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掌に海がある
水平線のむこうから
海賊船がやってくる
わたしから大切な記憶を盗み
それで得た金で
毎晩酒を飲み騒いでるのだ
わたしは海に飛びこみたいけれど
この体から出ること ....
ついに私は
私を演じきれなくて
舞台の幕を下ろしている
途中なのだった
ふと私は
我にかえり
路上で目覚めたのだ
役者のように
服を着て
それ以外に
何もなかっ ....
消しゴムで消してしまうと
虹が出来てしまうから
それ以上描けなかった
あなたの顔は
スケッチブックの上で
雨後のように濡れていて
小さな水溜りにある黒子は
ゆらゆら揺れながら
....
調律が合わなくて
ピアノが港を発ってゆく
小さな港で
すばらしい音楽を奏でていた
そんなピアノが
指先から音がした
触れてはいけなかった
白と黒の鍵盤に
わたしの小さな罪 ....
空から新聞を配達した
鳥が
雲の匂いをさせて
日付変更線をまちがえて
落ちてくる
少しずつ速度を上げて
時はわるびれた様子もなく
記事が
ところどころ切り取られていて
それ以 ....
記号となった
分岐点のひとつひとつが
日付変更線を
越えていく
書き忘れた欄に
いつか名前は記されるから
鳥に名前はなくても
南の島は待っている
春は匂いなのに
雪はこの胸に ....
橋はもうないのに
人は渡っていくのだった
橋の向こうには
もう誰もいないのに
それでも会いにいくのだった
いつからか
橋を渡り終えると
振り向く癖があるように
本の隙間から
光が溢れている
行間のひとつひとつが
とても眩しくて
僕らは本の影の部分を
読んでいるに過ぎない
見失った灰色の街で
出会ったばかりのきみから
きみの本を借りた
....