あなたの手が私の肌をすべる
なぞられるだけで
震える身体に
唇を這わせて
反応を楽しむなんて
反則でしょう
冷たい肌に張り付いた髪が煩わしいから
紐で結わえて持ち上げる
....
何度も筆を走らせた便箋は
あふれ出した思い出でいっぱいになり
私の手はインクで汚れているのです
想う事すら罪だと言うのなら
願うことすら罪でしょう
この息苦しさと共に
....
途切れ途切れの意識の中
君が微笑んで
弱虫な僕にこう言うんだ
「ここにいるよ」
わかるかい?
その一言で安心して
僕は眠りにつけたんだ
古いアルバムの中
....
春の亡骸が
アスファルトの上で朽ちる時を待つ
雨上がりに
微生物の匂いを嗅ぐ
ほんの少し伸びた影に
手をふる子供は
背中の荷物が重たそう
はらりはらりと
川面に亡骸を落としながら
咲急ぎ
散り急ぎ
噎せる程の緑に溢れる
木漏れ日に遊べば
また巡り来る
時を思い
木肌に祈る
指から零れ落ちた
割れたガラスの欠片が
熱で溶けてゆく
炉の高温は素手には耐えられず
赤くなった指先が
悲鳴をあげるまで
熱を発するガラスに手を翳す
心の熱に ....
柔らかな木漏れ日の中
二人歩く夢を見た
遅い雪が赤い花を覆う夜
冷たい指先
首筋にふれ
一枚の毛布にくるまってじゃれついた時
不規則な鼓動が
胸の痛みが
....
ただ その手を 恋しがり
ただ その温もりが 欲しくて
ただ その瞳に 映りたくて
ただ その胸に 抱かれた
泡沫の時
幻の 時
それでも重なる鼓動は
嘘じゃ ....
紡ぎ繋ぐ言の葉を
深海の波音に乗せ
唄って
漂い揺れるこの身を
深海の潮流に乗せ
流して
泪頬を伝う夜に
聴けない声を恋しがり
鳴き交わすイルカの群れ ....
通り過ぎた 風さえも
気付かずにいた
砂が音を立てて動く様を
刻々と形を変えて
時の流れを映し出す
あれは
昔見た
深海の物語
....
異国からの手紙には
乾いた砂と
あなたの匂い
次に逢えるのは
いつですか
同じ空で
繋がっているのに
遠すぎて
ぬくもりすら届かない
寂しいと呟き
....
語りつくせぬ
夢の果て
それは
孤独という名の
影法師
付かず離れず
あなたの傍に
やがて影は
影に混ざり
夜の闇に
消えていく
傷跡が
やがて消えるように
....
またひとつ
視界が変わる
押し出された海は
今
夜明け前の静寂を湛え
黎明を惜しむ
進めと
声がする
東の海空の境より 新しい
光が 生まれた
鼓動が
響く
あなた ....
鼓静かに鳴り渡り
寒気張り詰め
舞う薄衣
朱に染まりたる様
艶やかにて怪し
風笛高く響き
荒ぶる魂を宥め
黄泉国境(よもつひらさか)誘いて
名残の詠 ....
痛いの… そう言いながら僕は赤い線を付ける
寂しいの… そう言いながら僕は 画面の向こうを嘲笑う
お前の囁きに一喜一憂するのは真っ平だよ?
そう言いながら今夜もお前の囁きを探す僕は ....
月に照らされ 蒼白く光を放つ雪に抱かれ
睫も凍った午前0時
指先はとうに痺れ かじかんだ爪先に雪の音
煙突から登る煙りは上昇を止め
瞬きもせず散りばめられた星明かり ....
雨があがって
空は寂しく凍りつき
半分の月物憂げに西に傾く
帰り行く想いのあてなどないままに
蒼いままの欠片がまた降り出した
朝焼けは朱く 日暮れは蒼く
染まりたる頬 我には見えず
君が心はあてなくさまよい
消え行く影に我は戸惑う
紡ぐ夢とてかりそめの幻
白き峰にかかる雪すら
死 ....
蒼く染まった心が ね
時々紅く点滅して ね
泣きじゃくる
幼い子供のように
わけもなく
夜の帳の中で ね
あなたが抱きしめてくれて ね
点滅した赤が ね
ゆっくり蒼に戻 ....
氷花咲いて 冷たく
紫色の唇噛んで
凍える手に息を吹きかける
冬の寒さ今は遠く遡る過去
ねむの木そっと
紫の綿毛咲かせ
触れる指先震える葉
夏の暑さ少し緩んで ....
艶やかに悲しく舞い
やがて朽ち行く 姿を例え
顧みる世のひと心
愛した数を数えるように
ひとつ ふたつと ビイドロはじき
やがて泪が枕を濡らす
いっそ目覚 ....
蒼く染め上げて欲しいの
もっと もっと もっと
叶わない夢を見たいから
もっと もっと もっと
狐の染物屋
泪色の染料を
袖に染め付け
蒼い鳥
空に舞う ....
ホンのちょっぴりの覗き穴から
凝縮された時間が入り込み
反転した世界が焼きつく
現像するまでは分からない
幻想の世界は
リアルな世界を少しだけ
歪めてみせたりする
....
ブリキの玩具
軒下に
雨に晒され
色あせる
ガラスの箱に
蝶の亡骸
夜更けに嘲笑う
蝋人形
乾いた心は
痛みなどとうに感じず
窪んだ眼(まなこ)は ....
痛む胸の真ん中で
紅い小鳥が叫ぶので
今夜もうるさくて眠れやしない
不規則なリズムで
小躍りしている
僕は起き上がって
小鳥を宥める
あと少しだけ時間をくれ
....
月に侵食されて私たち
どこへ向かうというのか
森は遠く雪は深く
車道の雪は歩みを遅め
靴に沁み込む水が
僕を
惨めな気分にさせるんだ
凍りついた雪が
シ ....
1 2
0.45sec.