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開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
片田舎の単線はこころの隙間を
ゆっくり増やしてゆく時間がある
まるで泥水のなかを泳ぐように
深くヘッドフォンを刺す
信号のない、点滅した街の
壊れたコンクリートの道を
みんなに ....
今日も空は青かった
にこりともせずただ青く
無限の沈黙のうちに
それは在った
今日も私は無力だった
宇宙の虚無に耐えかねて
あなたにあることないこと
喋っていた
今日も黄昏は優 ....
飛行機に乗ったのはハネムーンの一回だけ
幸せの絶頂期
まさに天にも昇る気持ちだった
でもね
その時はまだ入籍してなかった
お金なかった
けど
式をあげてささやかに披露宴はした
....
たんとんたんとん
連弾し
主を濡らし
雨の降る
空は灰白、
遠い目で
見つめている
眼差しが
銀の雨足、
瞼に乗せ
すっと透過し
宙を舞う
後に響く
雨音が
たんと ....
写真は嫌いだった
カメラを向けられてシャッターをきられるのは嫌いだった
私は顔や姿に自信がない
そればかりではない
衣服では誤魔化しきれない内面の貧弱さ
独り身の時代
異性は私を避けて ....
子供の頃に母親の財布から小銭を抜いた。
母親はそれを知ってか知らないか何も言われなかった。
勿論、紙幣には絶体手を出さなかった。バレてしまうし、それ以上に私んちが貧乏なのはイヤと言うほどわかってい ....
雨が降る
漆黒のタール、銀に輝かせ
雨が降る
懐かしい匂い、散布しながら
雨が降る
遠い記憶の感触、浮き上がらせ
今宵すべてすべて静まり返り
わたしは独り寝の床を整える
未知の予感 ....
引き出しの隅から出てきた
100円ライター
大学生の時に
二箱吸ってやめた
ラークマイルド
高揚もリラックスも得られず
友達と一緒に手放した
十年振り
試しにと
でも
火は ....
満月が頭上にかかり
地に潜むものを照らし出す
私は月明かりを手で掬い
落ちる陰影の青白さ
いつまでも見つめ待っている
地に潜むものの輪郭が
現、露わとなる時を
忙しく過ぎる世相の奥に
....
天変でも地異でもなかった
なのに
突然変異の如くあらわれて
人間の社会を襲ってきた
闇雲に
人身に侵入して
その組織を壊すから
人心を恐怖と不安に陥れた
テレビをつけたら
感 ....
私は魚ではなく
人だから
海は
陸とつながってる部分が
好きだ
見渡す限り海だけの映像は
空恐ろしい
そこに岸があるからこそ
安心して美しいと思える
そして
岸から ....
遊びトモダチ
トモダチ意識が煮詰まったマブダチ
仕事仲間
仕事以外で
趣味が同じ 夢がいっしょの
気持ちのあう仲間
一切私にはおりません
なので余計な気は使わないし
お金も出ていき ....
テーブルをはさみ
仲良く話しながら食べ
じゃぁまたと手を振っても
あなたは見えない
藤の花を愛で
ウイルスを怖がっても
連休はたいくつねと言っても
近くで笑顔を見せたのに
あなたは ....
夜陰に
静けさの
微かに揺れ動く
ベッドを囲む白壁から
白の色 剥がれ漂い出し
微かに振動する
静まり返った
四方空間に
彷徨い落ちゆく白の色の
帰着すべき基体の不在
....
暗闇から
太陽が昇る
一日が
朝がはじまる
担った役割を背負い
体を伸ばす
今日もいい日だ
家の外はまだ肌寒い
柔らかな陽射し
髪をなでていく風
口を開けば
笑み ....
空間に
手を差し出し
ゆっくりと
上下左右にかき混ぜる
けれども
存在する
はずのグラスは
見つからない
空間は
次第に重く澱んでいき
だらんと開いた手のひらに
粘りつくように ....
天国までは垂れ下がった縄の梯子を必死になってのぼらなくてはならないらしい
それに引き換え
地獄には急な滑り台を一気に滑りおちて行けるらしい
でも
その真偽はわからない
誰一人死後の世界か ....
イタドリ
への呼び掛け
イタドリ
からの応答
脳内に再現を試みる
すると現れる
囚われる
熟語
観念
の
繁茂
群生
侵攻
旺盛な生命力
厄介者
文字を消去して ....
背後から呼ばれたような気がした
雑踏に立ち止まり振り返ると
それは自分ではなかった
ぜんぜん知らない誰かが
知ってる人間を偶然見かけたらしい
呼び止めて懐かしげに言葉をかけていた
....
雛鳥の
巣を抱くような
恋をして
心臓を
貪るように
交わって
雪の降る
街で
そっとお別れを
そんな
お伽噺のような
時を過ごし
漆黒と
戯れる今は
孤独 ....
気付いたら
汚いおっさんになってた
さっぱりと
カネが回って来ない
汚いおっさんになってた
気付いたら
スケベなおっさんになってた
そこんとこは元々か
気付いたら
世の中 ....
生きてると
日常的に疲れる
一日八時間を拘束されて
働く
その対価として
賃金を得ている
得た賃金によって
衣 食 住を賄う
今月の住居費
今月の光熱費
今月の通信費
....
明日がなくなるのが怖くて
今日を必死に生きている
明日がなくなるなんて
到底受け入れられないけど
いつか突然目の前の世界が全てなくなって
消えて仕舞うまで
呼吸はし続ける
私 ....
雲のどよめき艶めき、うふふ
夕暮れ間近に囁くもの
出口は入口と延々と
展がる地平に眩む我
水の色開け灰色散らし
流れる流れる、宙の果てまで
先天的に強い虫と
先天的に弱い虫がいる
先天的に強いヒトと
先天的に弱いヒトもいる
先天的に強いオオカミと
先天的に弱いオオカミもいた
先天的強い羊と
先天的に弱い羊もいるか ....
陽の光満ち、
無数の銀の矢飛び交うなか
私の意識は泳ぎ出し
遠く貴女の声を聴く
久しく憧れ懐かしい
囁くような貴女の声は
やがて天空に力強く木霊して
飛び交う銀の矢を震わせ
降って ....
兵隊蟻の隊列
ポテトチップスの欠片
吹く風、生暖かく
蹴散らせ!踏み潰せ!
整然とした生の営み
獰猛な死への傾き
俺は天を仰ぐ
二本の巨人の足となり
生まれて今日まで
濃厚なキスさせて貰った記憶ない
どうせさせて頂けるなら濃厚がいいからさ
でも
キスって、させて貰うんじゃなくて
奪い取るもんなのかな
俺って軟弱な意思の
意 ....
瓶の壁を
静かに登る泡
幾つも
幾つも
ためらいながら
少しずつ
飲むか、
と言うと
欲しい
と答える
グラスへ注いで
渡す
ありがとうと
小さな声
あなた ....
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