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増水の ために
すっかり 荒れはてて しまった
堤の かよって ゆく なかを
猫じゃらしを 噛み ながら
草ひばりの 音が ほそぼそと つづく
すすき野原を ....
5小節へ と
ベースラインの はずむ 弧線が
988 ヘクトパスカル で 吹いて
フィールドの 天半球と かさなって ゆく...
らぶ ばらっど
( 風乗り ....
クリスタルの ボールが 放られると
ぼくらの ふたつの 土地や からだに
いのちに 焼かれた 対話が かがやいた
放擲 された ボールには ふらふら 泳ぐ
天の 子 ....
ねぼけ まなこの アトリエ
いっぱいに 陽光は 満ちて
画布には 旋律から 対話への
やがて ひとつに 見える 道が 伸びる
( それは きつねの なの? うさぎの ....
また 春が きた って だれかが いう
とめどなく 梅は ほころび
いぬふぐりは 淡く むらさきの 列を 走る
つぶらかな 音で ころ ころ と
ひとなりの {ルビ絃=いと ....
その ほほえみは 生理と いわれる
世に 生まれ 立った きみは まだ 3箇月
歓喜の 波が 寄せる と “ にこ ” と わらう
ときどき 声が 洩れるのは 成長が こ ....
見えては いなかった...
かっこうの 産声が 森を 編み
絹糸を 伸ばして 進み ながら あおいで いた
どうしようもなく あかるい 双眸の 記憶の 波が
茫漠とした ....
八月 二週 また 入院暮らし...
ガラスの塔のなかで、優しいひとらに、接しながら、病と添い寝して。
夏は、晩夏を迎えて、( もう、立ちつくし、亡くなっているのかも、しれない。 )
....
エオリアンハープの 響きと色が 乾いた
白砂の フィールドを 打ちひらいて いった
旗になってしまった 白いシャツを なびかせて
少年や 少女が まだ 薄 ....
ぼくの 守護天使が 堕ちて いった
それに さよならを 言えなくて
それを たどって いった
花咲いていた {ルビ時世=ときよ}には 終わりの 結び目が ....
裸足で しるされた やはらかい 足跡に
さらさらと 波が 水を しみこませてゆく
その消滅の a・b・c(ア・ベ・セ)たちの
静かに 弾けあがってゆく モノフォニーの
....
火の大輪が 咲きほこるのを 待った
ふたり 森蔭の 薄明の ベンチで...
おおきな 火祭りのピエロ 花火よ
ひかりの 満ち潮を ください ....
国境には まだ 霜が 降りて いた
ぼくは ひとさしゆびを かかげて
空 いっぱいに 伸ばした
虚空の なか 水の 夜明けの アラベスク
{ルビ四十雀=しじゅうから}が ....
にわか雨は 去り 桜草の 露の うすももいろに
ぼくは きょうを 生い 立って ゆく
( 撒き 散らされたんだ )
それは ブリリアントに かがやいて
偶成の 初夏 ....
病窓の 最後の 一枚の 葉っぱ
とは ちがう 美しい まだらな 編み物の
精緻な 空間が 午前の ひかりの なかで
なごやかな シラブルに 響くのを とおく 聞いた
....
そこでは ぼく と あなた と だけ だった
ふたり... 手のひらの 傷穴 を 帰って いったのは
日がな 窓の眼の まま いっぱいに
高まり 止んでは ....
月 星 を 必要と しないよ
陽光を 恋さない つれない 夜
あたりが 眠りの なかに あった 夜 に
茫洋な 空路から たましいの まなこたち が
目ざめを 見開 ....