すべてのおすすめ
ベッドに横たわり
窓から入ってくる光は
いつも白い
思い出しては悔やむばかりで
明日を思い描く 明日は
死への怖ればかり
私は年老いた
若い頃から想像し
脅えていた まさにその ....
八月、台風九号は二十二名の命を奪い、太平洋の北洋上で一陣の風となった。嵩の増した泥の粒子を束ねた濁流が財田川を下っていた。よく水神として龍や蛇が奉られるのがわかる気がした。うねる濁流は ....
青い瑠璃色の地球は
ほんとうは赤いリンゴで
カミソリでつけた傷からは
傷口をうめるように
黒い血がにじみでていた
血の味は甘くて金色のハチミツのよう
果肉をかじると
青い欲望が汁 ....
虫の音だけが響く長い秋夜のしじまに
基次郎の 「檸檬」 を読んで
僕も明日、彼女の机の上に
そっと檸檬を置いてみようかと
画策する 新しい世界を生むために
だいぶすずしいなったなあ
と ....
トビが啼かずにまるく飛んでいる
白い朝の港の防波堤は
カラスの群れで
黒く染まっていた
ひゆん ひゆん ひゆん
と息をしている
ひゆん ひゆん ひゆん
と啼いている
ひゆん ひゆん ....
ゆがんだ世界とうまくやっていくために
ひずんだ言葉に沈潜してゆく
絶望という名の回虫が腸の中で
成長している
季節はずれのハエが
安楽椅子で眠っている
年老いた神様の口元に
止まっている ....
蝸牛のうちで反響する叫びを
押し寄せてくる旋律を
海馬に刻もうと
目を塞ぎ
親指を噛んで
何もかも消えてしまえと
布団にくるまり
瞼の裏の黒い染みを
じっと
足元で
まどろ ....
授業が終わると、真っ先に教室を出る
いつもなら軽音楽部の部室で
とりとめのない話をして
演劇部の発声練習を聞きながら
ひとりの娘の姿を追いかけるのだけれども
夏休みの間、炎天下の中ひたす ....
朝露の滴る草むらに横たわり
私の身体はがらんどうなのに
脈を打っていた
温もりもわからず
コロンカラン コロンカラン
流した涙は
冷たい石のような音を立てて
深い井戸に落ちた
....
遠くばかり見てるね。
秋の夜空はとても澄んでいて
僕の焦点の合わない目でも
うっすらと星が見える
遠くばかり見て歩いてたら
石に蹴つまづいた
気付くと
隣にいたはずの君がいなかっ ....
夕立/突然の豪雨と雷鳴が轟いた
それは子宮の中で聴いた母の心音のような気がした
時折、去来する淋しさは冥府からの呼び声に思え
無言で空を見上げると、大きな穴が開いていた
依りかかって生きて ....
また差し歯がとれた
一年で三回目
歯を磨いていたら音もなく
歯医者もさすがに見過ごせなくなったのか
作り直しましょう
と言った
しかし
それでだめだったら入れ歯ですよ
と続けた
僕は ....
真昼の頂点に、輝く水飛沫があがり、影のない一瞬 私は
ぽかんと口を開けて、天頂を見る、ヤブ睨みをする
不機嫌だった幼児も、相貌を崩し 笑い出す
はしゃぎだした子供たちに大人たちはお手上げ
だけ ....
月夜に現れたみずうみに 僕は裸になって
飛び込んだ。別に入水自殺をしようってわけじゃない。これは
ひとつの儀式のようなもので、言うなれば自然との同化、共有
されるファイルを独り ....
地球の公転軌道がほんのわずかずつ
ずれていることを憂うガリレオの
思いを想い過ぎて
抑うつ気味になった僕は
バナナがいいと聞いて
毎朝食べるようになった
いつか太陽の手をはなれ
地球 ....
朝焼けは随分きれいで
青紫のしじまに黙りこくり
そっとアクセルを踏み込む
見慣れた速度で
過ぎていく風景をやり過ごす
少し肌寒くなったようで
エアコンのスイッチを消した
仄かに燃えて ....
咳が止まらない
咳をするたびに
砂を吐く
新型のインフルエンザだという
汗ばんだ 熱を孕む額が
妙にかさつく
少しずつ
崩れてきているのだろうか
それが現れたとき
随分と騒が ....
海月が波に流されて浜辺へ打ち寄せられた
今年も何かが終わってゆく
めぐりめぐる喪失の流れ
ぶよぶよとした透明な塊は
逢瀬と誕生の名残り
てのひらに白い貝殻をのせ
息吹の痕跡を確かめ ....
僕は薬がないと正気が保てない
いわゆる非定型のメジャートランキライザーを
飲み続けている
ある日 声が聴こえたんだ
皆、死んだよ と
僕にはわからなかった
生きているじゃないか み ....
いつの間にか捨てられていた 僕の渡したピアス
何の予告もなく
前触れもなく
いつから途切れたのか 君の送信が
何度 受信を選択しても
新着なし と表 ....
意味不明なことをわめき続けることに疲れた
幼い頃、ぐずっていると「言わんとわからんがい」と言われ
言わなくても分かる関係に憧れたけど
やっぱり黙っていては何も伝わらないことに失望し ....
累々とした孤独に石を投げる
カラン
と音を立てて、転がり落ちたのは
いつかの嘆き
降り積もる塵芥に 深き静寂の痕跡を読み取る
動かなくなった時計
指し示し ....
もう何がリアルで何がフィクションか
わからないくらい
嘘をついてきた
嘘で満たしたプールの中に泳ぐ魚たち
本当のことを言うと誰にも相手にされないから
作り笑いを浮かべて 話を作るのがうま ....
真夜中に目が覚めて
お腹が減ってきたのだが
2日前から朝バナナダイエットを始めたから
食べるわけには行かない
とりあえず真夜中とはいえ
今が朝だろう
バナナで我慢しなくちゃ
....
草叢に横たわっていると、朝の草露がわたしの頬に滴り落ち、がらんどうの身体は血も通ってないのにどくんどくんと脈を打っている。
「そんなところにいては寒いだろう」
と父さんがわたしを ....
真っ白な空白を
何かしらで埋めていくのは
それはそれで楽しいが
少し勿体ない気もする
雪の日の最初の一歩のようなものだよね
と微笑む君のキャンバスに
僕が描いていいものか
少し悩 ....
匂い/におい/おもいだす
におい/乾いた/照りつける
風のない/ひりひりとした/蒸発してゆく
粒子/記憶/おもいだす
海馬/カラスアゲハ/舞う
ひざし/におう/生/性
生まれた/おもいだす ....
iPodから流れる
リロンのさわやか会社員を聴きながら
雨雲の去った青空を見上げてると
心も伸びやかに
どこまでも泳いでいける気がする
いつか親友と走った道
うぶだけど どこかませて ....
猥雑な人の群がりを かき分けて
もう黄昏も過ぎ 日の落ちた道を
母と歩き続ける
露店の賑わいに 目を奪われながら
境内を目指し 参道を歩き続ける
子供の頃は 参ることよりも
....
夏の光を受けて
蜘蛛の巣が
ガラス細工のようにきらめき
萎れた蜘蛛が
捕らわれた羽虫のように
ぶらさがっていた
コントレックスで
乾いた喉を潤し
灼けるような暑気に身をまかせ
....
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