すべてのおすすめ
豊かさの中で
ぼくたちは泣いている
ほしいと思ったものが
いつでも手に入るから
いつでも捨ててしまう
持つべきものがなくとも
誰かが持ってきてくれる
便利さだけでは
豊かに ....
太陽が沈んでゆく
そこが西の空だ
そして今日は下弦の月
だからすぐには
月を見ることができない
真夜中までじっと待て
そうしたら
太陽が沈んだ反対側を見ろ
今日の理科で習ったばかり ....
今あなたが食べた
その秋の実は
一年に一度しか実がならない
そんな生き物なのです
人の一生の中では
わずか五十回くらいしか
作ることができません
この秋の実ができるまでに
冷たい風 ....
君の夏の中に
向日葵は咲いた
去年よりも太い茎で
大きな花を咲かせて
はっきりとした向日葵は
これからしおれてゆくだろう
けれども君はそれを
悲しんではいけない
それが自然なのだか ....
涙が流れて色になる
どんなことであれ
何か一つのことができるまで
寒くて凍えそうになっても
暑くて動けなくなりかけても
泣くことを我慢して
ようやく成し遂げる
その時になって
自然 ....
風は言葉を求めていた
無言で動き続ける自分に
自分の存在を
何かにあるいは誰かに
伝えたかった
街は重厚な壁に遮られ
跳ね返されるか
止められるかで
風の居場所はなかった
風は森 ....
大人になんてなりたくないと
思った時から
ずっと星を探していた
将来への自信と
可能性への期待に満ち溢れて
星は必ず見つかるものと
全ての人に全ての星があると
それが当然だと思っていた
....
夏が黄色くなってゆく
太陽の色に近づいている
夏をぎっしりとつめて
鮮やかな黄色になってゆく
黄色くなってゆく夏は
水に中に落ち
ぷかぷかと気持ちよさそうに
泳いでいる
近くで ....
どうしてぼくを叱らないのと
大人の人に聞いてみたら
君はとてもいい子だから
叱ることなんかないさと
誰もが言っていた
ぼくは知っている
本当は叱らないんじゃなくて
叱れないことを
....
夏の氷は透き通っていた
四角いその宝石を
水の中へと入れると
しゅわぁという音が聞こえた
それをじっと見つめる
自分の中に固まっていた何かと
同じようだった
さようなら
この氷の最 ....
その昔
字を読んだり書いたりすることは
誰もができたわけではなく
むしろ限られた人だけだったのかも
しれない
今では
字は誰もが読めて書けるようになり
文盲という言葉すら
知る人が ....
風かよふ春のあした
霞よりほのかにうち出でたる葉の
えもいへぬ色に誘はれて
ゆくりかに歩きつつ空を眺む
後ろより聞こゆる鳥の声は
春の宴にぞ思ゆる
よろず風の詩なり
いづこから流れく ....
春が吹いてくる
強い風だ
今は春だぞと
言っているようだ
どこまで吹いてゆくのだろう
林が揺れている
鳥はどこにいるのだろう
蝶はどこにも見当たらない
春の声が大きすぎて
みんな黙り ....
ひたすら書き続けたペンは
その日はとても疲れていたので
家に帰るとすぐにお風呂に入った
湯船の中はとても気持ちがよかった
窓をそっと開けると
葉桜が街灯に照らされて
心を癒してくれた
外 ....
レモンティーの中に入れた角砂糖が
スプーンでかき回すことなく
ゆっくりと溶けてゆけば
それはもうすでに春です
紅色の中でもやを出して
やがてその中にうちとけ合い
春がしっかりと出来上がるの ....
月が影に隠れる頃
桜は涙を流します
はらはらと落ちてゆく
一粒一粒の涙は
地面に落ちて
道に溢れてゆきます
桜の涙はやがて川となり
月を追いかけて
どこかへ消えてゆきます
きっと春の ....
春の夜の公園は寒かった
暖かい陽射しに守られていた時は
ベンチに老人が座り
子どもたちが走り回って
木々も上へ上へと伸びていた
そこには春の温もりが広がっていた
日が暮れるとともに
公園 ....
地図のままに
その道を辿ってゆくと
平面は空間となり
動かない紙は風を呼んでくる
地図はその全てを語らないけれど
その全てを教えてくれる
示されているものから冒険を誘い
自らは新たな道を ....
今年にも春がきて
春を数えるときがやってきた
まずは春の色を数えたい
薄い黄緑や淡いピンク
あちらこちらにたくさん見える
暖かい風が揺らしてる
どれが一番似合う春の色だろう
春を見ている ....
小枝の先に小さな緑が現れる頃
もう何度も使ってきた
「新しい」という言葉は
やはり新しいのだと不思議に感じる
今まで使ってきた言葉に
何かが足され
何かが積み重ねられ
今までにはない感動 ....
赤い風船は空に向かって上っていった
高いところから見下ろす風景を見て
ハイな気分になっていった
下から吹き上げる気流が
自分の足をどんどん持ち上げてくれる
もうすぐ雲に届きそうだ
すると雲 ....
遠い記憶の片隅に
桜の花が咲き誇り
淡く染めゆくその色に
時の流れを知りつつも
時の流れの哀れさも
歳を重ねて見えてくる
はかなきものは美しく
美しきものは泡となり
消えゆくものは夢と ....
気がつけば
自分の周りには敵だらけになった
嫌な人間は一人もいない
今の自分にはもっていない
自分の憧れをすでにもっている
そういう人たちに囲まれている
絶えず比べられ
常に上か下かを強 ....
五百円玉は機嫌が悪かった
カチャリと投げ込まれた
小銭入れの中には
たくさんの硬貨がいた
その中でも五百円玉は
一番格が上なので
一番大切にされなければならない
五百円玉は小銭入れの中を ....
何も描かれていないその絵本は
風の中にあった
ミルク色をしたその紙の上に
風が運んだ川のせせらぎの音を
優しくのせてゆく
絵本の中では
水は静かに海へと流れてゆく
絵本の右上から小鳥のさ ....
今日はお姉ちゃんの卒業式だ
昔から卒業式はだいたい
今度入学する中学校の制服を
着ることになっている
お姉ちゃんもその一人だ
ぼくはいつものように
朝ごはんを食べている
いつもはみんな一 ....