血が流れた
宇宙のはずれにある
名もない心臓が
包丁で抉られて
抉り返されて
名もない心臓は
他の名もない心臓を愛していたし
他の多くの名もない心臓も
名もない心臓を愛して ....
私は、耳にイヤホンをして
二輪車に乗るのは危険だと思います
人間は耳に自然な方向で入る音と
平衡感覚を保つ三半規管で
二輪車の操作を成立させています
自ら交通事故に遭う確率を高めていますよ
 ....
脳の白質が壊れているらしい

溶けて甘いキャラメルの匂いがした
振るとカタカタと音がした

右脳と左脳が別々のことを考えて
感情のシナプスの可塑性が壊れ
涙を流してわんわん泣いている
 ....
足音が響く焼き場の通路
父の姿が見えないものか?と何度も見渡した。
手帳に忍ばせた写真の中では
父と幼い三姉妹が
ディズニーランドではしゃいでいる。
進学時
家を離れる前の晩
 ....
生きるか死ぬか
どちらがいい?

生きたいなら
生きればいい
死にたいなら
死ねばいい
たった二択
何故迷う?

人に死ねと言われたら
死ぬわけじゃない
生きろと言われたら
 ....
いつものように見上げる向かいの家に植えられた大木

いつかあんな風に地面に真っ直ぐ立って 空に向かって目一杯枝を広げることができたならって

まだ薄ら白い双葉を目一杯広げて思ってた

でも ....
 
 
雨が降ってきた
それに加えて午後からは
槍まで降ってきた

雨が降ろうが
槍が降ろうが
必ず行くよ
と言っていた友人は
終に来ることはなかった

窓を開けると
代わり ....
四方に充満した水の粒子が
わたしの髪の毛を
ちぢれさせてゆく
梅雨に不機嫌になるのは
そんな他愛のない理由だった

透明な傘を持ち
すれ違う人が
生真面目な歩幅で
人を殺す理由
人 ....
私たち親子の手を見比べると

娘の手は白くて 細くて
張りがあって美しい
私の手は皮膚が薄くなって
血管が浮いて見える

やはり手には年齢がでるね

真面目なだけが取り柄で
洒落っ ....
 
砂漠の真ん中で
洗濯機が回っている
インド綿のシャツを着た官吏が
時々中を覗きにやって来る
 
飛行機が上空を通過する
やり場のないコウモリ傘や
目新しい嘘を乗せて
 
真夏日 ....
家を背負っているのではない
としても
先祖代々の戒名が殻に閉じ込められ
捨てることなど出来無い重み

ああ
家を捨てたナメクジよ
お前は…
神宮前の小橋で懐かしのフォークソング唄う人

懐かしの? 

わたしは懐かしのを知らない

知らない懐かしを知ったふりして心縮めていたの



右肩横をかすめて通りすぎた黒服男はも ....
きみはだれ?
Who are you(フーアーユウ)
ぼくはしらない

きみはだれ?
Who are you(フーアーユウ)
かすかな希望
さわぐ緑

すこしの雨が降って
街が ....
あなたはいつも正直過ぎて
間違いのないことを
間違いのないまま言うので
わたしの言葉は丸呑みにされる

逃げ場を失うわたしは戦うこともせず
弟が可愛がっているハムスターみた ....
いつか見たあの子供に
名前を付けることはできない
記録に残せない会話を何度もして
僕はあの子を責めたりもした
正しいことを言う事が正しい
そう責められて
実際は責めてなどいなかったのだが
 ....
濃密な雨の拘束に
獣の目をした少女が一人
茄子の花のように濡れたまま


時の梯子が外された場所で
僕はポケットの中
ことばを撫ぜ回すだけ
風と光
肌触りと眼差し
雲と微笑
素っ気なさとほつれめ

先週より軽い靴音
長袖シャツの袖口が気になる
温かいコーヒーを飲もうと
財布を探った手が
ポケットの温もりを探し当てた
 ....
「リンゴの味覚はリンゴそのものには無く、 リンゴ自体は味をもたない、 リンゴを食する者の口のなかにも無い、 両者の接触が必要である 」。
これはアルゼンチン出身の著名な作家で、また詩 ....
現代詩よ

今日も

わからないのか









それならば
わからないまま集め
テーブルの上に並べる
手のひらより大きな現代詩
にぎり潰し
/吸う
詩人 ....
嵐の日 雷が空気をゆらして
瞼をとじても 光がときより私をゆさぶるの
わたしの心にあった 汚いものの 
沈殿させる濁った想いを
荒々しい雨風が 洗い流してくれる気がする

今日みた ....
ヒトの形をしているのが奇跡と思える位
あまりにも小さくて柔らかかったあなたを
退院後初めてお風呂に入れた時
私の緊張が伝わったのか
あなたは火がついたように泣き叫んだ
以来あなたが極端に水を ....
かつて誰のために祈れただろうか

飾りのついた服を着て 街を歩いていなかったか

自らさいなむひとを見捨てなかったか

酒におぼれて遠ざけたものの数々

いまどこを旅しているのか

 ....
メスザリガニが
身籠った
腹に何百もの卵を抱え
絶えずゆらゆらと揺らして
新鮮な酸素を送っている
まるで
大切なものをあやしているように

ハハザリガニが
出産した
小さな赤ちゃん ....
蝶は夏の光を泳ぐ

ふわり ふわり

目には楽しげで 

花を愛し

仲間と戯れて

ときに人にも寄り

いのちの季節を謳歌する



さて黒い揚羽がまるで
 ....
ひもじいといって、啼く蝉はいない

白亜紀の時代から
ひとはひもじい生きものだったという
そのひもじさに耐えて、恐竜から逃れて
生き延びることのできる生きものだったという

生きて
生 ....
御爺ちゃんは お魚を食べるとき それはそれは丁寧に 
その骨をならべて
なぜか 零戦の話をしてくれた 
骨のアーチを並べながら、「綺麗だ」「綺麗だ」と
繰り返えしながら 並べられる銀色
 ....
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