すべてのおすすめ
不在のあなたに手紙を書こう。季節はすっかり夏になったと。
あの苦し紛れの日々は終わったと。
なだらかな背に流れる
夏の日差しは
存在の側から送る今生の別れなのだよ。
不在のあなたは私を苦しめ ....
雨は水平に降ることができる
そしてふたたび女たちのふとももをぬらす
(水をたたえた場所が沈黙する時が来た)
(水の波紋もなく)
水平に降る雨の中で
....
蝕 ある天体が他の天体の一部または
全部をおおい隠す現象。日食・月
食、星食のほか、惑星による衛星
の食や恒星同士の食などもいう。
蝕 蝕 ....
-----------------------------------
老いた造船家の仕事部屋は紙と鉛筆と分割器が置いてあるだけだ。
そして窓の夕暮れの光。充分な設備だ。
なぜなら造船家は夕方 ....
母は 捨てる
真昼に閉じた雨空へ捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所
そこに堕ちる母のものを捨てる
湿地帯に隠された 母の書いたもの
そこに堕ちる母のものを捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所 ....
試みに彼の鞄を持ってみる
革製のそれは大きさばかり目立つが相変わらず軽い
きっといつものように家族が入っているのだろう
そのことは彼から聞いている
彼は信用するに値する人物なのだ
だから中身 ....
わたしは男の帰りを待つ
待つ時間こそわたしを
存在させる
つまり待つことによってわたしは
男への愛情を確認している
しかしそのことを誰にも悟られたくない
そのため日常の動作は速く
人の ....
母
ああ麗しい距離(デスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景・・・・・
悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ)。
ぼくの周りには、ランボーを読んだり、中也 ....
ふらちなよみのくにから来る男は
死んだ者をむりやりたたき起こし
ふとどき者の口からなにごとか聞こうとする
その行為 その汚らわしい行為に
あしも ....
つつじに朝露が降りてきみを思い出す
薔薇ではないというきみのため
野のなかにかすむ公園に
....
丘を走る老いたランナーの濡れた額
君は見たことがあるか
皺だらけの手に
まとわりつく子どもの手
を払いのけ
上手く駆けられるだろうか
疑問は
ランナーの背後に残されるのだ
最後に拍手
....