頬を撫でる男の手は熱い影でできていて
影ってゆく白い女の左頬を震えた手で包んだ
歓びのあまり震えが止まらなくなると
月の女は夜空に幾千の氷菓子を抱きかかえ
男を待ち焦がれているというのに
....
君がいくつもの言葉を
ひとつの親指で
文字で刻んでいく頃
僕のいくつもの淋しさが
ひとつの羽となって
冬の凍った湖に帰って行く
鳴いているかい
僕が人差し指でなぞった
吐息混じ ....
けたたましい目覚ましの音で
新しい一日が始まる
レプリカントのスタートスイッチが入る
洗濯機がしゃべる
電子レンジがしゃべる
TVがしゃがべっているのは
今日の天気予報
くもりのち雨
....
それは、手のひらでした
空気が冷たくて目が覚める朝
寝床から出るきっかけを作るために
ひとつ大きな伸びをした
ふと指先に感じたもの
腕の中でほんの少し身体をひねる
バランス ....
少し神経質で几帳面すぎる
右手
無骨だけど何故か憎めない
左手
ろくに箸も持てないくせにと
名前すら満足に書けないくせにと
いつも左手をなじってばかりの
右手
何を語る ....
111111
まがじんがらになせられたら、がらんだりんぐらんぐにんぐみんくしんぐりんぐやんぐ、まんぐりにんなにのんぐりみまらりんぐり、たらまんがら ....
3時間過ごしてしまった
音楽を聴いたりぼっーとしたり
おうちに帰ると屋根のうえに
オリオン、おまえならなんて言うだろう
悪ぶってみたけれど
おまえを放っておくオスなん ....
【洗】
洗っても落ちぬ返り血どうしよう 犯人オレだと解ってしまう
【でたらめ】
でたらめに女抱いても虚しくて彷徨っている恋愛砂漠
【蜂】
休もうよ死んでしまえば終わりだよ 働き ....
夜の遊園地で
忘れられたこどもが泣いている
メリーゴーラウンドのうえ
コースターの支柱のかげ
観覧車の箱のなか
夜の遊園地に
忘れられたこどもは
こどもの姿のまま
たそがれ
台所 ....
それは、
自らするものではなく、
自ずと気がつくものであり、
自然と落ちるものである。
そう聞いたことがあった。
ときめきという言葉は、
例えば生きたものを触ったときとか。
新しい玩 ....
「グンジョウイロ?」
オカッパ頭をわずかに傾げ
ほころんだ口元に抜けた前歯をのぞかせる
この子の頭の中には
空の色と水の色しかない
細い指に力を入れて
そらいろの空を塗りつぶす
みず ....
ゆうちゃんは無口な転校生だった
四年生の春に
ぼくのクラスにやってきた
ゆうちゃんと、ぼくは
なぜか気があって放課後はいつも一緒にあそんだ
がっこうは友だちできへんからきらいや。
....
空間耕す
捏ねる時間
香りがいざなう虚空のしらべ
舌の根深く余韻がはためく
はためく蝶の歓びの燐粉
店主の眼差し豆一つ魂
店を出れば空が街が人々が
鈍色の光沢 ....
とある学校のとある教室に美少女転校生がやってくる。
ただ転校生がやってくるというだけでも一大事なのに、しかもその転校生が美少女とあって、クラスは転校生の話題で持ちきり。
とくに思春期の男子生徒 ....
投げたボールの
破片が鈍く錆びて
木々の梢に優しい
アゲハ、あれは
産卵に来た
そしてもう
帰れないだろう
(だから誰かが鳥になる)
(そっと鳥になる)
タイヤの無いバス ....
110922
有馬の殿様
見かけは丈夫
膝のお皿が割れている
謙虚な侍が控えます
何の因果か直立不動
左右に並んで控えます
お殿様と仏様 ....
私の赤い糸は
どこに繋がっているの
早く教えて欲しい。
引き寄せると皆切れてしまう。
赤い糸がないのなら
教えて欲しい。
覚悟するから
その分他の事をするから
無駄が嫌い
時 ....
17の夏、あの子と
ブラブラ、ブラブラしてた
大学受験も考えなきゃならんしさ
そろそろ、真面目になんないと
ああ、わかってるよ、わかってる
何もかもに集中できず
机に向かえば脱力し ....
つゆは丸く形をつくって
朝陽を微かに帯びる
土が膨らみ そこから
産毛の生えた芽が覚める
畝を越えて川を走り
山を駆けて峠をとびこえ
叫び声をあげて黙りながら
静かに賑やかに厳かにばかば ....
そこに何があるのか
もう分かっています
見ないほうが幸せだってことも
それでも蓋を開けてしまうのは
貴方のどんな醜い姿も
この目に焼き付けておきたいからで
やはり 恋でしょうか
それ ....
ならなかった
なれなかった
こんなふうには
きみは
なかなかった
なけなかった
こんなふうには
ぼくが
もっと
....
中三の冬に耳朶刺し安全ピン漿液{ルビ瘡=かさ}がパンクを塞ぐ
高一で曲がりいし次女称号が遅刻の女王その親教諭
筆跡を真似て風邪引き飛び歩く我ゆえ母の土曜午後飛ぶ
ひねくれたひよこが騒 ....
西向きの窓から
斜光が射す
食器が並べられ
煙草に火が点けられ
いくつかの詩が書かれ
最後に僕が
玄関から入ってくる
....
真夜中のいたずら電話
死ぬほど嬉しかった
たった今 僕は
孤独から解放されたのだから
八月を
むやみに生きるの
てつかず
はちがつ
壊れるまで
そっとみてる
触れないように
かかわらないように
それでも
セミはおちていく
かぶとむしの
くびはおちていく ....
夏
あぢ
なんか、快晴ではない
曇っていて
空気がじめっていて
あぢ
あぢい
君と別れるとさ
俺はもう
切なくて
切なくて
なんか、夏祭りらしいんだけども
俺、見学も参 ....
百合のつぼみが白く垂れている
セミが電気設備のような音をたてている
葉が揺れている
オレンジと黒の蝶が羽根をやすめている
影が揺れている
緑がひかりで黄ばんでいる
....
「私」という少年の、なめらかに刻まれた、とめどない夏の血流の跡に蒼がゆっくりと続いてゆく。
鳥たちが空にへばり付いているころには、いつかの母の乳房が錯乱して海ぼうけ。
景色から突出している ....
映画館で私は単なる映写幕にすぎない
光と影は私の皮膚の上を交互に駆けめぐり
さまざまな色彩で躰じゅうをなめまわす
しかしそのことによって陶酔することはない
なぜなら光の舌先は皮膚にのみとど ....
青らむ、夏の
わたしの首すじ に
風がひそかな挨拶をおくる
揺れやまぬ草の穂先のいじらしさ
痺れた指でもてあそびながら
あなたのことをかんがえる
青らむ、人の
まなじりの ....
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