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学齢期をむかえた父が
レジに並ぶ
帳面と鉛筆を買ったのに
店を出ないで俯いている
帰る場所がわからないらしい
どこから来たの、と聞くと
わからない、とだけ答える
やがて見かね ....
道路を丸めて食べる
どうしたら草の音みたいに
生きることができるのだろう
曲った色鉛筆
間違えないように覚えた言葉
値札の無い指の軌跡
並べることばかり
いつの間にか上 ....
鳩時計が次々と子どもを産む
子どもたちは皿になる
皿がとぐろを巻いているので
妻も娘もそれはヘビだと言う
ヘビなら料理など
のせられるはずもないのに
やはりとぐろを巻いてい ....
イヤホンの中に空が広がっている
入道雲にふと船が座礁した
そのような音が聞こえる
深夜、そして、私
途方にくれる船長のポケットの中から出てくる
いつの間にかなくしてしまった ....
パンを一口かじる
柔らかくて美味しいので
生きた心地がしない
少年が救急車の真似をして
変電所の方へと走っていく
その距離と速度の先に
助けなければならない人がいるのだ
....
手の子どもが
粘土をこねている
いくらこねても
粘土は粘土の形にしかならない
粘土を裏返してみる
にぎやかで美しい色の都会が現れる
足の子どもは
都会に行きたがる
昨日草む ....
こんにゃくを買いに出かける
いつものスーパーでは売り切れだった
少し遠くのスーパーでは見つからなかった
少し遠くの別のお店では
こんにゃく以外のものならあるのですが
と残念がられ ....
テーブルの上に
こんにゃくがある
窓の外では
桜の花びらが少しずつ
風に散っている
白い磁器の皿にのせられたまま
誰に忘れられたのか
いつまで忘れられるのか
蒸発し ....
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘 ....
