていたかってのは
ちょっと目に分からないくらい変わっている。
何が楽しいのか、絶対に笑わない。
笑わないってのが、また、一つの何なんだが
ニッ ....
鉄の街
街全体が銀色だった時期はとうに過ぎ
今錆び付いた茶褐色の空の色
その下に拡がる灰色のビルディング
アンドルーカーネギーの成功物語
全ては大陸横断鉄道から始まった。
鉄道レールの国産 ....
薄暗い博物館の
階段下脇に
上半身だけ
腕組した文覚像
見開かれた眼
何思うか苦悩と孤独
愛するものを過失で殺害
無念無残悲惨
結ばれない愛の曼陀羅模様
遠めで見ればほんの一 ....
楡の巨木の根元に深くて暗い穴、ジメジメとしたその穴からボーッと発光した球体が風に揺らいで漂い出てゆく。枝先の梟の眼の光りが青く輝く。闇夜のはずだが森のそこここに光る小動物の眼を気にしながら、巨人はゆっ ....
酒の呑みたい宵は
白木のカウンターの前に座り
白いぐい飲みに熱燗を注ぎ
肴のへしこを小皿からつまんで
口に入れて噛み締めて
ゆっくり熱燗を口に含んで
昨日のことなど思い出しながら
グビリ ....
大内峠から徒歩で
大内宿の街道往還に出たとき
秋とは言え、紅葉も落ちかけの季節は
旅人の心も体も
芯から萎えさせ冷たくさせる。
街道沿いの落ち葉を踏み締め
漸く視界が開けたところは大内 ....
黒猫は廊下に佇んで、
じっとこちらを観ている。
部屋の中にいても落ち着かない
餌をくれてもあまり食べない
探し回る 探し回る
自分の目が開く前から
抱いてくれた母親を
不 ....
その食堂はうらぶれた路地裏にあったが、薄暗い路地にその食堂の入り口だけ煌々と灯りが点っていた。いつでも結婚式が行われている。食堂の食材は何処で調達したか、随分と脂分の多い肉と水ッ気のない葉野菜と萎びた ....
疲れた眼を開けると
目の前の街路にわさわさと
夥しい数の奴凧が
尻尾を引き摺ったまま
蠢いている。
大きいのやら小さいの
赤いのやら黒いのや
斑模様やら縞模様の
真丸のやら楕円 ....
今日の終わりの夕暮れに
街は開店前の呑み屋のようで
ぽっぽっ ぽっぽっと
灯が灯る
昌平橋から見上げる高架
縄のれんのような柳の木
ぽーっと灯る提灯脇に
昭和の夕暮れ 宵の口
....
絶望的な奴って
絶望的な奴と何かを食べることは出来ない。
栄養を取る必要がないからです。
絶望的な奴と勝負事は出来ない。
失うものが何も無いからです。
絶望的な奴と酒を飲めない。 ....
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