散ル散ル朽チル

September, high tide 気がつけば
波高き9月になって風の音が憂鬱を
足元の砂に埋めて 耳元でいつまでも
鳴り続けていた千のアリアをそっと
水に溶いて空 ....
      虚空に舞う 電子の粒 雪の隠喩
      回線の波に惑う 名付けられぬ影
      一瞬 手が触れた気もするけれど
      初めから なかったことにするよ

接続されてこ ....
12月

エヴァが未来はないと語った
僕は片手に花瓶を持ったまま
理不尽に暖かい12月の空にカーテンを開いた

人は心のはるかどこかに
過ぎ去りし恋の記憶を閉じ込めて
何も傷つかなかっ ....
まにまに

君の背中に空を見上げてた
決着はすでに着いている
失うよりずっと前に君は
僕の心を連れて旅に出た

知らない街の懐かしい場所も
懐かしい街の知らない場所も
素敵なものに出 ....
かなしみの淵をなぞるゆめ
鋭利なガラスで指を切るゆめ
開いた詩集を風が繰るゆめ
その一ページに血をこぼすゆめ

うすももいろの唇に
ぼくのインクで紅を引くゆめ
まだ汚されぬやわはだに
 ....
窓の外に火星が出ている 部屋の中にグロキシニア
手のひらにひやりとする不在と堆積する夜 闇夜
少女のいない部屋で道具にぐるり囲まれ
憧れに取り残されてシャツを濡らす惨めな男

目に見えるもの ....
ボタンを外していく器用な指の動き
パンをちぎり口へ運ぶ迷いなき指の動き
ミメーシスの強迫観念もなりをひそめて
肩の高さで揺れる髪に無言になる宇宙

丸い乳房 しなやかなアキレス腱 唇 声
 ....
緑の旋律 てのひらよりこぼれおちて
レティナに舞うすべての形 曲線 肌の白さ
優美で華奢な少女というニセモノじみた絶対
ひとつの奇跡のようにひらく花のような軽さ

笑い声泣き顔 細い指薄い瞼 ....
その人の詩
遠い外国語の
耳慣れぬ響きと
一通の手紙の文面

進化し続けることは
数多くのものを淘汰し
個体は自分自身の経験で
宇宙を語りなおすばかりだ

いつしか循環する日水辺に ....
神妙にいたすしかない
まどろっこしい夢の淵で
足を踏み外し一路はるばると
緑のさやを開いていく

ジッパーで世界は
夢とこちらに隔てられている
片側通行でないので
夜は眠る決まりなのだ ....
さよなら、20世紀のかなしみ
戸惑うばかりに時を紙やすりで削り
緑が朝の雨に研がれていく

薄暗い台所では 食べる営みの準備
食い繋いでいく真摯な必要性を包(くる)む

食べもしないのに ....
口に出して言うてみて

もしテレビついてたら消してな
家族がおったら ちょっとはなれて
一人ぼっちやったら ちょうどええわ

「生まれ変われるなら
もっと一生懸命生きんのに」

言う ....
Night and Day

君の抜け殻やさしく抱いて
霧のスキマに朝から一人
言い訳をポケットいっぱい
詰め込んでひたすら歩く

僕ら春の夜光虫となって
ふよふよと浮かんでる街に
 ....
いつしか雪が降りだして
夏なのにね おかしいね
僕は悲しい顔をして
君が帰ってくるのを待っている

僕のほうが先に死んでしまうよ
犬だものね 当然だね
玄関のタイルの冷たさに
柔らかく ....
バラード

やさしくされるのになれてないから
やわらかいものごしでこころにふれる
きみのこえにいやされどすなおになれず
いつからかまぶしげなえがおにこがれ

さんざんかなしいことばによい ....
花のような雨に打たれてひっそり
つま先を濡らしヴェランダを歩く
朝な朝なラヴェンダに水をやるのだが今朝は
グラデーションを確かめて新聞を取りにいく

白と水色と緑とオレンジと黄色で
僕の部 ....
戻れるのだろうか 
土を踏みしめて歩く
背の低い草に
皮膚を破られながら裸で
今にも雨が降りそうな
空を眺めている

戻れるのだろうか
世界は見知った世界に
少しも似ていない
埃っ ....
ただ一人君だけに 止まった時計が
感情のない 瞬きをおくる
遠い夜明け 君が字を覚えるより前の
低く響き渡る クラリネットの音楽

土の下から緑色の そして嫌な匂いのする
濃い霧のようなも ....
季節の出口にたたずむと
誰もいない停留所から
後悔と不安が手に手を取って
去っていくのが見えた

水の流れに耳澄まし
緑濃い田舎道を歩く
ぼくの足元には先ほどからずっと
記憶の残滓残照 ....
空という無辺際をまとって
バランスから身を乗り出し
石器時代の少し前までしなやかに跳ぶ


言葉による情報伝達のゆるやかさは
ある種の懐かしさをもって書棚から
ペール・グリーンの表紙にこ ....
夏の乾いた心に結晶する
ホワイト・サイの六花
明け方 西の空に力強く
まだ月が見えたころのはなし

気持ちを繋ぐロープは
駅前の人、人、人で混線中
ひとまず心を落ち着けようと
スコッチ ....
期末試験の採点が済み 
ポストにコトンと
成績報告書を投函する

苦労してつけた成績は
大学の教務課に届き
機械的に処理される

名前の並んだお寒い紙に
SだのAだのBだのCだの
 ....
そのようなわけで あたしは世界を語りなおすことにする
眼球のゼラチン上の表面を ツーと流れていく 有象無象
海原に繁茂する雑草は 水のビロードを刺す アイスピック
糜爛していく脳の恍惚を 過剰な ....
混淆する 人の 言葉 詩みたいなもの
不思議ね 書くことがとてもむずかしい
滴るような感情や 季節感や 絶望 夢
恋愛や 苦悩の湧出は もういらないの

自分以外の誰かが すでに 同じ言葉で ....
川沿いに 鉄橋をくぐり
舗装がない場所も ぐんぐんと
前へ 前へ 赤錆びた
よき死者たちの 記憶の中へ

道すがら ネコが驚いて
逃げ出したり 道を譲ったり
時々は 水の流れにのって
 ....
風が止んで ガスの元栓を確認し
さっと玄関を出る さっとが肝腎
留まっても良いが それなら
留まらなくても 同様に良い

季節を数え 殻を厚くする 呼吸を整えて
強さは弱さで塗り固めた セ ....
起きてすぐに布団の中で
体の上に重み 体の下に重み
一瞬を出来るだけ長く引き伸ばして
耳を澄ます朝 君を探す朝

引力がそのまま町を
地面に張りつけているなら
それはgravityなどと ....
こねこねつるりと
心臓を抜くような
夕立 ずぶぬれになって
長い長い 坂道を下る

サンダルで失敗したなと
思わないように夏でも
ちゃんと 紐の靴を履いて
のぼった時はお天気 だったの ....
冴え冴えと月 秒針よりも鋭く
心まっすぐに 君へと向かう

新しいコート 最初にね
見せたかったんだけど
袖を詰めに君は
風の中に僕を置いていくよ
風が強い 誰もいない
いや 誰かがい ....
marie

息がつまりそう
もう僕ら二人
地下鉄に乗って
堕ちるところまで
堕ちるしかないかな
あれから夜は一人きりで
ガードレールの白く浮き上がった道を
ずっと歌を口ずさんでね
 ....
瀬崎 虎彦(381)
タイトル カテゴリ Point 日付
散ル散ル朽チル自由詩8*09/8/29 21:55
a brief encounter...自由詩6*09/8/28 20:17
12月自由詩4*09/8/28 11:49
まにまに自由詩8*09/8/27 13:14
ゆめ自由詩8*09/8/23 17:07
Explicit Circumstance自由詩5*09/8/23 4:42
Implicit Circumstance自由詩609/8/22 2:30
ニセモノじみた絶対自由詩709/8/21 15:14
ゲーテ生誕260周年自由詩609/8/19 4:09
ジッパーで世界は隔てられている自由詩609/8/17 9:56
20世紀のかなしみ自由詩409/8/16 21:34
口に出して言うてみて自由詩6*09/8/16 2:05
Night and Day自由詩4*09/8/15 21:49
人生の大半は君を待つことに費やされた自由詩12+*09/8/14 8:24
バラード自由詩3*09/8/14 0:04
ぐるり自由詩6*09/8/13 5:40
今はただ水が飲みたい自由詩5*09/8/11 15:54
詩を書く前にぼくが感じる気持ち自由詩409/8/10 22:29
三叉路自由詩509/8/9 11:22
その詩集をひらくと自由詩209/8/8 19:06
パーペンディキュラ自由詩3*09/8/7 14:49
SだのAだのBだのCだのFだの[group]自由詩4*09/8/7 0:56
V自由詩309/8/6 16:27
最後の一行は 空けておくわ自由詩2*09/8/6 12:16
燃やせない記憶の廃墟の中で自由詩1*09/8/5 22:59
ビリヤードの比喩で語られる世界は自由詩3*09/8/5 0:37
ニュートン・ニュートン自由詩3*09/8/4 18:27
ずぶぬれ自由詩109/8/3 22:53
サテライト自由詩409/8/3 11:59
marie自由詩309/8/3 2:15

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