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ぼくとぼくとぼくというのがぼくたちのことだが
そのぼくたちのなんということもない
へそで茶でも沸くような
毎日のことを
(毎日とは日と日と日と日と日と……)
前評判を置き去りにでもした形で
....
バルサミコソースが複雑に酸っぱくて
関係ないのにあの汗の味に似ていたからって
ああもうぜんぶだめなんだとフォークを置いた
まったく大げさな話だ
こうやって一日中町をふらついたあと
溶けた飴で ....
フ と目の前に綿毛が飛んでいたので
ク とつかまえて離して見ると
それはチカリと赤い血の玉で
もう一度握ってはなすと
{ルビ捩=よじ}れてつぶれて菱形のいのちに変わった ....
たかいとてもたかいところで
鐘が鳴って
響いてふるえ
始まったんだろ
どんどん共鳴して
音があたるから
どんな形かわかって
反響して
わかってきて
まだ目もひらいてないけど
柔らか ....
木に囲まれた公園にロケットの形をした遊具があって
それはいろんな色の鉄棒と鉄板で出来てて
張りぼてで
螺旋の滑り台になってて
同僚と会社をサボって俺んちで短パンに着替えて去年の夏
Yシャツと ....
ショートケーキひとつ
落ちていく
月夜の道に
落下する
やわらかな音
聞こえない
苺がひとつ転がった
外れてとれて痛んでる
暴風通ってまた転がり
赤い
実の
白い
いち ....
いま銀縁の壁掛け時計に蠅がとまり
文字盤を透かしたガラスの上を音もなくあるくまず12から
2
1
鉄の壁が溶ける
溶けて落ちてすべて床に染み込んだ
夕暮れだった
聖人がひとり ....
今朝この星で
産声を上げたばかりの
「完全」ないきものが
生まれた傍から言い伝えどおり{ルビ半身=はんしん}ずつに引き裂かれ
それぞれ渡り鳥に渡されて
島のうえ
西と東に
千年歴史を遡行 ....
桜の花びらが散り
グラウンド沿いにつくられた遊歩道に降り積もる
つよい風が吹いて
目を瞑るしかなくて
吹き飛ばして
恐る恐る目を開けると
視界いっぱいに花びらが激し ....
心の中に一つの頑健で豪奢な台座をこしらえてある
それはいつ頃造ったものか忘れてしまったが
確かなことはその台座は心の中のどこよりも高くに設置したもので
僕という人間は多聞に洩れずあま ....