勇者とは

命が唯一つであることを望み

この世に生れ出た

勇気ある者
光に


見捨てられても


戦士は荒れ果てた野にひとり立っていた
大振りの剣を脆弱な杖に窶しながら
脆弱でも杖がなければ歩くことは叶わず
勲章にもならぬ全身の傷に耐えることはままならず


敗戦の末に歩いた夜の闇は
 ....
あなたの世界を傷つけてしまいました
あなたのほんの少しの優しさにしがみつこうと
手を伸ばし
あなたの世界を傷つけてしまいました
あなたの隣にある優先座席に
ひょっとしたらわたしを置けるのでは ....
時計は 寂しい
寂しくなければ 時計ではない

たおやかな彼女の腕の
絡まっていく男の背中
彼女は男を包み
男を揺ぎないものとしていく
ぎりり
ぎりり
と拉げていく男は
彼女に包ま ....
仔犬は真っ白に汚れた嘔吐物を舐めている
真っ黒に澄み渡る雪のシルエットの中で
真っ白に汚れた嘔吐物を舐めている
温もりを忘れてしまった舌先は
うずもれて擦れてしまった空言を掘り当てる
仔犬の ....
遺伝子の螺子が切れたと誑かす



学部長もう迷宮が足りません



ぼんやりとして逆流を踏み外す



止むを得ず総人口に含まれる



この石はあと何時間もちますか ....
檻の中に生まれた
という罪を
優しくこね回す
拵えられた天体望遠鏡は
冷たく震えている

あの日 靴を置き忘れた星を
探している

星は望遠鏡を覗かない
目を瞑ったまま光るだけ
 ....
誰にも聞こえない唄が毀れている
ジグザグの音を縫い合わせている
縫い目から滴ったひとしずくのアトリエから
誰にも聞こえない唄が毀れている

この唄は奏でると蒸発します
というライナーノート ....
わたしから

滴ったものの

壜詰めです

寝かせて

おいしくなります



壜の鈍色ラベルは

モザイクで見えないと

あなたはいった



あなたから
 ....
後悔を糧に生きる者は
満腹中枢が後悔のリミッタを感じなくなる
周りのものすべてが後悔に見え
見えては食い食っては探す
何が美味しい後悔なのか分からなくなる



単位時間当たりの後悔の ....
二回目のテスト結果を信じます 


天然度百パーセントを吹聴す 


吉の日に占いサイトで過ごしてる 


Bっぽくないわたくしの父は誰 


双子らと占星術の因果律 

 ....
背伸びして掴んだギリシャ文字を
ノートの隅にしたためる
方程式をプログラムした紙飛行機
その切っ先は水銀の鍵ということを
疑いもせず
七時間目の学校
屋上の手すりから放つ

サッカーボ ....
水たまりから削り出した初春に
溺れることなく
干からびることなく
倦怠感の体育座り


水底に届かない手
澱にすべる指


雨だれのみそぎ
わだちを掬おうとする手は
道を温めは ....
そのジョーク
醤油顔
   なら
許すけど
その未来に大いなる夢を抱きこの世に生まれ出た
ゴキブリ
いかなる困難にもめげず
常に前向きなきみは
誰もが羨むほどに輝いている

失敗を糧にし
鍛え上げてきた精神力と
逞しく黒光りする ....
十年ぶりのあなたを見て
すこし寂しくなりました

わたしが
紅く染まり
散っていくさまを
じっと見ていたあなた

その輝かしい憂いを失い
探しているように感じます




 ....
目の前に横たわる死体から
なにを手に入れた

喉を縊ったその手は失ったはずだ
束縛を解いたその心は手に入れたはずだ

保存エネルギーを

{引用=
電柱の上にとまった黒い少女
クス ....
茫とした{ルビ陽=ひ}はため息をも受けつけず
溶けだした野原に足が吸いこまれていく
彼方に響く踏み切りとクラクションの音
向かい風に頬を殴られた{ルビ黄昏=たそがれ}
(岩陰ではレミングがひと ....
うつつを指でなぞった先に悪夢があるというなら
夢日記をしたためよう
意識下で作り出した硬く尖ったガラスの破片は
握りつぶした血を舐めてこそ報われる
否、結晶の降り積もる夜こそ
月明かりは正四 ....
もし120%のわたしがいたら
わたしはいらなかっただろう

もし120%のわたしがいたら
わたしの代わりをしてくれていただろう

もし120%のわたしがいたら
親はもう少し幸せになってい ....
ルージュを差してスクランブル交差点を闊歩する
マネキン
サングラス越しのレーザー光線が
斜めに風景を切り取る
溶けて秋風に癒される切り口は
ぼくには見えない

エナメルメッキを貼った乳房 ....
まもなく
四番乗り場に列車が参ります
盛者券をお持ちのかたのみ
足元を掬われないように
ご注意してお待ち下さい



当車展望車からは
世間が見くだせるようになっております
 ....
折れそうなわたしを映す
動かない鏡
何も考えない
何も考えてくれない



折れそうなわたしを見て
鏡を叩き潰した



欠片を拾った手が
血に濡れた



もう戻ら ....
吐き出して
吐き出して

郵便局の薄暗がりが頬を撫でる
自動ドアをくぐると
体内時計から螺子が一本
逃げていく
逃げていく
減速度に身を任せ
力を抜いて深呼吸

過呼吸になりそう ....
「間違って生まれたなんて言わせない」


誰にも文句を言わないきみは


とても自由だ
折鶴の

{ルビ誰=た}に習ひしか忘れしも

{ルビ右手=めて}と{ルビ左手=ゆんで}に刻まれし

{ルビ貴=あて}なる鳥の影形

{ルビ盲=めしひ}となりぬこの身にや

神の言の ....
公園のトイレの結界を破り
用を足そうとすると
紙がない

わたしは紙を探す旅に出た

トイレの予約は
忘れずに

回数券で地下鉄を一駅
街頭でティッシュ配りをしている
手に取ると ....
あいつの後ろを自転車で駆ける
{ルビ傀儡=くぐつ}の糸はまだ切れていない
高校生になってようやく
おさらばできると思ってたのに
ぴたりと重なる通学路
ぴたりと重なる通学時間
慢性劣性アルカ ....
聞き飽きぬ

其の言葉こそ

聞き飽きぬ

人よ過ぐるや

疾く忘るらむ
悠詩(61)
タイトル カテゴリ Point 日付
勇者の唄自由詩018/11/24 0:25
自由詩318/11/12 23:49
最後の砦自由詩118/11/10 10:23
記念碑自由詩110/3/22 21:16
クォーツ自由詩010/1/13 1:04
子守唄自由詩109/1/30 23:41
この辞書に 書いてある川柳209/1/30 23:39
天球儀自由詩208/7/4 2:54
スワンソング自由詩2*08/3/23 1:53
タトゥー自由詩2*08/1/30 10:05
サナトリウム自由詩2*08/1/21 23:20
占術と心理テスト川柳5*08/1/16 23:14
ソクラテスの左側自由詩6*08/1/10 0:06
即興——水たまりの春自由詩3*08/1/2 0:44
醤油顔川柳3*07/12/13 2:15
光を抱くもの自由詩2*07/10/14 0:54
花詠残影自由詩4*07/10/11 1:24
虚軸天秤自由詩5*07/10/3 23:07
カタパルト紙飛行機自由詩2*07/9/21 0:40
即興——午前二時の澪自由詩1*07/9/17 2:21
83%自由詩1*07/9/16 20:41
ジオラマ自由詩6*07/9/10 23:51
える特急自由詩2*07/9/5 16:06
自由詩1*07/9/1 13:41
ATM自由詩2*07/8/31 15:40
暗渠の上携帯写真+ ...1*07/8/27 6:02
連鶴自由詩4*07/8/24 0:13
白い少女自由詩5*07/8/22 1:44
許さない自由詩1*07/8/21 0:39
短歌風『埋み火』自由詩0*07/8/20 0:19

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