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なんとはなしに眺めていて
思ったのだが、
このなんでもない
あたりまえの数式を
はじめに考えたものは
偉大であったのだと思う。
はじめにつくりだすことが
いか ....
{引用=音}
拾ったノート
裂かれた紙片
路地裏で思案する
この筆跡は、
群青に滲むヤドカリの砂
いまに消える声
ゼンマイの破片
砂利に、ちいさな仔犬
....
いたいけな こ を
いだくなら
いたみなど ない
いだくなら
いだかれてしまうから
いだいな なにかに
当然のことながら、言葉は、場所を換えるだけで、異なる意味を持つ。筆者の詩句を引用する。
ひとりがぼくを孤独にするのか、
ひとりが孤独をぼくにするのか、
孤独がぼくをひとりにするのか、
....
ズズズズズズドンッと
とつぜん、学校が
手足をのばして
立ち上がる
で、ドドドドドッスン
ドスンと、しこを踏むと
走り出した
窓から、扉から
子供たちがこぼ ....
早朝散歩を昨日から始めた。昨日も今日も雨。そして今日は寒く、防寒着を着込んで歩いた。たぶん霧の先の見えない山々は白くなっていることだろう。たぶんだが、この寒さを予知してカメムシの越冬隊がおびただしく ....
鳥たちに怒られながら、桑の実を摘む
抱えたボウルに次々とほうりながら
これは私のものよと、何度言っても怒られる
何度も何度も、鳥たちは同じことを言う
こちらも負けじと言い返す
だけどすぐに疲 ....
おおきな
朝日を 笑いながら
数えきれない鳩が輪になって
時の繋がりが聴こえてくるような
羽根を打つほどうつくしい游び
壁にぶつかるんじゃないか
そしてそのまま吸いこまれ ....
ゆたかな木
夏の雲みたいにわきおこる
しずかに立っているようで
たくさんの声をもつ
ゆたかな木
鳥たちの翼を夜からまもり
どんな風も受けとめ
星のひかりに運ば ....
眠るように死にたい
そう願うのは人間だけじゃない
夜行性の雀蛾や鼬鼠
僕と私
昼寝する象海豹だって同じこと
真夜中に他人目(よそめ)を避けて歩く人々に万歩計は要らな ....
現フォ投稿は週一のノルマを期していた。が、最近は登山道除草に追われ、且つ勤務仕事の山林仕事で日々困憊し、活字を書く気になれないでいる。詩などを書いてみようとキーボードを打ち始めては見るものの、まった ....
では、始めましょう
暗い場所にいますか?
ウブスメを母に持ちましたか?
そうしたら私は祈ります
鈩を穢して聖油に礼拝せよと、礼拝せよと言いましょうせ
でも、あなたはどうでしたか? ....
汚れた指で、
鳥を折って飛ばしていました。
虚ろな指輪を覗き込むと、
切り口は鮮やか、琺瑯質の真っ白な雲が
撓みたわみながら流れてゆきました。
飛ばした鳥を拾っては棄て、拾っては棄て ....
わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである。
(ルカによる福音書五・三二)
目がさめると、アトリエの前に立っていた。
──子よ。 ....
高校の嘱託講師から予備校の非常勤講師になってしばらくすると、下鴨から北山に引っ越した。家賃が五万七千円から二万六千円になった。ユニット・バスの代 ....
氷の季節には回虫も動きを止めていた
突然太陽が暴れだしたのでリンコ/僕は逆らうことを諦めた
ゆるせないのは涼しい顔をして腹の虫を肥らせていること
弱虫と見せかけて強い者には抵抗し、さらに ....
子どもが さけぶ 肺をからにして
名前を奪われた 動物を確かめ
さけぶ こめかみをふるわせ
おなじ靴、おなじ服
好きになれない 名前 みなひとまとめに
ぬぎ捨て駆ける
さ ....
月の夜だった。欠けるところのない、うつくしい月が、雲ひとつない空に、きらきらと輝いていた。また来てしまった。また、ぼくは、ここに来てしまった。もう、よそう、もう、よしてしまおう、と、何度も思ったのだ ....
ちいきをまもる
ぐりりとぐらら
りんせんたいせい
すいかのもよう
ちゅうかんかんりの
ぐりりとぐらら
りそうのゆめは
すぐそこなのに
ゆめのような
うつつのような
....
新聞屋は忙しい
その日のうちに記事を書き上げて印刷する
日が明けてまだ暗い夜明け前、遅くとも2時までには配送される
各々集積所から各家庭に配らなければならないからだ
だからといって投稿欄の ....
人魚の名前が アリエルだとしたら
膿ばかり見てきた こんなアリエルも 有り得る
膿には 国境はない
膿には清濁も いっしょくたん
わけることのない暗い世界で
大波小波 ちぢにみだれ ....
失楽園後
マザーグースを
読み終えたばかりの女は
膨れたお腹を撫ぜながら
私ももうすぐお母さんになると
今までのことも忘れて
失楽園後の日々のなか
大変だったことも忘れ ....
水を引き 平城山宵の 月を溶く
谷田平田に 降る人の声
みずをひき
ならやまよいの
つきをとく
たにだひらたに
ふるひとのこえ
石上 其の稲穂に 乗り移る
現 ....
たしか稲荷駅だと思うんだけどね
母と別れたの
電車が動き出すと追いかけちゃって
祖母がね
血は繋がっているのだけど
義理の祖母がね
手を掴んで離さなかったみたいで
うっすらね
うっすら ....
二〇二一年四月一日 「時のいたみ」
ロマンティック時間SF傑作選『時の娘』の5作目は、バート・k・ファイラーの「時のいたみ」10年の歳月をかけて時間旅行したのだが、それがあまり役に立たなか ....
【性的・暴力的な表現があります。ご理解の上、ご閲覧をお願いいたします】
わたしは、生を受けたということがおかしいのです。
母の名前は蝶、きらきら光る目をした人でした。
わたしはあか ....
サザエさんの一家ならソフトウェアにしのばせて歩けるやさしい世代だからわかるよね。 クレヨンしんちゃんのママなら浮気してもいいかな。セクシーで小股キレそうだから。あとで毒を盛られてしんちゃんのしてや ....
{引用=
イ短調ロンドの孤独に犬のやうにあくがれて
せつかく育てた{ルビ硝子=がらす}色の{ルビ菫=すみれ}を
ただなつかしく僕は喰ひ尽してしまつた。
失意のかたい陰影を
新緑のプロ ....
目が覚めて一番に 口にした言葉は
くちなし
薫り ゆたかな色彩の白
しずくを 湛えた光沢の葉
無垢を 口にするときの ふるえる くちびる
くちなし
きょういちにち なにを はなすことだ ....
{引用=*筆者より――ちやうどこの時期、十二年書けずにゐた詩作が復活して三ヵ月が経ち、十二年分のマグマの噴出が落ち着いたこともあり、いま読み返すと力が抜けてゐる感があつてそれが良い方にも悪い方にも出て ....
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