なつのおわりのはれたひに
むしゃりむしゃりと
なしをたべている
かわをむいて
じゅうにとうぶんにきりわけ
しんをとったきれいなかたちのなしが
あとじゅういっこ
おさらにわをつくってな ....
陽も暮れきった午後六時
買い物メモを持って靴を履く
切れているのは醤油
それから時計に入れる乾電池
八時には夫が帰宅するので
急がないといけない
台所にはやりかけのパズルが広げてある
電 ....
冷蔵庫の中から
あなたが出てきて
おとなになりたかった
と訴える
こんな夜には
ビルよりも背の高い
おとなになりたかった
おとなになりたかった
日曜日、
くさかんむりの広がる野原で
ピクニックをする
あなたは適当なところに
持ってきたもんがまえを敷いて
ここに座りましょうという
おべんとうよ、と
....
窓ガラスに
幼い指紋がついていた
指紋をめくると
それは昔の日記帳だった
歩道橋で終わっていた
日記の続きを書くために
歩道橋を最後まで渡り
階段を下りた
まだ小学生で
....
茶柱が立とうものならへし折ってやる
サブカルに傾倒したお前らに未来はない
哲学と就職の話題を一時にするのは止せ
今から半年後に俺だけが悲しくなるから
ウイニングイレブンの常識を持ち込めば
そ ....
あめがふると
くさがはえるのだと
こどもがおしえてくれた
わすれていただけなのだ
やくにたたないと
しってから
おとなになるために
すててきた
わたしとこどもを
....
一人の子が転倒した拍子に
持っていた飼育ケースの蓋が外れて
甲虫が飛んでいってしまったことを
なかったことにしたいと思って
その子がもうすぐ起き上がって
気を取り直すまでの空白を用いて
誰 ....
難破船が、出港する。船であるからには。海が。あるからには。心優しい、友人たちよ。惜しまないでくれ。わたしは。幸福とひきかえに、世界を。手にするのだから。
※
棒のようなものを、ふりまわす。 ....
冷蔵庫ゆっくり冷えていくものが光のような気がしてならない
やっと今一人で立てた足元にいろんなものが這いのぼってくる
ゴミ置き場月光に散る貝殻が泣いてるまぶたに見えなくもない ....
愛の花が咲き乱れる楽園にて
相撲大会が催されると聞きつけ
腕に覚えのある男たちが集結
3日3晩におよぶ熱戦を繰り広げた末
新しい愛のかたちに目覚めた彼らが
万人に幸せを分け与えんとして
今 ....
{引用=
翌朝いそいそと出て行ったあなたは
スーパーの袋を提げて夕方再度戻ってきた
おやつを作るよなんて突拍子も無いことを
つぶやく彼女がばたばたと何かを始めだす
へらりと笑いな ....
やはんすぎから
ふりはじめたあめが
あさめざめると
やんでいる
それはきっと
そぼのしわざだ
まいあさ
ひめくりをめくる
そぼをみていた
しわだらけのゆびで
....
卵に言葉を教えた
教えた言葉を
卵はすべて覚えたけれど
口がなかったので
話をすることはなかった
雲が形を変えながら
夏の空に消えていく
わたしが生まれてから
何度も見たそ ....
桜の花びらに見えましたが
それはお墓でした
とても小さな墓石でした
とても小さな人が
入っているのだと思いました
ところどころ緑に苔むして
たしかにそれでも
桜の花びらに見え ....
みあげると
よぞらである
ほしひとつない
わたしのひふの
うちがわである
こどくがつづく
さばくをあるきつづける
わたしである
こえがとどく
あなたのよぞ ....
ぺペロンチーノに自動車を和えて
たくさんの生野菜と一緒に食べる
まったく新しいスタイルのサラダ
パンまたはライスにメイン料理と
コーヒーもしくは紅茶がセットで
通常価格250万円のところを
....
ももの花 すいせんの花 ビオラ、すみれ
春が咲いて、歩いてる
じぶんのちからで
背がひくいから、ぼうしだけ見えたよ
花の散歩 よいしょ、よいしょ あるけ、あるけ
クレパスのさくら色だけ短くて買いたしにいく春の自転車
おじいちゃんが、死んだ
おばあちゃんが、死んだ
嫁だったママは、
やっと自由になったわ、と
うれしそうに
おばあちゃんが使っていた、趣味の悪い食器を
ぱりん、ぱ ....
世界中の積木が音もなく崩れ始めた頃
特急列車の白い筐体が最後の醗酵を終えた頃
口笛を吹いていた唇がふと偽物の嘘を呟いた頃
少年から剥がれ落ちた鱗は一匹のアキアカネとなって
ハーモニ ....
あかちゃんとぬいぐるみが
丸い背中を並べて テレビを観ている写真
あなたのページに
詩と共に貼られている
今だってあざやかに
「どうしてだい?
どうして、あなたが。」
そんなふ ....
ピンクと灰色とブルーが混じり合って
あたりがもうすみれ色になっていた
春にちかい風が吹いた
LEDほどのつめたさが鼻を撫でた
きょうの天気がなんであったのか
わからなくな ....
ひとりでもつづけよう
体温になついている匂い
いま/きみ/とりどりのきみどりのなか
閉じているきみの内側が
きみだけのものにならないでほしい
黙っ/たままのミルク ....
「牡羊座」
恋したら猪突猛進どこまでもちょっと待ったは無しの恋なの
「牡牛座」
石橋を叩いて渡るこの恋をゆっくりそっと見守っていて
「双子座」
あの人も好きだけどこの人も ....
どこかの外れのような野原に
ひっそりとメリーゴーランドはあった
白い馬にまたがると
むかし死んだ友だちが背中を押してくれる
メリーゴーランドがきれいな音楽とともに
ゆっくりと回り ....
チャルメラの音が鳴り響く町角に屹立して
ロープワークに定評のある熟年レスラーを思う
ああ 通り過ぎてゆく時代の中にひとり佇み
薄く塩味のつけられた茹で卵の殻を剥く
空が茜色に染まると言ってみた ....
この土地にくらして/わたしは深く息をする
なびかない風の日も/灰色の冬もあった
草の使命とはなんだろう/道の記憶はどこだろう
この土地にくらして/わたしの炎がはし ....
アヒル顔の男が道端で鳩を貪り食っている
雨が少し降ってバスが男を消した
蓮根を持ったおばさんが「アバンギャルド」と呟いて横断歩道を歩いていく
空はもう黒
海のように黒
日光浴をしていた男の腹 ....
今夜、遠い空の下の鳥羽で、一人の詩人の通夜が行われた。その時僕は、旅先の秩父から、地元の鎌倉へ戻って来ていた。何処から書き始めるべきかわからないが、川村透という詩人は、その正義感の強さ故に、かなりハ ....
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