その日探していたのは
リアリティー
ムードのある音楽も
窓の外で降る雨も
物語だけを流し続ける
その日必要だったのは
リアリティー
消えることのない約束も
始まることのない ....
オレンジ色の猫
今街角にしっぽが消えた
夕暮れに
月が雲を見下ろして
雲が街を見下ろして
街は猫を探さない
オレンジ色の猫
誰も探さないその猫に
....
白い箱を最後に磨きます
かつてその輝きに出会い
見つめ抱いた大切な箱
白いと決めたのは私です
箱と決めたのも私です
白い箱に最後に触れます
かつてその感触に戸惑 ....
甘くない綿菓子が
細い線となって
時を紡ぎます
堪えきれずに
少しかじると
ただそれは消えるのです
甘くない綿菓子が
丸く光って
ことばをふくみます
離れられずに
そっ ....
ゆっくり進むその足跡に
緑の光りが差し込んで
私の居場所を葉が隠す
あなたが歩く
あなたが顔を上げる
私は森に同化する
あなたが美しいと思う全てのものが
....
霧雨の煙の中で
水色の深呼吸をする
その時がくるのがひたひたと
近づいている
ため息に少し似た
小さな呼吸が雨に溶ける
その一瞬が重なって
水色が現れる
霧雨の煙の中で ....
たくさんの予感を箱に詰めて
送ります
その予感にあなたが手を触れる
その瞬間に消えずに残る
そんな予感を確かめたいのです
私を含め、消えた人格たちが
小さな箱の中で
仮面パーティーを開く
いなくなった私に問いかける
今さら仮面など
必要なのだろうかと
いなくなった私が答える
どちらにしても
私はも ....
私の水色を空に預けると
静かな雨が降ってきました
私の水色は雨に任せて
夕暮れにまどろむと
出会った日の水色が
ゆっくり漂い始めました
伝えなければならないと
思えば思うほど ....
カップのそばで角砂糖が溶け出した
テーブルの向こうの景色が甘くゆがんで
青く透明な空気がゆれる
濃いめのコーヒーがくちびるにふれると
ひろがる香りとまざりあうことば
でき ....
一つ信じたら
一つ青い花が咲きます
しばらく想いをめぐらすと
こんぺいとうのようなその花は
かりんかりんと崩れます
一つ夢みると
一つ青い花が咲きます
何かを始めようとすると ....
青い砂時計
あの日ひとりで回転させた
さらさら流れ落ちる細かな粒子が
私に教える
青い砂時計
たぶんあなたも持っている
あの日偶然回転させた
さらさら流れる細 ....
青く光る階段の一番下で
柔らかな猫の背中をなでる
光の前でないている
小さな不安にそっと触れる
青く光る階段を見上げて
柔らかな猫の身体を抱きしめる
光は動かずそこにある
誰 ....
青い空気をかきまぜる
そんな時がきたのです
時は夕暮れ
ヴォリュームを下げるように
スイッチを回すと
青は静かに濃くなりました
青い空気が動きだす
そんな時がきた ....
青く光るので
確かめない訳にはいかないのです
無数のことばのもとが
空気に漂って
青いちりのように舞うのです
ゆっくりと舞い降りる
無数のことばのもとが
時々青く光るのです
....
透き通る水色のふただった
おそらく夏に気づいたせいでしょう
見上げると光るその水色が
海の底でなくなったとき
少しなつかしい
バースデーケーキの香りがした
透き通る水色 ....
暗闇の中で月が輝いていた
その月は決して欠けることなく
ぼんやり浮かんでいた
失ってはいけない
だから近づかなかった
暗闇の中で月が輝いていた
その月は決して沈むこ ....
月の沈んでゆく夜
あいまいな風を許した明かりが
動きを止める
月の背後が透け始める頃
水を見つけた記憶が夜を知る
月の沈んでゆく夜
あいまいな返事を許した暗闇が
幕を ....
私の忘れてしまったことばが明かりを照らす
見えてくる
見えてくる
見えてしまう
クリアになることを恐れるように
私はまたことばを探す
きっと誰も
本当に立 ....
五月のある晴れた日
思いつきでスウィッチに触れた
何もかもが滑り出し
ある部屋に私は辿り着いた
6月のやっと訪れた静かな夜
私は揺れる影に気が付いた
いつの間に ....
黄色の傘がルーレットのように回り
答えを落としていった
ぽつんぽつんと落ちてゆく答えより
回る傘の鮮やかさにみとれていた
色のない答えが静かな雨に溶けてゆく
黄色の傘が警告ランプ ....
一番深い香り
夢をみる
あなたの影に漂う
一番深い香り
私が注げるものは何だろう
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は冷えてゆく
冷たいことばが風になり
人は一瞬目をそらす
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は枯れてゆく
乾いたことばが砂になり
人は一 ....
小さなナイフを握りしめました
最初で最後のするどい傷跡が
宙を舞いました
柔らかな時間に何の罪もなく
優しい沈黙に何の悔いもなく
それでも気づくと
私はナイフを握りしめていまし ....
消えてゆく瞬間に目を開けると
そこは青い草原で
私は少しずつ目を覚ます
私を溶かしたものの正体を
忘れることで
私は再び瞬きをする
また少し色が変わった
青い草原で
溶けて ....
始まりと終わりは少し似ている
そんなことばをつぶやいてから
4年の月日が流れていた
あの春
予期せぬ始まりに出会って
私は終わりというものを知った
終わりと始まりは少し ....
水色のグラスの中で水色の花が咲いたような午後
出会って溶け合うものの柔らかな感覚に包まれる
自然に生まれるものの優しいエネルギー
本当に大事なことはとても自然 ....
白鳥を見つけた人は飛んでいった
白鳥の話をするとき
すでに空を飛んでいた
美しい白鳥はイルカのような瞳で話しかけ
その傷跡に柔らかな手を差し伸べた
白鳥を見つけた人は自由になった ....
ささやく声が空気を揺らす
消えてゆこうとする白い空気の鼓動
伝えることを止めた白い空気の残像
ささやく声が空気を引き寄せる
薄まってゆこうとする白い空気の躊躇
流れる ....
水色の箱に雪が降る
白い箱から遠ざかり
気付くとそこにあった水色の箱
積もった雪の幻影が
白い箱を思い出させる
水色の箱に雪が降る
自ら発する温もりが
雪を溶かしてゆく水 ....
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