洗い場には
石鹸の代わりに豆腐があった
かじると
石鹸の味がした
食卓には
冷奴の代わりに石鹸があった
かじると
やはり石鹸の味がした
豆腐はすべて食べてしまったの
と言 ....
歯茎の腫れがひかない 一週間ほど前から
我慢した 鎮痛剤も朝昼晩と飲み倒した
引かない 引いてくれ 引かないのかい?
ある朝にそんなことを惰性で呟く僕がいた
この痛みを消し去る方法 良 ....
窓の外側に
内側から腕をさしだす
こうも空気に差がないと
飛び落ちても気付かないかもしれない
ぼんやりにゆっくりと浸食されて
ぼくは
蝉の声を、聴いている
....
街を歩いています。
雨が落ちて来ました。
雨が落ちて来たのに、傘を持っていません。
傘を持っていない人は、雨に濡れてしまいます。
雨に濡れてしまったら、家に入れてもらえません。
家に入れても ....
玉ねぎが自分で自分の皮をむいている
オレハ ドコニイルノダロウ
いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける
オレハ イッタイ ドコニイルンダ
その間 ....
わたしのママには、
花のかおりの管がとおっている
きれいなものがすきだから
まばたきは多くしたほうがいいし
ウォーターベッドなんて
最高のともだち
なみだはでなかった
....
先生、
ぼくのお兄ちゃんが
このあいだ死にました
ぼくのうちは
3人兄弟です
全員男です
まん中のお兄ちゃんが
死にました
名前はゆうごです
ぼくは「ゆうごちゃん」と
....
Blue Sky
僕らが愛と呼ぶもののすべてが真実でありますように
僕らの幸せが誰かの不幸のおかげでありませんように
僕らのパズルはこんがらがっていつまでも解けない
このまま解けな ....
目前の硝子が
あまりに硬くて
飛び降りる事は諦めました
最後の晩餐。
なんて洒落た言葉は当てはまらない空間
赤鬼と青鬼
小さなつくえをはさんですわる2人
言葉は交わされない
……
赤鬼のために犠牲になった青鬼
人間の友達ができ ....
バス 食いてえ
ツートン・カラーとか たっぷりの水分を含んだ 薄皮に包まれて
タイヤは曲がったゴムの匂い うは やっぱり
バス 食いてえ
運転手が禁忌する交差点の手旗信号
それ ....
壁も、床も、家具も、俺の服も、全て白い部屋、目を瞑れば黒に満たされてしまうのに、それを拒むように、白ばかり並べる俺を、記憶の誰かが、愚かだと言った
わたしにまつわる
もろもろをかなぐりすてて
たびにでよう
ちいさなロディを
だきしめて
月のかたちのポシェットに
ハンドタオルとちりがみと
うすく赤いマニキュアと
それから桃のくち ....
スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう ....
眠れないと君が差し出した手を
掴み抱いたあの夜
鼓動が伝わってくるほど
近くよりそい
お互いを確かめ合った
ただ触れるだけの接吻は
上手くできないまま
....
あたりまえの生活というものがよくわからない
平日のお昼時に街に立つ
オフィスから吐き出された人々は
中也の作品に、嗚呼サイレンだサイレンだ、といったのが
あった気がするそれに近い ....
ちかちか、またたく しんごうき
しん、と ねむりについた よるのまちを
あかあお、あかあお、あなたは こちら
あおあか、あおあか、あなたは あちら
みちびく ひかりに まよいはないけど
とき ....
天城峠の牧場で
猪たちのけなげな芸をみた
観光バスに乗りあわせた貴婦人たち
厚ぼったい化粧をしたのやら
寒くもないのに毛皮をはおったのやら
やたらに貴金属を装着したのやらが
少女のような歓 ....
行きは雨で
帰りも、やっぱり雨で
雨はざあざあといい音を立てる
一杯になった傘立ての横に引っ掛けていた、
自分の傘を忘れることなく手に取る
行きの雨に濡れたままの傘を
バサッと ....
すでに13,264回の公演を終え
僕は13,264回
僕を演じ続けた
誰よりも上手く
誰よりも正確に
ところで
この脚本を書いたのは
いったい誰なんだろう
時々、ありがとう ....
虫歯が痛んだので歯医者に行った
虫歯を治してください
口をあんがあと開けたのはいいけれど
白衣を着たおじさんに
ここは目医者ですと言われてしまった
仕方なく
僕は自動車の整備工であ ....
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