汚い暖炉の横にめがねを置いて彼は手でこめかみを押さえた。何度も激しい頭痛が彼を襲っていた。
「フォードル。目を開けろ」
　膝をつき、半目で床の上を見ていたドストエフスキーの視界に獣のような足が現　.... 　脳がねばっとして、何も手につかない。床には数日前に嘔吐したウィスキーとその日に食っていた食べ物が、吐き散らかされたままで、悪臭を放ち、部屋から抜け出るとき踏むと足に粘りついた。ただ拭きとればいいだけ　.... 　よろこびにはちきれんばかりに、チアリーダーが嬉しそうにポンポンをふるようにイチョウ並木全体がゆれ動いている。その葉陰にハエが一匹ひそんでいても誰が気づくだろう。ハエには風によってイチョウの葉が揺らさ　.... 　　　15　　ひしゃげた心のクラゲたち

　二つの影が夜空を走っていた。谷の亀裂のように。谷。それはどこの谷でもいい。世界の名所などではなくともいい。ニューヨークの崖でもいい。そこでは少年がルアー　.... 　まほろばのことなどもう忘れました。まやかしの術ももう使いたくありません。あやかしの霧が晴れたとき、人々の心は深く傷ついているのですから。私はもう微笑みません。ほつれた髪の毛を鼻先にもっていくことはあ　.... 　燃えさかり叫び狂い苦しむたましいの雄たけびはこの世への憎さ、うらみつらみだけからもたらされていたのか。負の感情もなくなり、もはや若くない。嘆く資格も、そんな自分に酔うルックスも、ゴールド免許もなにも　.... 　　　11　　そして、私は、……いや僕は、湖から生還した

　近くに大きな公園があって、僕は、夜中、いつも一人で出歩いていた。街路樹の木の葉が街灯の明かりに照らされている。緑色に。吹き付けてくる風　.... 　　　プロローグ

　汚い暖炉の横にめがねを置いて彼は手でこめかみを押さえた。激しい頭痛が何度も彼を襲っていた。
「フォードル。目を開けろ」
　膝をつき、半目で床の上を見ていたドストエフスキー　....
(罧原堤)（8）
タイトル カテゴリ Point 日付
貧乏人は魂を売れ！自由詩110/9/5 17:06
チワワみたいに小さくて自由詩110/9/5 16:07
蠅車掌自由詩010/9/5 16:04
ジュリエットには甘いもの　後編散文(批評 ...010/8/29 10:07
雨乞い蛙自由詩010/8/29 8:56
ハッとして、ぎゅっとして、グッと目覚める恋だから ※１自由詩010/8/29 8:54
ジュリエットには甘いもの　中篇散文(批評 ...010/8/15 14:44
ジュリエットには甘いもの　前編散文(批評 ...010/8/15 14:31
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