すべてのおすすめ
これは きのう
こっちは きょう
どうしてこんなにささくれが多いのだろう
ぼくの
サキソホンから
そんな
ぼやきの声がきこえてくる
*
....
トランプやサイコロをさっと取りだす
マジックのように風景
という手ごたえのない空間をてのひらにのせて
ひぐちさんは
ほら
ここよ
この部分が大好きなの
といって頬 ....
枯色の空洞をのぞく
と、もうひとつ空洞があって
にげてゆく
母国には顔がない
まぼろしの、川がない
オルガンの音がひびく鍵盤の荒野でこごえた兵隊が
身をよせあ ....
――夕映えがきれいだった あのころ
もし自転車にのれていたなら
ほかの街で ほかの暮らしをしていたのかもしれない
すでに滅びた高句麗の
釘のように錆びた川がながれる
....
耳のなかに
あらぶる海波が音をたてて打ちよせる
波うちぎわがあって
すぐにきえる影をつくって
雲の列車がゆく
武器をにぎりしめている
ビルのうえには
どこにも ....
ゆきちゃんは あさ
かさをさし 長靴をはいて
雨のなかの花にあいさつする
話しかける
おじぎをする
おはよう さようなら
きょうなにたべるってたずねている
....
《鯉がたべたい》
と、言ってあまえ
まったく隙だらけ
そのくせ自意識は役者なみの
あのサムライ
かれは
前世のぼく
なのじゃな ....
水々の声をきいたことがある
うめきに似た
くるしげな
声にならない
声になるまえのだれかの
花々の声をきいたことがある
....
耳をすますときは
手と足が
とまる
だれにしたって表情が凝固して
仮面になる
手配写真のようにだ
音がするほうに
むける
....
猛々しい
雲の峰々をぬってながれるその川に見覚えがあった
なぜか
その子に見覚えがあった
林の奥の僻地の村へは行ったことないのに
そのおさない者の笑顔に
....
非定型な雲は生硬な定型でしかない
ぼくを尻目にとりとめがない
ぼくのO市
かのじょのN市
どちらも雲と坂が多い街であるから水っぽい
川が
なにか ....