海の底にある箱は
水色を反射して
白く眠る
光りが届く深夜には
そのシルエットだけが
ぼんやり浮かぶ
海の底にある箱の
空っぽという
存在感
光りを拒む深夜には
海の深 ....
箱を思い出してみる
あるはずのない出口から
いとも簡単に私は
抜け出し
あるはずのない入り口を
きっともう私は
見つけられない
箱を思い出してみる
それは
美しいもの ....
おぼろ月夜にみる夢を
語るくちびるくれた人
色なき世界に沈みゆく
くちびるが探す静かな面影
泣かない水色を見つけた日
出来る限り手元に集めた
最後に残るのは
この水色だろうと予感した
泣かない水色はひっそりと
過ぎた時間に潜んでいる
ことばを持たず
それゆえ消えずにそこにあ ....
何人もの人が私のそばを
通り過ぎて行った
のではない
振り返る
そこには私がいない
通り過ぎたのは
私のほう
もう戻れない
ことばを失う
むしろ鮮やかに
悲 ....
たまりかねた水色が
歩き出そうと私に言います
歩けないわけではないのです
歩きたくないわけでもないのです
だまりはじめた水色が
その美しさを曇らせます
忘れたいわけではないので ....
笑う度、消えてくたぐいの深緑
燃料は確実に燃えてゆく
あの森の湖は深く
私が消える
バスタブに沈んだ水色に
一瞬息をのむ
深い森に迷い込み
やっと静かな場所を見つける
けれど永遠に私に孤独は訪れない
深い森に入り込むほど
そこはあなたに出会った場所に
似ている
「だめになってゆく」
それについて言うならば
私はたぶんマーメイド
泳ごうと思えば泳げるのだと
薄ら笑いを浮かべながら
岩場に座っていたりする
「だめになってゆく」
....
破壊する明日へ続く自動ドア
ため息一つの重さで
音もなく扉は開く
誰だってそんなところに
立ちたくはないけれど
ドアは静かに開かれる
私は今
どちら側にいるのだろう
....
しっとりと重いスポンジの中で
ただただ黙り込む
水色のことば
遠い時間の証言者
優しさの代わりに膨らんだ
水色の記憶
どんなことにも限界はあるのでしょう
今夜スポンジをしぼろ ....
ことばが沈んでゆく音を聞いた
それは案外きれいな音で
うっかりすると泣きたくなった
涙が流れてしまったら
ことばは浮いてしまうから
最後の最後まで大事にしたくて
深い深い音を聞 ....
出会う直前のゆるやかな空気の中で
小さな振動に身体をゆだねる
日常の大きな振動は皮膚をかすめ
記憶の穴をすり抜ける
身体にしみ込む小さな振動
紛れもなく
理由もなく
一番深いとこ ....
白い箱の存在感
目には見えない大切なものを
私はすぐになくしてしまうので
小さな白い箱をいくつか並べる
空っぽの箱の存在感
箱にしまうことは
なくすことと本 ....
私は今風船をふくらましています
止まらないため息のように
少しずつ少しずつ
全てをはきだしてしまうと
手にしている風船を
捨てたい衝動にかられます
私はおととい風船を手放しまし ....
長い長い眠りから目覚め
ゆっくりゆくっり目を開ける
繰り返し繰り返し見ていた
悲しい悲しい夢が瞼をかすめる
なぜこんなにここは白いのかと
あたりを見回す
白い壁
白いカーテン ....
私の紫陽花が色を求めはじめる
もう一度白い雨の日を思い描く
止まない雨はないのですね
白く白く煙のようにぬれていた
私の白い紫陽花を
一目でいいから見せたかった
....
あの雨を色に変えるには
少し時間がかかります
迷い花
どれもこれも
本当で
一晩ごとに
迷ってしまう
あの雨を花に変えるには
あと少し時間が必要です
ためらい花
....
その日から
大きな穴や小さな穴が
空からぽたぽた降ってくる
気をつけていた
時々空を眺めては
ふと気を抜いた瞬間
まんまと私ははまってしまった
受話器を置いた直後のことだった
....
大切にしていた箱が
最近とうとう見えなくなった
白い輪郭を今でも覚えている
美しいと思えるものを
美しいのだと思いこんでいたものだけを
少しずつしまっていった
一番最初に消えたのは ....
網膜が揺れる
それが私の波動
井戸のように深い深い水底から
すっと浮かび上がり
光りの前で躊躇する
それが私の波動
その一瞬を見逃さなかったあなたは
あまり私の目を見なかった
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