思うに俺は、生まれてすぐに、育つはずのない骸の中に押し込まれ、どういうわけか上手い具合に育ってしまったというわけだ、ある初夏の午後、歪み木細工の椅子に沈んでぼんやりとしていた俺はふとそんな考えに行 ....
こうべを上げれば
新緑、
濃密な匂いに青空は映え
降って来る降って来る
新たな一日の始まりが
吹き抜ける風に
透きとほる
どう見てもセブンだったコインランドリー
セリアになった文教堂
跡形もなく消えたケンタッキー
街の記憶ではない
私の記憶である
誰にも譲ることのできない
私の記憶である
市営住宅の ....
煙草が無いと無理だとか
ビールが美味いとか
スイーツ カ ....
人は
人として経験すべきことを
経験して
初めて成長する
誰かを好きになって
振られたり
誰かに好きになられて
恋人になったり
仕事に就いて
成功したり失敗したり
結婚して子ど ....
時刻は午後四時で、僕は見知らぬ部屋の中に居る、マンスリーマンションのような、生活に最低限必要なものだけを揃えた味気のない部屋の中だ、玄関を開けるとすぐにキッチンがあり、木枠にアクリルガラスをはめ込 ....
○「適応」
暑い日は暑い日のように
寒い日は寒い日のように
雨の日は雨の日のように
風の日は風の日のように
暮らしていかなければならない
○「大義名分」
プーチンも正義のための戦いで ....
舞い降りて来る
舞い上がり
舞い降りて来る
喜びの翼が
明るい陽射しに照り映え
二重三重に輪郭を揺らしながら
救いの天使よ、
今日こそ歓喜に打ち震え
私たちの日々の無力を
吐 ....
乾燥肌の娘を皮膚科に連れていく
娘はおでこをひっかき血が出ている
父と母と娘と三人で車に乗って
これが家族だ、と
父は急に気づいてしまう
三人の間に緊密な連携があって
三人の間に消すことの ....
雪は身じろぎもせず降っていた
無人駅のホームはすでに雪で埋め尽くされ
その明るさはほんのりと
ともし火のように浮かんでいた
ストーブを消し、鍵を閉める
無人駅の除雪番からの帰りしな
積 ....
水を入れ替えるのを忘れた
花瓶だったろうか
金魚鉢だったろうか
お仏壇の茶湯器だったかもしれない
いずれにしても罪深く
自己嫌悪を覚える
最近はこんなことばかり
やることなすこと ....
ひつじ雲はあんなに夕陽に映えて
街の建物はみなオレンジ色に染まり
見知らぬ異国になってゆくのに
君はやわらかに目をつむって
まだ見ぬ海の語りに耳を傾けている
僕には微かにしか聴こえないか ....
なにも知らない、
何一つ知らされていない、
わたしという存在が
億万年の彼方から送り出され
今日の宇宙を仰いでいる
あゝ天晴れ、
わたしは躍る
この地上にて
何一つ覚えず
何一つ ....
気怠い声を
突き刺さる声を
遥かな地平に放ち
失われた故郷からの応答を待つ
懐かしい高曇りの大気の匂いに誘われ
剥き出される異邦の孤独が
両手を広げ帰っていく場所
振り絞るように ....
猛烈な冬の寒波に見舞われた
はるか上空の雪雲のなかで
ひっそりと生まれたのは
ちいさなちいさな
六角柱の結晶たち
雪雲の中を風に吹かれて
上昇したり落下したりと
いろんな雪雲 ....
言葉を尽くしていたい、死力を尽くしていたい、とても簡単なラップ調の聞きざわりのいいフレーズだ、ばかみたいだね、産湯にひたるような薄い感傷、何かにいつもいら立っている、どうやったって黎明、並べただけ ....
端子:tansi
名まえ創るとき考える、
魔法な閃き運び徠る、
歌よりも美しいコトバを綴りたひがため、登攀、愛珂さもありな ....
雪が降ると、地元建設会社の除雪車が朝の三時ころから家の近くを通る。それとともに覚醒し、トイレに立ちインスタントコーヒーを飲む。用を足し、四時半には身なりを整え表に出る。
昔から、家の前の雪を払う ....
真冬の星座の下で改造拳銃をみぞおちに当てて一息でぶっ放した、火薬は多過ぎ、スプリングは確かだった、燃え上がり、あっという間に丸焦げになり、ヘドロだらけのどぶがようやく流れる時のなにかを引き摺るよう ....
語られない常識
掴み損ねた本能
常磐色の烏が一羽、胡桃の枝から生えていた。
* * *
共感はエメラルド
しかし憧憬はすでに色褪せ
疑念は大気に溶けひろがっている
....
神様が
気層の底で笑っている
朝未だ早き夢の中
光すきとほる道筋に
遥かな希望が舞っていた
死の断崖が近付いている
残された時間が切迫する
信じることだけ許されて
生きている
....
ときの流れが
千代(ちよ)のおおぞらを
やさしく流れていっただろ?
お楽しみは
これからだ、と
やさしく髪を梳いてくれる
そのわけを聴かせてよ?
やわらかい印 ....
異郷の地に立って
根こそぎにされ
もう何も残っていない
荒涼としたノスタルジア
魂の奥底から滲み出て
北の国より吹く風になびき
遥かコバルトの海底に沈む
日を追うごとに
紋様はこ ....
ときは変わり
むかしを無かったことにしてくれたら
たいせつなものを
忘れてしまっても
かまわないだろうか?
そんな夢をみた
そこではこの手に
なにも持っていなかった
....
果てしがないように思われる
このトンネルを抜けることができるのだろうか
どこまでも続く暗闇が尽きるところがあるのだろうか
仄暗い誘導灯が足元を照らすけれど
明るい陽の光は差し込んでさえこない
....
こうべをあげて
青い空が広がって
静けさが辺りを包んでいく
昨夜の恐怖と奈落の底と
窮地を脱して迎えた朝に
廻る球体は光りを投げ掛け
今日の救いを差し伸べる
静けさが満ちるこの朝 ....
はじまりは夜の公園で
同級生とタムロしていて
そして煌々と
自動販売機は虫達を従えながら
少年を挑発するのだった
マイルドセブン
マルボ ....
視界の端に映る太陽の中心を逆十字に彫り上げて背徳の日陰の中に今日の悪魔が現れる、よう、惰眠は済んだかい、今日のお前は昨日のお前よりも確かかい、とからかってくる、俺は無視を決め込むがやつは満足しない ....
年始から、尖っていた妻が落ち着いてきており、昨晩の妻は上機嫌だったので良かった。
昨晩、いけないとわかりつつアイス・コーヒーを飲んでしまって、目覚めはあまり良くなかった。それでも朝食、 ....
高校時代に出逢い
長く付き合ってきた
あなたからのプロポーズ
ずっとこの瞬間を待っていた
積み重ねた思い出がリアルに浮かぶ
遙か彼方まで明るい
未来は輝くばかり
自然の流れに ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46