冷たい砂浜に、誰か
体で泣いている
空生まれの灰が沈んできて
波へ死んできて
折り畳まれてゆく、その灰の
海はノイズだ
今は、眼を閉じて
耳だけの ....
放課後の廊下を歩いていた
右手には教室が並んでいて
どこまでも続いて終らない
左手には中庭の木立が並んでいて
無数のヒグラシの鳴き声が
窓ガラス越しにじっとりと暑く
....
一日はそのように始まって
一日はそのように終わっていく
きっと
部屋の隅、テレビの上
ほんの少しの暖かさ、の裏側で
空が重心を失って色を零していく
十時十分
並んでいる時計の ....
金木犀の小花が
打ち明ける秘密を
直ちに忘れてしまってこそ空は
どこまでもひとつの
どこまでも青く澄み切った隙間です
衣服を自らほどいたわたしたち ....
視線をゆきます。
ひっそりとした
鋭角な色のない
告白にも似た存在の道
とぎすまされた意志の果てには重く輝く種子が宿る
涙で
洗われた深い瞳
そこに秘密を映す
答のない ....
さよなら
を言いそびれたから
本当は帰りたくなんてなかった
日比谷線が
たくさんのさよならを詰めて
こうこうと光っていく
あの向こうへ行きたいな
苦しくなんてないけれど
....
耳
の奥
の枝葉
の枯れ屑へ
足音の一人分を
沈め続け
祈り
の指を
耳たぶ一人分に
勘を頼り当てやるも
冬に備える温度の一人分も
何処にも少しも ....
午前零時、手を繋いで光る橋を渡る
窓ガラス全部割ってステンドグラスに再構築
地球に派手に落書き
消えない様に
真夜中の
骨の色素が熱を帯びて
暗く
暗く蒸発してゆくのです
未だに守れぬ約束へと
恐ろしく白い
わたしの骨は
いったい何を支えている
夢か幻か否現実か
未来は己で決める
....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
木がねむると
木のなかに
ほんとうの木がうまれて
風にふれようとする
風がねむると
風のなかに
ほんとうの風がうまれて
空にとどこうとする
空がねむると
空のなかに
ほんと ....
破裂する宇宙服からこぼれ出すはるかな草原駆けゆく少女
一片の光は遂に熟れ過ぎて落下してゆく宇宙の果実
むらさきの虚無が飛来す青空の上で吐血す宇宙飛行士
太陽のひかりときお ....
ギターの弦を
思いっきり緩めて
今日が明日に変わる瞬間の
その境界線上に
そっと置いてみな
弦を弾くと
その揺らぎが
その振動が
今日と明日の境界線を
ぼやけさせて
曖昧にして ....
どろどろになった夜が
行き詰まる
収束された光が逃げ場を探しながら
飲み込まれていく
限りなく肥大した闇が舌を延ばして
ひとつ
ずつ
街灯を吹き消していく
誰も ....
プレゼントの
箱のリボンを解くと
中には世界が入っていた
逆さまにして振り落とすと
すべてがからっぽになる
落としたものはどこへ行きますか
一人の部屋で逆立ちをしていると
一日 ....
干からびた時間を笑ってすごす。
白い幕に閉ざされた窓の向こうに
僕の行けなかった黄昏が潜んでいる。
澄んだ青い海を背に小石を拾うと
波の音で囁きはかき消されるのだ
寂しさが満ちる ....
透過傾向にある
あこがれを{ルビ禁=いさ}めて
風と{ルビ心中=しんじゅう}
(危うげに傾倒する風脈)
距離は
あこがれを侵食するのか
もう発生です
雨天決行よしなに
風はどちらか ....
羽虫の身震いが
きらきらしている、音
夜の
羽虫への
局地的な雨上がり、のあと
雨上がりの羽虫の
きらきらの
身震い
わたしが
裸の少女のようであるときは決まって ....
幼い頃のひとり遊びの記憶は
影となって私に纏わり
誰かを愛そうとするたびに
耳元で呪文を投げかける
楓の色づく様を
薄の頭をゆらす様を
人と分かち合うやすらぎを ....
憧れが
ささやかな私を満たす時
ひとつの幸せを見る
あなたは
時間とともに
美しくなってゆく
朗らかに広がる樹木から
眩しくはない光が差すように
あなたがいる場所には
精霊が ....
ピアノの鍵盤はじける
もどらぬ深海の底に
画用紙をはみだした黒と
混じり
内出血は生まれる
願いをこめた文字に
紙やすりをかける
....
たぶんぼくはぐちゃぐちゃのどろどろのけつえきのかけめぐるたいないのはじけるだろう
傷口を更に深める部屋を出てぐいっとひらく赤い雨傘
ドライヤーで髪を乾かすときに目を閉じる あなたの ....
砂の音のする、波
波の音のする、空
横たわり、重なり、果ててゆく、
空と波と砂のコントラスト
波打ち際を見逃したら次は
水平線に紛れてゆく人の素足が
空と波と砂の
コ ....
もう一度、始まるのです
そう言って眠り落ちる人
危なくはないですか
休みたくは、ないですか
瞼の裏側の静かな暗闇で
一人で旅に出るそうです
朝までには戻るから、と
その人は
積 ....
取り締まることのできない光の減少が
駅のホームに加算されていき
歩みと停止を繰り返す人影を貶める
遠近法を失い胸まで迫ってくる欠落に喘ぐのだ
やがて満たされる黒の描写の内 ....
意識されない曲線の内側で
永久機関の少女性が調弾する。
その輪郭は振動し
奥深く鳴りつつ最果ての嘘を静める。
お先に失礼
直線的で清音の科白が膨張する空のもと
つきぬける(或いは私 ....
海 空 無
ゆっくりと夜のなかを
大きな鳥が通りすぎる
雨が空をかけのぼる
光が空にこだまする
夜に隠れた者の影が
木々の間を埋めてゆく
半身だけの囚 ....
長い時をかけて
風が風になってゆく
しげみから飛び立つもの
水の上をゆく光
壊れかけた庭に引き寄せられる
残された数本の木々に引き寄せられる
闇がさくさくと
冷 ....
わたしの血は
青く青く沸騰し
ゆらめきながら立ちのぼり
はてしなく透きとおった
青をふらせた
しなだれた渇望のからだは
ゆく先のしれないおもいと
めまいの予感を内包していた
いよい ....
あなたの方で風が吹いている
わたしはわたしで知らないことばかり捜している
秋がそこらじゅうで溶けはじめるとき
空き瓶には夕くれが満たされるとき
幾つもの詩を繋げるようにして
わたしはあな ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41