何年も
荒れはてていた庭に
野菜の苗が植えられ
植木鉢の
マリーゴールドが置かれた
母と父が水をまいて
コンクリのように
馬車道のように押し固まった土を
いくぶんか、柔らかくさ ....
使い方も覚えた
ようやく
夏が乾き
昨日へと遡ってゆける余裕が生まれる
抱えたことのない問題によって
ひとは計られるとするならば
誰も 誰一人として
濃い青空や
水に濡れた感熱紙に
....
政府は、自殺者撲滅のため
自殺の場合は死亡届けではなく
生涯終了届けを提出するという
法案構想を発表いたしました
自殺者は、生きることを終了しただけで
この世から存在は亡くなられてはいな ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 ....
左川ちか作品のアーカイブです!
全詩集が手に入らなくて泣いてた人は、読みに行きましょう。
そうでなくても行きましょう。
http://soredemo.org/archives_sagawa ....
あ、熱
の予感に
振り返れば、白、白、白い、強い
ビニルハウスの、輝き
緑、の匂いに振り返れば
畑の若い夏野菜の、足々の、美しい美しい強い
濃厚な土への、浸り
....
長い眠り
そして夢
彼は水の底で 海の底で
静かに
雌伏の時を過ごしていた
そして眠り
またも眠り
心地良い水のゆらぎの中で
彼は際限なく眠りつづけていた
動乱の前の
不気 ....
夜闇。暗さに光線、たとえばただアスファルトの隆起したひとかけらを照らしている。点は(このままだよ)とささやき、いつしか光の粉をまいて。すふすふと積もり、埃のようにけむりながら少 ....
ひどい青さの落果
そんなに思い出を失くしてどうするの?
夢をみてるのね
ゆるい傾斜の果樹園で
ひとつひとつの木には
実がふくらんでいて
それいぜんには
花が咲いていて
遠い
息が ....
硝子細工の
幾つかの重なりは
小さな風の溜まり場をくるくるとかき混ぜて扉を揺らし
丘に続く小道を夢見るのです
夏が降り
気まぐれな模様を織りなして
あのひとの指に留まった雨粒が私の
....
中心へ向って途絶えない無数の
緑の中に駈け寄って
眼の後ろで呼ばれた光は
しだいに
向かい合わせた最後の場所で
塵に変わりゆく扉に刻まれても
痛みのオウトツを識らない
薄まら ....
黄色の傘がルーレットのように回り
答えを落としていった
ぽつんぽつんと落ちてゆく答えより
回る傘の鮮やかさにみとれていた
色のない答えが静かな雨に溶けてゆく
黄色の傘が警告ランプ ....
チアの髪だった
耳の
曲線は
何百年の病だった
貝殻をあわせてみると
二輪車の棲んだ
浜辺に
いる
あ、あー、あ。
ニューステージでは、悲しいこともあるよ。
雨振ればバラバラでもう元に戻せない、けれど今日、暗い夜の丸い月の射し込む光、そして負。ぼくらの足音はひどく響いて ....
日々、日々、そして日々
直立の過ぎた或る身体が
正しい姿勢というものを失念してしまう主な原因は
目にした花弁の、茎の、色彩を、質感を、暗記し反芻することで
一時的に和らぐことができます
....
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は冷えてゆく
冷たいことばが風になり
人は一瞬目をそらす
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は枯れてゆく
乾いたことばが砂になり
人は一 ....
おとのとどかぬさめたよる
はるかかなたにみかづきありて
こくうにうかぶわたしはなにか
きしみにくすんだあたりはやみよ
そらからにじむひかりはあわく
なみだのようにあめがふ ....
海と陸をつなぐように
あなたは海岸線を歩いている
砂浜で波とたわむれる
あなたを見失ってしまいそうで
急いでかけよった
僕の砂まみれの顔を笑っている
あなたの白をたどれば
その薄紅色 ....
砂浜になぜか
まるのまま打ち上げられたりんご
いつからあるのか
りんごはなかば透き通っている
食べたらひどくだめそうなのに
僕はそれを舌にのせる
のを逐一 想像する
おいしい ....
わたしの前から
あなたが立ち去った
その瞬間、
わずかな風が生じる
わずか、だ
わたし自身が感じるか感じないかくらいの
本当に微かな風
しかしその何とも言えない悲壮感
わたしは ....
私の意識の
極北に立つひとがいる
彼はいつも黒い服を纏い
時にその服を髪を風にたなびかせ
時に無風のなかに
その立ち姿の輪郭をくっきりと映し出し
時に彼は流れる水のような
ゆらめ ....
消えてゆく瞬間に目を開けると
そこは青い草原で
私は少しずつ目を覚ます
私を溶かしたものの正体を
忘れることで
私は再び瞬きをする
また少し色が変わった
青い草原で
溶けて ....
メスシリンダーはすべて
叩き割って構いません
まちは季節によってその色を変えるのに
案内図の中には
風一つ吹かないのですから
傘は売れましたか
そのことが一番気がかりです
という嘘はいつ ....
「念力俳句」をエキサイトテキスト翻訳で日→英→日翻訳したものです。
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=30897
1. 念力
それは変の念力のYuk ....
原に舞う少女の肩に髪の毛に見えない蛇がうずくまる午後
くずおれた樹と鉄塔は野に沈み過ぎゆくものの夢をみている
花ひとつ口に含んでまた戻し蛇と少女の無言のくち ....
ブリッジをする君が足元
そして腕のあたりから
徐々に橋になっていく
なぜ君はブリッジをしていたのか
なぜ本物の橋になる必要があるのか
僕らは何を間違えたのか
かつて優しい嘘で慰めの言葉 ....
下り坂は
南を向いていて
西に緩やかなカーブを描く
早朝
陽の当たる坂道を
桜並木のある坂道を
幼い彼は箱を抱えて歩いていた
簡単な恋をしていた
簡単な悩みもあった
け ....
ねむる石のねむれない夜のかたくこごえた思
い出のなかのあらゆる音をききあらゆる色を
みてあらゆる味をなめてあれはとおい海のな
がい砂浜の潮とたわむれる歳月だったあれは
ふかい青空のしたのひろい ....
きみがまだ少女の頃はぼくもまた少年だった すれ違う駅
きみと向かいあって話した教室が世界のすべてであったあの夏
きみの吸ってたマルボロライトを吸ってみる吐き出す煙が重い七月
....
<早朝のめまい>
無数の針が 雪の地平線に整列してゆく
朝日に小刻みに照らされて
瀬戸際の美しさを
告げている
銀色の予感はめまいの中で
怖れながら起立する
人肌の息を含んで 撚りをかけ ....
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