三日目のマスクから
漏れ出た鋭いため息が
乗客の肌を斬りつけている

新型コロナウイルスが
蔓延する都市で
朝の電車に揺られながら

何重にも押し黙る
心の声まで封鎖するように
… ....
高潮がとどかない
岸の家
朝霧につつまれて
素描のようにかすれている

ざわめきがとどかない
途切れた鉄路、廃石の丘
みすてられた彼岸に
まぼろしめいて建って

此岸の水面のかがや ....
台所の錆びた缶から、
這い出ようとする無脊椎動物を、
僕はリリアと名付けた

16歳の彼女は現在、スウェーデンで児童買春の奴隷となっている
被虐と抵抗のエントロピー増大が、彼女の魂を具現化し ....
空間が音を立てて、凝固する
見るものすべて鉄
触るものすべて壁

   きみがどういう人か、
   いくら知らされても
   上手に覚えられないようだ
   ぼくは失格だね

鉄 ....
さようなら、もう二度と会わない
それがふたりの歴史だけど

終わった物語のつづきを
独りつむぎはじめる夜がある

行き場のない言葉、
知られることのない感情
ランプの下にならべて、もて ....
空と土地がある
荒れた土くれと錆びた鉄屑、
瓦礫が風に耐えている

影の大部分を失って
陽光があふれかえる
容赦ない時間が過ぎていく

この土地は眠り続けている
満天の ....
ほどけたこころを
むすんでつなぐ
針と糸で縫い付けるようにさ
お近づきになって
身だしなみ、整えてくださいますか

暴風雨が窓をたたいている
遠くで何かが燃えているみたいだ  ....
なつかしい話は
きれいすぎて
この部屋の壁が溶けていきます

あしたのことより
思い出にさまよううちに
このまどろみが床に流れていきます

目をつむると
ランプくらいの ....
月影と電信柱
かえりみちに天球の模様替え
エンドロール流れ去っていく感じに
星の浮遊をあやつって

街路灯、壁と窓、住宅街つややか
重なる吐息みたいに
暮らしと暮らしが混ざり ....
1DKで二・二で夏鍋
くつろぎ感優先の部屋キャンプ
ポスト実家的居場所キープ感も満喫
甘美な真似事、擬似家族

風鈴も煮えそうな業火の責め苦に
パパ役(部屋主)エコ強調で一家激励 ....
まちのすき間や
料理のかくし味や
音楽のうらがわに
そして、こころのどこかのしょっぱい海に
古ぼけた教室のような空間があって

気まぐれにドアがひらけば
そこには、
だいすきな人たちと ....
頭蓋骨の中で膨らむ
不穏な気持ちの風船ガム
空はただれたマーブル模様
禍々しい陽光の
毒々しい着色料を浴びながら
落下会が集いはじめる

その集団は千の色彩と
甘い香りに包まれている
 ....
性急な言葉で乗り込んだ真実のフルーツ急行
ピストルで気圧に穴を穿ちながら南国へと向かう
女の子は涙の粒を集める魔法で
男の子を離れられなくしたんだ
速度を増すロマンス、
眩暈のする螺 ....
降り出しそうだね、
憂鬱な天気
街路に突いた雨傘を回す
時計の針を進めるみたいに

動かない地下鉄
交通渋滞
退屈を横目にコマ送りのザジが駆けていく
帰り道に嘘の矢印を置いて

迷 ....
高架線に区切られた太陽が
古道具屋のトタン屋根に呑み込まれていく
重くぬるい風がカーテンを膨らませ
窓辺の花器が虹彩を放つ時、

頭の奥で火薬がちりちりし始めて
数秒後に我が身が消滅するの ....
書き物机に
やわらかな風が届いて
湿っぽい単行本の
頁が少し浮いただけ

ペンは置かれたまま
日記帳は白いまま

包み紙のなかで
キャラメルが
じっと待っている
 ....
激しさの夜を覚えているかい?
立ち止まる君はうすい雨に濡れていた
月が照らしてた
灰色の月がそっと

流れゆく雲は魚の群れのよう
風の音は映写機のようにまわり続けて
吐く息は花のように咲 ....
沼に沈み
泥を愛した
苦しく重いこころを
抱きしめたまま

窒息する森
痺れた月光
吐き出せない砂利のように
時の流れが喉に詰まる
翳りの中の黒い影
どこにもいけずにたゆたって
 ....
繁り翳りめくるめく道のり
憂い喜び混ざりこころ濁り
淀む水鏡の我、乱れ暴れ割れても
親しく愛しい嫌悪、溺死に至らず
其れ、黒い魚の如く横たわり
嘔吐限りなく、行路腐り

逃れ隠れ爛れ落ち ....
暇なので
バスを見ていた
空は青い絵の具の垂れるよう
たんぽぽ柄の車体が走る

砂利道に揺れて
犬と追いかけっこして
まるい太陽の下、
熱っぽくなったら停車する
そこは、つむじ風の過 ....
汗と若葉、土地の震え、生々しい野原
肢体を投げ出し翠緑に溶け合う
ねばりつく湿地、からまる草叢
瑞々しい野性の緊縛、ほのかな痛みの中で

焼ける空を肺に入れて
きらめく吐息、静かな放熱
 ....
あったかくて親密な壁との対話に
身体の内部が地震になるほど
たましいがふるえすぎて沈んでいたんだ
そろそろ何か、雌豹なムードを求めたくて
つっかけ履きで捨鉢気分で
買い出しっぽく突然外へ抜け ....
jin(22)
タイトル カテゴリ Point 日付
汚れた怒り自由詩120/4/28 16:28
岸の家自由詩317/6/16 15:48
Creep散文(批評 ...015/5/12 23:56
鉄の自由詩015/5/12 23:38
つむぐ自由詩113/6/9 22:21
土地自由詩313/6/8 3:22
ろっくんろーる自由詩211/4/24 21:48
2011、春自由詩411/4/8 22:54
かえり自由詩310/8/24 23:12
夏鍋自由詩210/8/22 23:36
再会自由詩209/6/18 23:06
落下会自由詩009/4/21 23:38
さくらプリン自由詩109/3/12 22:17
雨傘自由詩309/3/9 21:54
千鳥格子自由詩109/3/8 19:03
曇らせる遊び自由詩209/3/7 23:10
ある夜から自由詩308/5/11 20:55
沈み自由詩308/5/11 0:10
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