仲間達に出遅れたミンミンゼミが
ここぞとばかりに鳴いている
お前にもまた父と母がいて
脈々と歴史を紡いできたのだろう
その鳴き声は明日への咆哮か
先に逝った仲間達への弔い ....
手のひらを
ひらいたとき
いくつもの時間が
そこで死んでいた
顔をあげると
いくつもの季節が
道路のすみで
凍えていた
ふるえる指で
拾いあげた
だれかの言葉は
死に ....
耳を澄ます雨音のように 囁きを飛ばしたい
伝わらぬ心のバリアに すまし顔ではいられない
囁きを幾層も 飛ばしたい
きっとよりも もっと この世とあの世の緩やかな層の彼方に
必ず刺 ....
心は目には見えない
心は耳でも聴こえない
心は手では触れられない
思考でもない 記憶でもない
ただ感情というだけではない
心って いったいなんだろう?
見えない存在 心の在り処
....
「歌いつづければ」
木の若芽
台風が何事もなく過ぎた朝
日が昇り 一掃された世界に光がしみこむと
歌い出す いのちの声
「歌いつづけなさい
書きつ ....
つんと重い土の匂い
くっきりと黄色い
ガザニアの花
が目にとびこむと
くらくらまわる
からだのうら側
脳天のおくに
かゆみのような
眠けをもちつつ
乖離してしまった
うちと ....
満ちていったのは目が覚めるほどかすかなもの
心肺機能でふと知った気配から
あなたは学んだ
初期化された土嚢の丘で
それとなく聞きだした秘密は
もう眠ったのかもしれない
ときおりつま ....
蝶に似た花に
花に似た蝶がとまっていますね
うろこに似た雲が
ここではないどこかから流れてきて
ここではないどこかへ泳いでいきます
そこは空ですか
ええ
海によく似た空です
せ ....
あの時にその口から
とても聞きたかった言葉
あの時に
だれに聞こえても
かまわなかったのだから
吐き出してしまえばよかった
呟き
しなければ良かった
....
世界はやわらかにほほえむ
鋼の構築物は弾力の支点
ぼくたちの内骨格は紅色のスプリングで飾られて
秋の街を歩く
体の直線軸上で世界は右と左に分かれ
感覚器は集中制御室の周辺に配置され
排 ....
肩すぼめて
背中丸めて
でも 指先だけは
常に軽やかに踊らせて…
そんなにいつも
誰かと繋がっていたいの?
アドレス帳には200人
このうちの何人と
本当に繋がっているの?
電車 ....
私は男なのに大概
女の方から誘って来ます。
いつも受けている。
時々振ります。
基本的に皆断わりません。
自分の方が不利になっても
断わりません。
そしていつも振られます。
振 ....
いわれの無い 悲しみは
こどもの頃の 押入れの匂いがするから
布団のすきまに押しこんだ
この目は きっと赤
ともだち
と いう響きの電話の声が
「いまから 出かけない?」と ....
浴室にこおろぎがいた
おまえ、どこから入ってきた?
こんなところにいたら
いずれ泡にまみれて死んでしまうよ
ここは地獄のお湯屋だよ
どこの世界にも
ちゃんと生きているつもりでも
なぜ ....
仕事 変わって と
頼むよりはやく移動してくる人
ちょっと待て この間この作業は向かないと
変わったばかりなのに また少し嫌や所にふられて
そそくさと戻ってくる 私は あっけにとられる
....
手がふれる、という覚悟と、手がふれた、という諦念の間には、ほんのわずかの隙間があって、わたしはだいたいそこいらへんに住んでいるのじゃないかと思う。わかっていながら、実在に達しない、その、なんとも。 ....
真夜中
娘の背中をさすりながら
ただ一心に祈る
他に何も要らない
何も要らないから
ただこの子の咳を治して下さい
今この瞬間にも
地球上のどこかで
同じように子を抱きながら
....
いつも猫ばかり見ている
静謐な佇まいに時を忘れ
衝動のまま自らを由とする様に息をのみ
猫という美しい獣に憧れ続けている
わたしは悲しい犬
どれほど否定しようとも
....
逆立ちしたくなって
雲の底をひっくり返して
ごっちゃんですの青い空鍋
てんやわんやのこの前の出来事も
ごっつり煮詰めてしまえば
薄味醤油がたっぷり染み込んで
こってり泣き虫だっ ....
あまりにも以前に用意されていた絡繰が
突然に動き出す
始まりがなんだったのかなんて
考えるすべもなく
荒野に差す陽が翳り
僕たちは身を寄せ合う
一番柔らかな産毛を逆立て
震える無 ....
ふくらみかけているのに
信じることからさけていた
体中に細い針がいくつもいくつも刺さって
抜いては星の砂の中へと仕舞った
他人も自分も
自分も他人も
打ち寄せて返す ....
嬉しいことはそんなにないのに
悲しいことはいっぱいある
その悲しみはひとそれぞれだけど
だれもがその悲しみを背負い生きていく
でもその悲しみはひとの悲しみを教えてくれる
だからだろう ....
じやんけんぽんで
きみがさきにゆく
あたしがおいかけて
弱いあたしはどんどんきみにおくれる
歩道橋から君が消えてゆく
そんな君とあいかわらずあたしとあのころのまま
遠い
元気 ....
カーッ カーッ カラスが
近所中に響き渡る声で
仲間に何か伝えてる
ピュー ピュー 小鳥のヒナが
か細い声で おかあさんに
ごはんをねだっている
ミャー ミャー ふけネコが
でか ....
あなたがくれたのは、ムーンストーンのピアス
ほんとのお月さまがなくなったら寂しいだろ、だって
ちょっと救われた、そんなこと言わないけどさ
※ちょっと蛇足
日常が
あまりに慌ただしいと
しずかにしている
しは書かない
こころに
隙間ができると
ことばで埋めようとする
そういうしは
少し語彙がかなしい
こころに
刺激があると ....
アクセルを踏んでスピードをあげる
普段は開けない車の窓を開けると
夕凪の匂いがふわりと香った
あぁ、なんて心地よい
名前は過去に置いてきた
積み上げてきたものは全部
トランクの ....
「旅人よ
うしろには
できたばかりの
道がある」
道はあるけれど
道は何も語らない
歩いてきた道を
ふり返って見つめたりはしない
つぎの一歩をふみだすたびに
その前の一歩は
....
私のDNAの塩基配列に
「ケ・セラ・セラ」という
遺伝子情報が組み込まれている
膨大な螺旋構造の宇宙には
母から降ってきた星屑が潜んでいる
突然の父の入院で
しばらくぶりに会った母 ....
肌寒い中、歩き始める。
重い荷物を抱え、風を受けながら。
それはなぜ?
愛しい人に逢いに行くため。
途中、何度も躓きながら駅に向かう。
幅狭いバスも、朝早い時間でも外で待 ....
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