すべてのおすすめ
耳
の奥
の枝葉
の枯れ屑へ
足音の一人分を
沈め続け
祈り
の指を
耳たぶ一人分に
勘を頼り当てやるも
冬に備える温度の一人分も
何処にも少しも ....
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった
冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ
それでも ....
羽虫の身震いが
きらきらしている、音
夜の
羽虫への
局地的な雨上がり、のあと
雨上がりの羽虫の
きらきらの
身震い
わたしが
裸の少女のようであるときは決まって ....
繰り返される
果実の落下・落下・落下、の
地面で重複してゆく破裂の匂い
それだけを呼吸し、それだけを呼吸したら
わざと気化したくなるほどの、それはひとつの悦びか
....
砂の音のする、波
波の音のする、空
横たわり、重なり、果ててゆく、
空と波と砂のコントラスト
波打ち際を見逃したら次は
水平線に紛れてゆく人の素足が
空と波と砂の
コ ....
四肢を垂らし立ち尽くせば
卵は割られず何も加熱されず
窓硝子の北向け北に閉じ込められ
朝は有耶無耶のまま凝固した
無臭のお皿だけが、仄白い円形の
仄白い、せめても ....
しっとり、これは
濡れるために、素足
群れる草の土に冷たく踏み入り
行き場を失くしたことのない、
何処にも行かない、素足でした、濡れるために
こっそり、あれは ....
聞こえなくなる直前の耳に聞こえる
鈴虫の羽が散らす美しい高音の点線に沿って
無数の枝が折れてゆく、無数の枝が折れてゆき
その微細な山折りと谷折り、その隙間から
水と ....
生まれてはじめてお付き合いをした男性が結婚したことを知った。当時は男性というよりも男の子だった。愛読書だと言い、『風の歌を聴け』を私にくれた。そうして自分の為に新しい本を買っていた。今も愛聴 ....
残暑が、高らかな色彩吐露を
自ら慎みはじめている
少しでもぶり返せばそれは
奇声、とひとことで片付けられる
薬を拒んでも、夏は引いてゆき
もう夏風邪とは呼べない何かと ....
昨夜は
わたしの体を切り捨てた反動で
わたしの夏がすうと遠のき、その反動で
体の、体であるという軸が大きくぶれた、ような
辛うじて肌寒いとわかるだけの
....
未だ硬い、既に確かな
夏でもない、秋でもない、果実で
深緑は
瀕死であることを理解している
見上げれば、ひとつの一秒が
高速で遠のいてゆく
わたしは、何に対しても連 ....
夏祭りの夜へと
手を引かれた私の
耳たぶ、薄く
汗の艶、熱く
提灯のように
風に赤らむことを
しっとり許された
夏祭りの夜に
石段の高みへ
鼓動と鼓動の、 ....
しっとりと伏せられ、そのまま
こと切れたあとの、薄青い、薄暗い
目蓋のような擦り硝子を前に
決して、そこから
目蓋なんぞ連想しないと思い直す、おんなの
見下ろす、白百合の ....
細胞の輪郭は
発熱に適した形なの ね
あなたの音源との距離感は
可笑しくて悲しいけれど
あなたの感覚器の滑稽な分離も
可笑しくて悲しいけれど
さらに 伝導にも適した形なの
....
夏物の花柄が薫ったのは
パタパタと羽ばたくような助走の後
遊具を飛び越える、わたしの脚の発熱を
自由のきく緩さで包んで縛って守っていたから。
少女が、少女であれば少女あるほ ....
例えば、ゆるゆる喉を下る
ぬるい水、ひとかたまり
心臓を掠めそうで掠めない
何処にも、何も、満ちない
真昼を怠りたくて怠る身体では
空ろまで無気力な
ほら、 ....
だって
どの午後にも
煩い色彩がありました
静けさは無く
とりわけ静かな白は無く
ぬるい絵の具にわたし
どうしたってなってゆくみたい、と
教わらなくても、 ....
横たわったままの、朝にて
薄明かりと薄暗がりを識別して遊ぶ
思慮深い音を立てるのは
鳩に柔らかく蓄積した灰だ
嗚呼、わたしの小さな頭痛
に添えるわたしの手のひらが
....
テーブルから
持ち上げたグラスの跡の
丸い水溜りをかき乱した指が濡れた。
夏の熱が引いてゆく。
グレープフルーツジュース。
そのグラスを頬に当てれば
あ、この匂 ....
地へ圧し掛かる空と
空へ高揚する無数の緑の視線との間
夏の声帯が震え、静かに感情を燃やしている
若い耳で、耳鳴りが日常になってゆく
若い目が、陽炎に依存してゆく
信じられるものを ....
苦しげな雷鳴に飲み込まれ
灰色に溶けてゆく午後の中
向日葵の黄色の彩度が
浮いてしまっていて
それでも、向日葵は
いつまでたっても泣いたりせず
ああ、どうしてなの
滲んで ....
熱く
青く
南から押し寄せる
夏の、ソ、ラ、シ、の
反復の幾つかは
肌を灼熱させたり
唾液と共に高笑いに混じったり
アイスクリームをベトベト光らせたり、そうして
幾 ....
あの夏の指は
空き地の夏草で切れ
薄っすら汗滲む指紋にぽつ、と赤く
劇的に熟してゆく果実を携えたように
あの夏の指は
空き地の夏草で切れ
何処にも行かないという約束 ....
すれ違った自転車の子供を
振り返る
白線が
鮮明に割き続ける
通学路だったアスファルトから
子供たちの声が古いものから順に遠のいてゆく
肌で増殖する蝉の羽の ....
光
清い、白の
まだ濡れている
瑞々しい、ナイフ
フォークの曲線
その後の先端
グラス
の中の水
に落とした氷
純潔、純潔、純潔、衝突
高音 ....
明けて、色彩が始まり
かつて刻んだ果実の朝の瞬間に
黄緑色の芳香と共にかつてたちこめた笑い声が
初々しい果実として、生まれ変わっているのを感じるから
わたしは齧る
あ
ずっ ....
柔らかく黒く夏で濡れている子供達の髪の毛の
美しい経緯を追い過ぎた眼の私は
くら、くら、
平衡感覚がたわみ
色彩感覚があればいいと思った
色彩感覚があればいいと思った
身体の、 ....
無数のソーダ水の泡が
ソーダ水から夏へ飛び立つ
そのときの一頻りの冷たい破裂音を
私たちは聞きます
ね、
それは、模範的な別れの際だと
ほら、そのあとに残るぼんやりとし ....
遠い飛行機のような音を立てる
夜の、曇天
その鳴動、鳴動、鳴動、
大気は夜を続けるも
わたしは仰向けの形、ひっそりと静まり返り
暗く目を開けるだけで
何かを促す性能はな ....
1 2 3 4 5