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春はまだ来ない
ここの春は 遠い
そして 一度やってきても
すぐに表情をかえてしまう
はる という音を発せようものならば
嫌でも 過ぎ去った季節を思い出させてくれる
けれど ....
ふと目が覚めると
深い森の中
木の葉のざわめきが
悪魔の声に聞こえ
薄く雲のかかった月が
湿った地面に影を落とす
叫び声を上げようとしても声が出ない
微かな声で名前を呼ぶけれど
....
明け方のビル群は
墓標のように見える
おれはタクシーを拾って
車のまばらな御堂筋を
一直線に南下しながら
疲れた頭の片隅では
死ぬまでに稼げる金を
ぼんやりと計算している
アス ....
こんな春晴れの日に
この同じ空の下
貴方は何をしているのでしょうか?
鳴らない携帯電話を握りしめながら
空を見つめる
満開の桜の花に
春の太陽が眩し過ぎて
貴方が見えない
....
寒風舞う夕闇
窓から観ゆる
流れゆく木立は
ブルース
乱反射する
宵の明星
きみの氷結した
涙のレンズが
滲み出すならば
かまわず
泣いてしまおう
黄金に濡れゆく ....
たとえば
水銀の
体温計の
危うさだよ
それは
けだるさの
端っこで
かすかに
午後の授業
先生
砂時計が
ぜんぶ
落ちたら
眠ります
少し
似ている
前髪 ....
さ く ら
さ く ら ら、
ぼ く ら が
か け て
と お の
む か し ....
暮れた水銀灯アーチを
潜っていた
ざらついた街
妖しい電飾の明滅
時計仕掛けの日々が
万華鏡の筒を
眼に視えぬものにする
きらびやかな銀彩は
濁った表情に果てて
追いかけた微 ....
今日はお姉ちゃんの卒業式だ
昔から卒業式はだいたい
今度入学する中学校の制服を
着ることになっている
お姉ちゃんもその一人だ
ぼくはいつものように
朝ごはんを食べている
いつもはみんな一 ....
三毛猫は憩う
幻燈の夜
羨望にすました
猫の瞳に膨らむ
ブリキの月
悪戯な黒雲が
月光の尻尾を隠し
この乳白の森を
蒼い舌で塗らしてく
魔法が解けてくようだと
きみは云 ....
硝枝はけぶる
柔らかな朝
ああ
いい匂いだ
熟睡した樹皮は
哀しみを煎て
苦味すら香ばしい風
そんな
朝もやの窓を包み
夜明けの香りを注ぐ
大気のフラスコ
朝焼けは沁 ....
雨粒
ぱく り
うんと高いビルの一番上のレストランなんかより
うんと美味しいって知ってる?
食べつくせ
食べつくせ
七色が
ごちそうさまの合図
食べつくせ
食べつ ....
この街にまだ雪は降らない
灰鼠色の空は浅い冬のまま
恋人たちの吐息や
ブランコを揺らす手に護られている
わたしの何処か深くにある黒いものや
寒い、と寂しい、が似ていること
それに気 ....
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