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──献杯の酒を飲む夜に

  * * * 

高校三年生の頃、僕は恋をしていた
あんなにも好きだった娘(こ)に
教室で話しかけることもできず
震えながら・・・告白しようとした
夏 ....
そして今日も茅ヶ崎
体の無い
在りし日の想い人と
ひや酒を呑む 
僕の存在理由は nothing
君の存在理由も nothing

そう思っていた
僕の頭の空洞に 風は吹き 
風は滝のように体内の通路を下り
魂の器の底に渦巻けば
遠い記憶は……甦る 
 ....
目の前の
馬鈴薯と玉葱の炒めものは
たった一枚の皿であれ
時と所により
どれほどの幸いを、もたらすだろう
僕は今夜
晩年に娼婦の肖像を描く
マネの孤独の深さを知った

今宵 彼のアトリエを訪れる
ボードレールとマラルメの
美を語らう声が聴こえる

――汝のいる風景の〝今〟を視よ
 ....
うええーん、えん、えん、えん

男の子が一生懸命に、泣く
ぜんしんぜんれいで、泣く

いつのまにかおじさんになった僕が
ぜんしんで泣いたのは
もう何十年前のことだろう

うええーん、 ....
旅先で飲み過ぎて
あぶないので三十分以上
間を
空けて、酔い覚めのからだで
いそいそと…露天風呂へ

(水を飲んだり、最善を尽くしたのだ)

閉館近い露天風呂は
すっかり掃けて
人 ....
生きてるとどうしても
日々の狭い箱の中で
図太いおばちゃんに出くわして
むかかっ ときちゃう
僕の狭い心

そんなおばちゃんの
密かなチャーミングさや
ひたむきさや
ひたぶるさや
 ....
旅に予想外はつきもので
おどろかないってのは無理な話でも
おどろかないフリを
演じる役者でいたい

遠い旅先の雲の中を
突き進む
空の機内で思う

――友よ、願わくば
  日々の旅 ....
明日の僕は
春の舟に乗るだろう

川の両岸につらなる桜並木は
咲いているのか、いないのか
わからないが
僕は自らの中に
ようやく唇を開き始めた
小さな{ルビ蕾=つぼみ}に、手をあてる
 ....
暗い部屋で
{ルビ胡坐=あぐら}をかいている
私の上に

 ?


ひとつ
浮かんでいる

なぜ人間は
言葉を語り
言葉に悩み
言葉に{ルビ温=ぬく}もる
のか

た ....
ゴールデン街の飲み屋には
色褪せた「全員野球」のお守りが
ぶら下がり
小窓のぬるい風に、揺れていた
三日前、一度だけ会った新聞記者が
病で世を去った
一年前、後輩の記者も
突然倒れて世を去っていた
彼の妻とは友達で
今朝、上野の珈琲店にいた僕は
スマートフォンでメッセージを、送信した
 ....
――誰もが探しているものは何?

ふり返ればずいぶん
{ルビ流離=さすら}ってきたけれど

――わたしが探しているものは何?

  青い光
  ヨコハマの
  青い光

それは観 ....
僕の部屋の片隅に
久しく再会した
幼稚園の頃の先生が呉れた
ご主人の形見の下駄が
置いてある

夜の部屋で、ひとり
黒い鼻緒の下駄を見ていると
あの大きな背中と共に
からん、ころん、 ....
キーツが本の中から語る
細い川の流れが、視える

道を歩くわたしの影にも
細い川の流れが、視える

時代も国も
異なる二人の間を
結ぶ
ときの川のせせらぎに
耳を澄まして歩けば
 ....
ジャズの{ルビ老舗=しにせ}・ドルフィーで
朗読会の司会をした

詩人達は{ルビ数珠=じゅず}の言葉を…{ルビ紡=つむ}ぎ
休憩時間に賑わう
暗がりの店内に紫煙はたゆたう

カウンターの ....
やあ、とふらり訪れ
古書店のカウンターに
腰を下ろし
ぶれんど珈琲を一杯

久方ぶりの店主の友は
外出中だけど
カップが空になる前に
間に合うかな?

じっくり苦みを味わうひと時に ....
暗闇に小さな火は点り
{ルビ蝋燭=ろうそく}は徐々に溶けてゆく

白いからだの多くは
残されている

あなたのわざの多くは
残されている

小さな火

身を揺らし
夜を仄かに照 ....
仕事を辞めてから
5才の周ちゃんと過ごす時間が増えた
染色体が一本多いゆえ
絵本を読んでも

 あーうー

歌を歌っても

 あーうー

だが時折、大きな黒目をぴくりとさせて
 ....
今月の「ぽえとりー劇場」のオープニングでは、 
一年前に世を去った詩友の快晴君に 
生前Ben’sCafeで会った時にもらった 
ホチキスで束ねた詩集から二篇の詩を朗読しました。 

 ....
「目線を一歩ずらした所に、詩はあると思います」 

何年も前の合評会で 
今は亡き講師のMさんは 
僕に云った 

仕事帰りの夜道を 
車のライトで照らしながら辿り着いた 
深夜の飲食 ....
夏の夜に
いくつもの太陽を揺らすひまわり達 
仕事帰りの疲れた男に 

 わさ わさ わさ わさ 

大きい緑の手のひらを振る 

日々の職場では 
密かな善意を誤解され 

  ....
石の階段を{ルビ真=ま}っ{ルビ直=す}ぐ上ると
{ルビ古=いにしえ}の文人達が林に眠る東慶寺

境内の門の向こうには
紅白の梅園が広がり
石畳の正面奥に
惑いなき御顔で座る大仏

  ....
ニッポン Japooon ・・・・・・・・

日の丸の太陽を
青いペンキで塗り替えて
水の惑星に小さく浮く
びみょうなくねりの島国は
僕等乗せた 沈みかかりの小船

21世紀
曇った ....
見知らぬ都会の夜
人ごみをかき分け
「すみません、手相の勉強をしてる者ですが」
の声を会釈でよけ
{ルビ潜=もぐ}りこんだカフェでコーヒーを1杯

( 日中の{ルビ時間=とき}は遠き夢な ....
AB(なかほど)さんの服部 剛さんおすすめリスト(26)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
……とある蛙さんへの手紙- 服部 剛自由詩1123-11-1
月の宵- 服部 剛自由詩123-2-11
life_for_a_reason- 服部 剛自由詩420-11-19
昭和二十年、或る夏の夕餉- 服部 剛自由詩1020-1-28
或る女の瞳- 服部 剛自由詩520-1-19
涙のあと- 服部 剛自由詩219-8-29
裸で岩に坐る- 服部 剛自由詩219-8-28
水と油- 服部 剛自由詩419-7-9
Good_Luck- 服部 剛自由詩319-7-6
春の舟- 服部 剛自由詩219-3-23
五十音の石- 服部 剛自由詩419-2-20
お守り- 服部 剛自由詩4*18-10-13
光の欠片- 服部 剛自由詩1318-9-18
言葉の船_―横浜詩人会六十周年に寄せて―- 服部 剛自由詩918-8-8
下駄の音- 服部 剛自由詩9+18-3-22
足音- 服部 剛自由詩918-1-25
詩とジャズの夜_―ドルフィーにて―- 服部 剛自由詩3*18-1-5
古書店のカウンターで- 服部 剛自由詩317-12-28
火ノ心- 服部 剛自由詩317-1-24
もみじの手- 服部 剛自由詩1017-1-13
風になった友からの伝言_- 服部 剛散文(批評 ...509-2-26
幻ノ花_- 服部 剛自由詩509-1-14
ひまわり仏_- 服部 剛自由詩17*06-9-19
弥生・三月・夢見月_ー北鎌倉・東慶寺にてー_- 服部 剛自由詩4*04-1-3
日の出- 服部 剛自由詩203-12-31
しまパンえれじい- 服部 剛自由詩5*03-11-22

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