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いつものように入浴中にからだのあちこち揉んでいた。リンパ腺を刺激することで、ほとんどあせをかけない体質のぼくでも額からなにかが溢れてくるんだ。背中側のわきのしたを念いりに揉むとてきめんだよ ....
寂れた窓は動かないふりをし
ひたすら外に目を向けていた
季節の香は失われ
残酷なほどに生をむさぼり続けた
虫はいない
寂れた窓にとって
そういう喧噪ははなはだ懐かしく
色合いの違う風に吹 ....
塩辛い日々は解れ
柔らかく毛羽立って傷をかくした
あれから 百年も二百年も経った
ベランダの洗濯物はとっくに乾いて
わたしたちはたいへん愚かだったのだ
惜しみなく愛せば 事は収ま ....
すこしだけ何かを言いたいのなら。
さようなら
繰り広げられる白い雪の
すべてをさらけ出した清いあきらめが
くるおしく皮膚にしみこんでゆく
季節の記憶が旅立って
たどり着くこと ....
十一月一日
悪天だったがこの日を逸すると雪が降ってしまうかもしれないと思い、向かった。冬枯れの登山口は老いた自分の終末への入り口のように静まり返っていた。
冷たい雨が時折強く、その上風が木々を ....
黒に青が混じって 紺
夜に空が混じって 海
髪と瞳が混じって 睫
うちの眠った 場所はどこ
約束のトンネルに咲く花の色
ちいさな嘘を薄めたら もっと哀しい
泣いた朝を薄めたら もっと止ま ....
色づき色あせて
歌うように踊るように
散る 桜の葉
どの葉も負けじと
秋風に身をまかせ
散って 散りつもる
もうすぐ雪が降る
降って 降って
降りつもる
こどもらの歓声も
臨終 ....
わたしがここで話すのは、木の実をたべ、透明の毛をもち、草にねむるつめたいくまたちのことだ。街に降りた熊たちの、(淋しい淋しい)という餓えた声に今日も胸をいためているくまたちのことだ。
たしかに秋 ....
きみが笑うと
砂糖工場が爆発する
蝶蝶は交尾をはじめて
ポットからコーヒーが溢れだす
体の一番外がわのところで
気持が逆流する
きみが笑うと
わたしは爆発する
うすっぺらい昼間がめくれ ....
ポエムはこういうタイトルでいいよね
ほっこりするから
せっかくのホリデーなのに
模試とか世の中狂ってる
昨日見た灰色のかわいいポケモン
名前はなんて言う ....
夜空に雲たちが浮遊していたが
いくつかのそれは白い馬だった
わたしの馬はどれだろう
目を凝らしてみても
それらは似たりよったりで
見分けがつかない
夜に生まれたものたち
東の空に出たばっ ....
昨日、駅の雑踏の中で
君を見たよ。
声は、
かけなかった。
君の隣に
見たことのない女の子がいたから。
気付いたんだよ。
君と私は
....
さむいので
愛をほどいて
ぼくたちは
薄い布を織った
できるだけ大きくつくろうね
と
きみが笑ったら
見えている全部のものが
ちかちかひかった
できるだけ
できるだけた ....
山林整備作業三日目を終えた。たぶん別な作業も途中に入れられるだろうが、少なくともあと一か月は十分かかる作業であろう。十八ヘクタールという途方もない山林を刈り倒す作業は気が遠くなる。
四名のスタッ ....
あー、ねえ、いくつもの川を渡った。昼間にも、夜中にも、明けがたにも。きみの50歩が、僕の42歩。少しずつ齧るようにして日々。こんなのはもうさんざん使いまわされて流行おくれだってわかってても跳びあが ....
ほおづえをついたら
消えるくらい細い 月だね
知らないあいだに
こおろぎが まぎれ込んでたから
窓をあけて 夜に帰したよ
りーん あちらから
りーん こちらから
遠くても 呼びあ ....
雨降り 夕暮れを巻いて
物語を待っていた
バスが来て 人を降ろし
タクシーが来て 人を乗せて行った
日々は車窓みたくぼんやりで
右から左へ流れていった
むすめに 毎日 頬擦りを ....
雑木の密生する土手の外れに
一本の柳の木が俯いて
午後の暑熱を滲ませる貯水地の水面を
のぞき込む
鳥も来ない
辺りに虫の音の靄る静かさ
濃い藍藻に覆われた沼底でまだ
....
雨水で浸食された登山道には少しだけ草があり
刃を石に当てぬよう、気を遣いながら刈り進むと
ヌマガヤ草原には未だニッコウキスゲの群落が残っていた
一日咲けば花は萎んで枯れゆく花
遅くとも八月に ....
(じゅるりと甘い豊水梨
まだ食べさせられていない
疲れこんで放心
ひととおり過ぎてペタと座り込む)
一人で悠悠と横たわりながら耐える
くらしと
半生を捨ててあまい缶詰の汁に
溺れる ....
むすめが、ドアを開けて出ていく。あっけないくらい簡単に。あんなに気を揉んだのがばからしくなるくらい軽やかに。
でも思えばそうだった、わたしもいくつものドアを通過した。痛かったけど気にしなかった、 ....
昨夜から喋れなくなったので
満たされている、
ということにする
三日月を水槽に沈めたら
金魚みたいに膨らんで
ひらひら泳ぐかしら
....
二十歳くらいの頃
梨の皮をビーラーでむいていると
それを見た父が怒りだして言った
「そんな梨は食べたくない」
わたしは内心、バカみたい、と思ったのだが
火に油を注ぐのも面倒なので黙ってい ....
夜が空けた。
立体的に、次々と、パタパタと。
画角のはじは暗い
焚き火が燃えていて少しずつ暖かい
手をかざしながら思い出す
ラムネのビー玉の音
レモン色に水色がよく合ったお祭り広場だっ ....
新米を炊いた
土鍋で炊いた
二人暮らしなので
小さな二合炊き
二十分蒸らして
蓋を開ければ
しあわせの香り溢るる
神棚に供えて
日々の糧に感謝
「こんな美味しい米 ....
頭の中には蝋燭が一本点いているだけのような
どこにも居るような朝である
カーテンは閉められていて
遠い所から立ち寄った風が時折揺らす
時間がありすぎて、たちくらみするような感覚
どこか手術台 ....
夏を通り越すとき、むすめの背が伸びる。目線がもうほとんど同じになった。靴のサイズも。手のひらはまだわずかにわたしのほうが大きい。平板だった身体は迷いながら造形されていく粘土細工のように、昨日よりも ....
それでもまだ罰が必要だと思っている。動けない、歩けない過去の手足のために、どれだけ細い鞭を振えばいいだろう。開いた目に映らない現実・事実の流れていく速度に。
意味・明日や、ままならない思考の取り出し ....
窓ガラスに
雨垂れと
蝸牛
頬伝う
私の涙と
あなたの指
一日の縁を、刷毛でなぞるように
蜩はかなしく、ひたすらに鳴いて
いたずらに夏は強度を増し
暑さはまるで言葉を持たなかった
川魚は消え入るような息で
わずかばかりの小さな淵にうずくまってい ....
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