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鏡を上に向けすぎた昼
映らない
何も
映らない
雪が径をすぎる
さかな ふるえ
背びれ 夕刻
自ら 光の個のほうへ
応えをしまい
さらに しまう
....
椀に触れたことのないくちびる
樹液のにおいのくちびる
人を知らないくちびる
ひとりを生きてゆく手のひら
人の姿をした冬の
はじまりと終わりが並んで立ち
木々が途 ....
夜 窓に至る暗がりに
幾つかの鉄柱が立っていて
ここからは月の檻です
と言う
長い長い髪の毛が四本
自分が髪の毛だと知らぬまま
夜に絡み
そよいでいた
....
ひとくちの水ほしさに
幽霊は夜に立っていた
眠りと死の違いを
未だわからぬまま
あらゆる終わりに優しさは無く
ただ悲しみばかりが晴れわたる
舟漕ぎ人夫の
沈みゆく ....
左目の時間は遅くなり
右目は知らぬふりをする
雪になれない雨の日々
径に生える短いまぼろし
冷たい水のかたちたち
好きと同時に嫌いながら
指の数を限りなく
限 ....
髪と髪が触れ
影になる
風のなかの粉
砕けて光る
ざわめきを登りつめたところに
廃線の花 水に浮く葉
ひとつひとつの滴に残る
まばたきの水紋
打 ....
消えない泡と見えない泡が
手をつないで終わりを見ていた
おぼろな背中 光の蔽い
けだもののかたちの曇を見ていた
指を灯す指を絡め
指を照らす光を見ていた
歪ませ ....
人 人 おまえは
ひと
噛み砕き
噛み砕かれ
野にあいた
暗い穴の淵に横たわる
天気雨
小さな蜘蛛が隠れる場所
風が
少しずつ少しずつ
強くなってゆく
....
握られ
ねじられた硝子の器から
水があふれつづけていた
指のかたちの溝を
無音が浸していた
樹の傍らに立つ鏡
どちらにも在るもの
片方にしかないもの
片方から片 ....
夜を分ける汽車が来て
雨の端を轢いてゆく
描きかけの絵が
窓のそばで震える
水たまりの空が
雨を見つめる
現われては消える
影を見つめる
空のすべての鐘が鳴 ....
窓に付いた
紙のきれはし
水のように光り
兆のように消えてゆく
浸透圧
立ち止まる
有るか無いかの
はざまにまたたく
鱗がひとつ
水から離れ
羽根に ....
柱 文字 からだ
数千年の空の筒
蜘蛛の巣の雨
冷たい青
はらいのけては肌に生え
夜明けを夜明けに呼ぶ鉛
炭の地平に羽と浪を描く
真昼の軍政
砂とささやき
....
水底につづく階段
溶け残るつらら
午後を咬むつらら
羽のしぐさ
空のひらき方
指をのばして
そっと試して
ひとつだけだよ
裏通りの声
違う人の 同じ言 ....
鏡の裏に灯る鏡の
違わずに違うゆらめきたち
午後を夜にわたす道
満ちた花を踏みしめる道
窓のむこう
緑の雨
誰のためでもない
三重の檻
冬につらなり
....
長靴についた雪をとり
鉢植えの土に撒いたら
左目の下を葉で切られた
しばらく無言で
見つめあった
わたしは誰も見ない
そんな声を
聞いた気がした
....
灯から生まれる水が
夜の路を照らす
壊れるほどまぶしく
消し去るほどまぶしく
同じ速さで遠去かり
同じ間隔に並ぶ柱に
隠れては隠れては現われる
互いを互いに映し出 ....
点滅する光を舐め
月を背負い 歩き出す
鉄の地図に描かれた目
錆の花にひらかれる
十一月と十一月
灰と白と黒
入り江の星や
声の星
鏡の前の窓
映すも ....
窓から窓へ
夜は動く
夜に夜を重ね
またたく
冬の水の上
羽の羽やまず
午後の双つ穴
昇るはばたき
わたしはわたしに到かない
水彩のまわり道
夕べは ....
雨が光になるときに
置いてゆく穂は十の色
水銀の譜の散る窓に
まぼろしのかたちが来ては去る
爆ぜては透る
限り ....
無音のたかまり
雨の明るさ
仮の明るさ
とりとめもなく
ふたつに増え
やがて無くなり
やがてひとつ増え
真横をすぎる
雨の遠さ
真上に至る
....