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はんぶんの優しさをください
背中の割れた
脱け殻でもよいので
*
すいかの臍に
耳をあてれば
野菜であるという宿命を
粛々と背負う
胎動がきこえる
まだ生まれてもいないの ....
さといもの葉の上を
するんするんと滑ります
あ、
(あ、)
水滴、すいてき、てきてきてき、
曇り空の弱いひかりに
あなたの瞳はうるんできらめく
つかみどころのない
あいのことば
....
後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、
を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたく ....
傾いた傘はあんまりにも遠くて、わたしは濡れていた。ふたりとも濡れていた、の。つまり傘なんて役たたずで、わたしはあんまりにもしあわせで、しあわせな濡れかた。の、降りしきる、雨がさくらを散らすのです。零れ ....
春の列車が
終着駅についたので
降ります
列車はまた
新たな終着駅へと
折り返していきます
ありがとう
ここから先は
歩いていきますから
レールの上
とやらが嫌になった ....
石けんの香り
ゆらいで
沐浴
朔日、
娘が生まれました。
張りつめる乳房の
端から
わたしの血液を
ふくませ、
ふくませ、
新月のひかりで
臍の緒を断ち切ります。
....
耳のようなかたちをして
母のおなかの中でうずくまっていた
そのとき私は
ひとではなかったが
確かに
ひとの一部のかたちをしていた
二十歳の誕生日に
ストローの束をもらった
もうすぐ ....
湯船のふちまでお湯を張る
そっと揺らさぬように
しずかに身を沈めると
溢れ出たお湯が
洗面器をさらった
体の芯がやわらかくなるまで
ゆっくりと数をかぞえる
幼い頃
....