夢に月が現れて

どうしてあの山荘に

月見に来なかったか

と咎められた

バイトだよ 

欲しいゲームソフトがあったのでね

そうやっておまえは

取り残されていくんだ ....
 これは特定の人を指して書いたものではありません。
私たちの周りにはある日、それこそ不意に姿を消してし
まう人がけっこう多いのではないでしょうか。この現代
詩フォーラムでも、気振りにも見せずにい ....
この土地が
湖や海のやうに
青空や星や月を
映さないからといつて
卑しめてはならない


何といつても
この土地には
{ルビ人間=**}が住んでゐる


夜の闇しか映さない
 ....
 
今朝 
露にかがやいて
咲いた朝顔が

のこらず 
消えてしまつた

―小鳥が来て 
食べてしまつたわ―

と 
その家の母親は 
呆れ返つたが
 
真実は 
その ....
◇コスモス


炭鉱の閉山跡を

コスモスが埋め尽くして


炭鉱夫の青春が還つてきた

背景はあまねく

コスモスと青空



◇金魚


金魚は

いくら ....
緑濃い{ルビ山陰=やまかげ}から
ひらりと紋白蝶がさまよひ出た
断崖の下は海の群青
湧き上がるすでに夏とはいへぬ
冷ややかな風を器用に避けつつ
蝶は陸に沿つて舞ひはじめる
波打ち際には
 ....
 

しとどに雨が降る

大粒の雨が

ブリキ屋根に穴をうがつ勢ひで

降り募る

降つて 降つて

怨みを晴らさうと

降りまくる

中に侘び暮す人のうらみを

 ....
来る日も来る日も
欲しいだけの陽は降り注ぎ
水の恵みも充分受けてはゐたが
代はり映えのしない日々に
嫌気がさして
葉叢のなかの一枚が
ある日 ひらりと裏返つた

―決して気紛れでは ....
{引用=山里に出会ふ少女はひたすらに
   坂下り行き{ルビ畠=はた}のトマト赤し}



D展に出す絵のモチーフを探して
山地を旅していた
山里の道を歩いていくと
籠一杯のトマト ....
毬栗が黄緑色に膨らんで

山の稜線を彩つてゐる

棘の一本一本は張りつめても

刺々しさはなく

光と風と大気に丸く包み込まれて

和んでさへゐる

さうしてなほも ....
田園の中をのどかに走ってきた

ツートンカラーの電車が

いきなり 都市に突入した

目新しいことではないが

一つの帰結だ


電車はそこに貼り付いて

動かない
 ....
 

真夜中にサイレンが鳴つて

窓から顔を出すと

猫が凍つた路上を

駆けて行つたよ


弾丸のやうに丸まつて

火事場へと

一直線に


猫は寝てゐる人を
 ....
人は
たつた一つの
幻を見るために
生れてきたやうなものだ


幻はきまつて
この地平とは切り離された
はるかかなたにある


とても手で捉へることなど
できないほど隔てら ....
雨が降つてゐる
黄色地にピンクの花を咲かせた
美しい傘の乙女が行く


雨は 
乙女の傘に弾けるときだけ
ぱつと明るく輝く


車道を車がきて 
泥水を撥ね上げる
乙女は傘を盾 ....
野道をアヒルが腰を振り振り歩いていた
前方に蛇が長々と寝そべっている
アヒルは気味悪がって
引き返そうか
進もうかとひとしきり思案して
結局
蛇を遠回りに避けていく
重たい腰振り ....
◇寒い日


世界を圧縮したものが
新聞だ

さう信じてきた浮浪者が
新聞紙を丸めて火をつけた

世界よ
大きな顔をして
人を舐めるな

おまへは俺の手を
暖めることさへ ....
真夜中 岸辺に泳ぎ寄る魚は
不吉なほど黒い


昼の海からは
想像もできないほど大きく
ものものしい動きをする


これは
寝静まつた陸に
少女をさらひにきた悪魔の影だ

 ....
朝顔の 露に張りつめた花びらは
美しい
しかし 弄れば弄るほど萎れていく
ダイヤは研けば研くほど
耀きをます


あなたはどちらが真に
美しいと思ふだらう
いや 野暮な問ひは止め ....
蝶とむくつけき昆虫が

ごつちやになつて

吹き飛ばされて行く。

空中を一方向に

平行移動するやうに。



蝶はいつ飛躍をして

その流れから抜け出すだら ....
それは自然のなせる業にはちがひないが

梢からまつすぐ

命中するやうに頭に降つてきた木の実

重たく硬い木の実


何か不当な打擲を受けたやうで

穏やかではなかつ ....
浴室に腰掛けて身体を洗っていると
虫の声が
地面を敷き詰めるように湧きあがって
ワッショイワッショイ
ジーンリージーンリー
私を神輿にかついでいるつもりらしいのだ
それならこちらも ....
 

街の猛犬が
路地猫を追ひかける
猫の尻尾に
口が届くばかりに接近した
その時
目の前を
轟然と特急電車がやつてきた
あはや犬は立止り
猫はそのまま行つた

犬の前を
唸 ....
 

落ち葉の中に
紛れ込んだスズメは
保護色の枯葉を
ホームグラウンドとして
はしやぎ回つてゐる


いくら喚いても
掻き鳴らされる
落ち葉の
大仰な音には
自分の声すら聞 ....
コンクリートの塀に

一匹の蝶が来て留る

この目の覚める艶やかさは

一体どこから来たのだ

これがこの世の反映だなんて

私は信じない

むしろこれは世にないものだ
 ....
街を歩いていると
仔猫が身をすり寄せてきて
〈子供にして下さい〉
と言った。

海岸を歩いていると
オットセイの子供が
海から這い出してきて
〈子供にして下さい〉
と言った。
 ....
笹薮の中の

一輪の百合よ 

かぐはしくも

夢幻のやうにともつてゐる

白い灯よ



潤ひのない荒野に 

花弁をひらく

おまへのその

ひそやかな立ち姿は ....
◇雁

ビルの間を

雁が渡る

窓からいくら叫んでも

届かない

天上の

賑はひをもつて



◇火口湖



火口湖に

白鳥がひとつ

燃えて ....
尾羽を風に吹かれて
鶴はどこまで歩いて行くのだらう
追ひ風に逆毛になつてゐるだけ
見栄えのいいものではない


貴婦人がふくらむスカートの裾を
気にする風情で
遠ざかつてい ....
カリヨンの音色に合はせて
鳩が飛出してくれば
その下にゐるものは
みたまを受けた


みたまを受ければ もうしめたもの
とこしへの命を嚥下したやうなものだから
金銭では買へな ....
 

大きな肉の塊をくすねてきて
食べ飽き まだ半分以上も残つてゐるとき
犬なら 空地へ引きずつて行つて
埋めておくが


猫は そこに放り出しておくだらう
無関心かといふと さうで ....
杉菜 晃(120)
タイトル カテゴリ Point 日付
月が出た 夢に出た自由詩10+*06/11/3 16:28
消えてしまったひと自由詩6*06/11/2 21:05
いのちの灯自由詩9*06/11/2 10:09
朝顔のゆくへ自由詩10*06/10/31 12:19
コスモス 金魚  ・・・・・自由詩13*06/10/29 12:28
白い旗 夏の終はりの海岸線自由詩14*06/10/27 16:57
自由詩6*06/10/26 17:16
気紛れではなしに自由詩15*06/10/25 13:52
自由詩13*06/10/24 7:48
山栗自由詩14*06/10/23 7:53
都市未詩・独白5*06/10/21 21:23
駆けていく猫自由詩6*06/10/21 21:18
恩寵の梯子未詩・独白4*06/10/20 17:16
乙女の傘自由詩6*06/10/20 13:02
アヒル謳歌未詩・独白9*06/10/19 21:52
寒い日  みんな浮浪者自由詩7*06/10/19 17:33
正義のパトロール未詩・独白9*06/10/16 18:02
それは あなたの中に自由詩12*06/10/16 17:39
飛躍未詩・独白4*06/10/14 12:55
頭に弾いた木の実について自由詩12*06/10/14 9:59
裸の大将自由詩10*06/10/12 19:25
路地猫自由詩6*06/10/12 12:55
スズメ狂想曲自由詩9*06/10/9 16:54
手紙自由詩8*06/10/9 8:31
海に返す未詩・独白11*06/10/8 0:32
白百合自由詩13*06/10/7 9:23
雁  火口湖  山肌  他 ・・・自由詩12*06/10/5 14:09
奇跡のやうに自由詩8*06/10/5 12:49
カリヨンの音色に合はせて未詩・独白3*06/10/4 7:14
気まぐれ猫自由詩9*06/9/30 18:20

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