換気扇が、軋んだ音を降らす。
両親たちが、長い臨床実験をへて、
飼い育てた文明という虫が、頭の芯を食い破るようで、
痛みにふるえる。
今夜も、汚れた手の切れ端を、掬ってきた、
うつろな眼で、 ....
山の奥に入って行かなければ
採ることのできない昆虫が
都会の真ん中にたくさん生きている
虫網を使わなくとも
高価なお金で獲得できる
採る楽しみよりも
持つ楽しみに変わってきたのだろうか
....
夕暮れ
母校の校庭の隅に立つ
{ルビ巨=おお}きい{ルビ欅=けやき}に額を押しつけ
涙を絞って泣いていた
この木のまわりに穴を掘り
子供だった僕等の宝を入れた
卒業前のあの ....
まどろみを さめたり もぐったり
白日の 季節の かいなの なか
体力は うばわれ
けだるさに 眠って
窓を 吹いて くる
れもんの 風との トランスファー ....
ひどいことを
じつにさらさら言い募った後で
ごめん
あたし、
心を病んでるの って
えもいわれぬ大噴火を
だから布団に叩きつけた
ごめんな、
お布団
チャイムが鳴ったので玄関に出てみると
天使が立っていた
私は追われています、かくまってください
僕には断る理由もなかったから
そのまま部屋に上げた
天使は部屋に入るなり
ど ....
この宇宙のどこかで 広がる景色は
どれだけの時間を 刻み込んでいるの
海の底に沈む 悲しい歴史は
変わらない気持ちを 物語っているの
真実の愛も 錆びついてしまえば
嘘に変わ ....
夜が毎日やってきて
ラピスラズリを細かに砕き
私に塗り重ねる
紫陽花は
青から変わることなく
傷みながら
終わりを迎える
君が触れた私の一部が
いつまでも熱を保ち
上手に朽ちる事 ....
いつも見る街の景色
行き交う人の顔はすべてモノクローム
失った思い出に変えられるものは
もう、この街のどこにもない
シンクロしない切なさ
ビックバーンの時から離れていくさだ ....
一人タバコを吸い
息を吐く
昨日はカレーを作った。
お礼に包丁のセットを
貰った
人を紹介して
貰った
人に頼りにされる
ようになった。
遊ばずよく働く
ようになった。
空から
空から靴の音がしました
夕焼けの網戸から避雷針が見えます
そしてカラスも
夕陽を見るでもなく
色のない私を見るでもなく
カラスは行きました 靴の音がしました
この身 一つ
つぶやきは
虫がすだくように
土に溶ける
空を見ていた 真夏の
いくつもの巡り
また やって来る
胸の入道や
夕刻の驟雨が
どこかで
タブラーがうね ....
迷走した夜明けが今日に辿り着いた
しまい忘れた記憶が日に焼かれ
過去になりきれなければ後悔になる
(朱の刻)
その頃眠りにつくのがいい
いろんな唄も聞こえるだろう
そ ....
愛の向こう側へ逝ってしまった、アナタ
夢見ることも未来を語ることも無く
過去の想いが昇華した姿でワタシを抱きしめようとする、アナタ
喪ってしまったものの大きさにも気づかずに
欲 ....
たとえてみるならガランドウ
気分でいえばそんなからっぽなはずが
石ころコトリ落ちていく空間もないほどに
枯れ枝はりめぐらされた
小宇宙、胸の中
新しい夢追うごとに
芽吹きの季節のたびに ....
コルトレーンのサックスが
僕のペンを踊らせて
水色のノートに
リズムを覚えた言葉達
派手に転んでは
また立ち上がる
詩がダンスなら
人生だってダンス
空白のページに
素敵な言 ....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
どこにもいない
だれもしらない
いろもかたちもない
いみのないことば
みえないひと
だれもしらない
きえたひと
ひとでもない
なんでもない
....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
役職は個人の放棄に近い。
役職で呼ばれて喜ぶようでは。
そこにはあなたという
個性は含まれていない。
「先生」と呼ばれることと
「人間」と呼ばれることは
言葉が違うだけで
同じく ....
たいせつなものは
いつだって砂の中。
積み上げても積み上げても
ほろほろと崩れてしまう蛍光性の粒子の奥、
そろそろとうずめてしまいたくなります。
波打ち遠く、
ひっそりとひっそりと ....
街燈の光から
裸にされた
月世界のモノローグ
夜の哀しみの
ねぐらを見据え
月光に混じりあう
葬列を往けば
緩和されゆく
視界のほつれ
伏した肩肱は
硝子の時計を踏 ....
遠く、遠く、遠いところへ
大げさな荷物、{ルビ背負=しょ}って
これから俺は旅に出る
夜明けと共に旅に出る
目の前に、道があるから
信じて、明日を、夢見て、
歩き続けるだろう、俺は
....
うたた寝をする為に
気付けば膨大な量の煙草に火を付けてしまった
くわえてるのに
また一本手に取った
ああ、眠いのかな
天井が白く霞む
はなれたくないよ はなれたくないよ
時間は止まることを知らずに ただ流れていく
どれだけ ふたりが 強く願い合っても
若すぎる力じゃ なにも叶えられず
君の声や仕草を深 ....
木々によるさまざな動議が
夜の土に投げ出されている
光源を追い抜く影の群れが
道を軋ませ ころがってゆく
空は三つの重なりから成り
そのどれもが朝から遠く
空は
自由 ....
最近私は
貴方が死んでしまうような気がして怖い
貴方に宿る悲しみの青い炎は
貴方の命を そっと燃やしてしまうだろう
そして当然のごとく
貴方の美しい屍は 土に還 ....
遠くから 私を呼ぶ声がする
振り返ると そこには 大切な人たちがいた
手をふって 微笑んでいた
あのときのままで
どうして 気がつかなかったんだろう
あんなに 心寄せていたのに
いつだ ....
ぼくが辿り着いたのは
陽のあたらない街
揮発性の感情が歩かせた
その道の果て
夜行性の衝動に走らせた
くだらない羽
五月雨が心を伝う
晴れの予報は外れたが
午後には晴れた ....
夕暮なのに空は青く水色で
辺りをオレンジの空気が
流れるのに暖かな記憶は
思い出に妬けた赤瓦
錆びたトタン
泣いている子供
薮蚊だらけの雑草の森
自分を分解していく幻想
神社の ....
1 2 3 4 5 6 7