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見た記憶と
見たかもしれない記憶を
理解しあおうなんて思わないほど
ふたりで見つめ続けてしまう
ひとつの景色
上昇する空に
なすすべもなく
はじめて聞く翼の音に
耳をかたむけた朝
土は懐かしく湿り気をおびて
無数の記憶が飛び立つと
残された孤独の夜が
夢の中から
僕を見降ろしてる
目を覚ますと
ベッドの上にいた
白いシーツがどこまでも広がり
睡眠中
あつくてはいだのか
山のように連なる毛布から
上昇する太陽が
まっすぐわたしを照らしてる
もう三日歩い ....
猫が
大丈夫ですと
鳴いている
本当は
大丈夫じゃないから
泣くのに
犬が
わからないと
吠えている
本当は
わからないことは
何もないのに
みんないつか
子供 ....
詩を消費すると
詩ではなく死になるから
読んでしまった詩が気がかりだ
よく晴れた休日
スーパーマーケットに
たくさんの消費者がやってくる
裏口の方で
上司に叱られていたあの店 ....
春が黙っている
鳥の声だけが響いている
遠くで何かを売る車の音が聞こえる
ひさしぶりに二階の部屋に行った
冬が黙って死んでいる
そのあたりにも春が訪れている
見て
母さんがいるよ
君は
よろこんで
ハンカチをさがす
涙を拭くと
母さんは
消えてしまう
見て
母さんがいるよ
母さんは
いつも
涙の向こうにいる
人が生まれる
前のことを
死んだ
とは言わない
人が生まれて
生きたから
死んだ
と言うのだ
今日も定刻通り
汽車が来る
窓が開いている
閉じる
また開いている
閉じる
人は時々
開いてしまう
記憶の窓に閉じていく
セーターを
頭からかぶって
泳いでいた
はるか彼方の星の
海の底から浮上する
あなたの異星人の声は
不可思議に遠い
その孤独は
宇宙の果てにある
はじめての海
林の隙間から見える
とてつもなく高い
大きな大きな青い海
あれは空だよ
父さんと母さんは
笑ってたけど
あれこそが海だった
死ぬまで忘れない
空の裏側に世界がある
もうひとつの
僕らが生きた
かつての空がある
悲しんでる
そこで死んで
ここで生きてること
彼らは何も知らない
開けっ放しの
誰もいない窓の外
子 ....
街角で意味が言葉を待っている
路地裏で言葉が意味に迷ってる
大通り概念だけで埋め尽くし
僕はただ謝りたかっただけなのに
街並みに黄昏れはじめた君の影
俺達の恋が
たった今終わるとしても
海は死ぬまで海なのさ
恐ろしいほどの盗品が
今朝も浜辺に打ち寄せる
宝のようにそれは
ゴミでもあり
生きざまでもあった
外国に行きたくて
海を歩き続けた
それなのに
海はどこまで行っても
海のままだった
道に迷わないように
紙幣をまき続けた
それも尽き果てる頃
家に帰ろうとして
鞄から地図を取り出 ....
呼ぶ声がするので
窓を開ける
小さな庭に
いつものように
日が差しこんでいた
午後
僕はこの星でたった一人
光合成をはじめる
息を吸っては
自らの命に
窒息しそうになりながら ....
真冬のベランダの部屋から
明るい声が聞こえていた
どんなに傷つけられても
いらない子だと言われても
最後のその時まで
ひたすら明るくあり続けた
お母さんのことが
大好きだったから
景色が歩いている
わたしではなく
まるで時のように
目をつむれば
色をうしなって
古い景色が歩いてくる
錯覚していた
わたしはこの世界を
歩いてなどいなかったのだ
はじめからこうでは
なかったはずなのに
無垢であるには混沌としている
空の色はもっと
違っていた気がする
もっと緑がかっていた気がする
ふたりはもっと
透けていた
むこうが見わたせるく ....
太陽の抜殻が
うすく影をのばし
速度を落としていく
過ぎゆくものはみな
風の一部となり
思いとともに
彼方へとはこばれた
恋人がいま
海のまんなかで
夏の手紙を書いている
....
カーテンが
レールをすべる速度で
ひかりは生まれ
わたしの部屋に
朝をさしこむ
レースを通過した
木漏れ日から
光をひとつ選び
手に入れることなど
できない
あやふやな瞬間が
....
階段をのぼる足音の
海をさかのぼる
波音が今
わたしの深い
大陸棚に
ぶつかる音がして
なにも見つからない
ちいさく
広がるだけの星が
こぼれる秋
虫の声が燃えている
理 ....
片恋のボタンはずして息をする
坂道を二人乗りして夏が行く
できたての朝は真夏のゼリーかな
水族館ガラスに映るあなた見てる
砂浜の足跡がまた波に消え
潮騒の残響に潜む君の声