すべてのおすすめ
傘のない世界で
きみに傘の話をしている
小さなバス停に並ぶ他の人たちも
そぼ降る雨に濡れて
皆寒そうにしている
ぼくは傘の話をする
その機能を
その形状を
その色や柄の ....
電線を泣かせるのは
木枯らしだ
冬のからだの
声だ
何も掴めないのは
街路樹だ
冬のからだの
手だ
キシキシと縮こまった
エンジンを震わせて
登り坂を這っているのは
....
何を落としてしまったのだろう
波紋が生まれ
どこまでも広がってゆく
はじめに体があったのか
心なのか
見分ける間もなく
時とともに
それは
波紋のように広がってゆく ....
わたしは空に興味がありますが
そこに住む鳥も
そこを通る飛行機も
特に興味がありません
だけど、あなたが
「あ、飛行機だ」
というと
今の時代
さして珍しくもない
飛行機など ....
おぼろ月夜に
醤油をかけて
チュルルと
流し込んでも
うしろめたい後味が
背筋を駆けるだけだからって
桜の散り際を
ゼリーで固めて
トゥルルと
頬張っても
安っぽい哀しみが ....
赤い羽根募金の横に
血だらけの赤い鳥が突っ立ってた
ひきつった笑顔で
それを見て僕は泣いた
でも、あいつは笑ってた
出逢ったら食べてしまう
だから僕は孤独を叫ぶ
まばたきをしても夜
何時だってそう
針葉樹森の道の上
光のなかで見た君を
ずっと忘れない
きらきら生きていた
....
何杯かの紅茶を
飲み終えた机の上に
本の積まれた頃
小皿の上に
時計回りで倒れ{ルビ萎=しな}びた
ティーパック
真ん中に置かれた
{ルビ空=から}のスプーンのみが
....