天城峠の牧場で
猪たちのけなげな芸をみた
観光バスに乗りあわせた貴婦人たち
厚ぼったい化粧をしたのやら
寒くもないのに毛皮をはおったのやら
やたらに貴金属を装着したのやらが
少女のような歓 ....
産婦人科から出てきたみえこが
あっけらかんと言った
「二ヶ月のなかばだって」 ....
チューリップ・ツリーの上で
しきりに鳴いている蝉にしても
伝えようとしているのだ ....
チューリップ・ツリーの下で
まどろみ 森のことや ....
それは嘘である
しがらみのジャングル・ジムを
通過できる肉体はない
青空へ!
跳躍のつかのま
ぼくは地球へ落下する
格言つきの日めくりの上に
欲望と追憶のカリキュラムに
それからしぶし ....
烙印を押してくれ
この世でもっとも繊細な風力計にも
触知されない樹木の呼気を ....
また降ってきた
ぼくは樹木に身をよせ 心を
誰からもみえない角度にかたむけて
ときおり
満ちてくる静けさを
溢れるまえにこぼす
こんな美しい雨のなかでは
ひとも盆栽のように育つだろう
五月に入ると
死んだ詩人のことを思いだす
いつもへんに悪ぶっていたな
「ユリシーズはどこにもいないね」
そう言って
はなやかに降りだした雨の街路に
出て行ったきり
忘れたのか 置いていっ ....
みえこ
きみはぼくの肉体の
ひいていく最後の熱量をはかる者 ....
その意見については
おおむね賛成なのだ
ぼくらは一緒に腐れていく関係だから ....
ぼくは最近おなかが出てきた
だってみえこが言うんだもんなあ ....
風にのって
ぼくのつぶやきが ....
生臭い肉体を焼きすて
骨と ....
いま言おうとした言葉を
忘れてしまった
なにかが胸骨のす ....
ひとは背中の遠い国の
風のおだまき ほどいてくらす
だから誰も変わる自分を
知ることがないのは
腐りやすい肉体をもったぼくらの幸福
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