何も失うことなく
すべてを放棄するには
消えるだけでいい
だけど、すべてをこの胸に
留めおくことは
どうしてだか、こんなにも難しい

過ぎ去っていくこの春を
刻みこむようにイメージする ....
閉じたまぶたの陰影
紅い唇の
生きることは食べること
というメッセージ

組まれた両手の中に
包まれた空気の発するものは
あなたひとりの言葉でしょうか

きこえる
叫びが
きこえ ....
降り注いで
優しさの定義
事実で救われるのは
ほんの一握りの時間だけ

わたしの耳に届いていたの
存在し続けることに
疲れた叫び声が、確かに

土踏まずで花を踏む
残酷さを拭いきれ ....
耳につっこんだイヤフォンから
流れでるメロディとともに
バス停にたたずむわたし
の前を
容赦なく通りすぎていく
乗用車たちよ
ボリュウムをあげて対抗するわたしを
笑っているのかい

 ....
たらいに水を張って
カーテンを沈めると
昨日の夕焼けが
染みだしてきた

わたしはそこに足を浸し
夕暮れが指先までゆきわたるのを
感じている

ため息ひとつ
だいだい色
真暗な部 ....
春のあらしは
つぼみすら
根こそぎ揺り落としていく
いのち、として
咲くことのできなかった
それでも小さな亡骸となるものたち
眠れないことがつらいのは
どうしてだろう
眠れないことがつらくなければ
流されなかった涙は
いくつあるのだろう

数えきれない眠れぬ影は
朝焼けで溶かされず
凝固する
凝固しながら
 ....
頭まで毛布を被り
丸めた背中の向こう岸に
たまった呼吸の骸が、たからもの
眠りはぬくもりに引きずられてくると
信じて布団にもぐりこむ
あなたをここに押しこめたい

寝息の小川を
すい、 ....
わたしを守ると言ったひとは
わたしに頼れと言ったひとは
みんなどこかへ消えてしまった

抱きかかえようとしても
大きすぎる赤ちゃんでは
腕が痺れて
泣き声だってうるさくて
とてもじゃな ....
胃袋に詰めこむものは
ジャンクであれば、あるほどいい
水分ですべてを流しこめば
震える指をのどの奥に

便器にかじりつくように
ひざまずいて
溢れ出る吐瀉物に
願いを託す
ちいさくな ....
ビィ ハッピー
幸福になれよ
ビィ ハッピー
元気でいろよ
そんな呪いの満ちた世界

生きていれば
食い潰される可能性たち
恐怖に慄き立ち竦む

描いていたレールを
脱線するイメ ....
目覚めればもう日の出
せみしぐれはまだ弱々しい

過眠の代償の
ぼやりと重い頭を引きずって
タオルケットを払いのけたなら
ひとつ、咳払い
空虚な部屋に広がる
わたしの粒子が

この ....
もやもやしちゃってたまらないの
手持ち無沙汰で心は濁る
身体感覚が鈍っていく中
さっき食したファストフードが
この胃の中で叫んでいるよ

お腹をさすって
手探りでわたしを求めるけれど
 ....
あなたの右手と、わたしの左手
絡まりあう指の隙間から汗

じんわりと湿っていく

心臓が移動して
あなたに鷲掴みにされているみたい
揉まれて、濡らされて
昂ぶっていく

手のひらか ....
ペンキで塗りたくったような空
ちぎって浮かべた雲は静止したままで
わたし本当は、地球儀の中で
生きているんじゃないだろうか


剥がれた雲のペンキの粉が
雪として降り注ぐのですか

 ....
大人びていく幸福に
ついていけないもどかしさを
毛布のやわさでまやかしながら
わたしは夏を食いつぶしている

開け放した窓からは
額を撫ぜる弱風と
時点に留まる笑い声

途切れること ....
   1

ぬくもりを知ってしまったぶんだけ
喪失は獲得よりもいつも大きい
穴を塞いだところで
爛れたままの周辺が孤独を告発する

   2

大木の幹の裂け目に光るどんぐりに
ひ ....
その詩人は彼自身の紡いだ言葉で
ひとりの少女を殺してしまうことを切望していた
その欲のために詩人は
自らの涙をインクにして
少女へのあふれでる恋着を
毎夜手帳にストックするのだった
書きつ ....
どうしようもない
雨が降ったら外に出よう
あなたの影
探さなくてすむだろう

めざめれば
ひとりぼっち
暑さのあまり肌よりも
わたしにこころよいシーツ

からだを起こす気力を
か ....
粟立つ肌が
早く歩けと脚を鞭打つ
凍雲のすきま
十九時の満月はまだ低く
拾い損ねた人や物より
よっぽど近くにありそうだ

スピードを落とさず
曲がり角も無視して
ひたすらまっすぐ進ん ....
ないものねだりをするように
斜陽を写真に閉じ込める

ないものねだりをするように
野良猫に餌をやってみる

ないものねだりをするように
愛想を振りまき生きている

羨望や焦燥は
 ....
 わたしとカタツムリの初めての出会いは、わたしが幼稚園児のときだった。

 ある日、仲良しのマミちゃんの家に遊びに行くと「なぁなぁ、いいものみせてあげる」と、ぎっしりと土の詰まった虫かごの前に連れ ....
毎日、想いを溶かされる夕陽は
日増しに赤を強くするのに
今日また、わたしもそれに夢を預けた

やさしい赤が広がる空のもとで
最後に一度、恋の言葉を囁きたい
ずれすぎた歩調のせいで
決 ....
前略 くりちゃん

       
相変わらず人々が、散っていく桜のことばかり
気に留めて、嘆いたりしている春でしたね。
あなたが濡れてカワイソウだとドライヤーを
あてた綿毛は小さなタ ....
誰のためにと嘘をついても
組まれた手は、いつも左胸に
腐食した鎖を外してくれた人が
今度は強い首輪になってくれると
信じている

流れる雲は千切れるばかりで
どこを見据えれば
あな ....
洗濯機に寄りかかり
点在する晴れ間を
信じるか否か決めかねて
ぼんやり空をながめている
憂うつなのかもはっきりしないの
寒さに体を枯らす朝

眠気を知らない弾んだ声で
ラジオがさっ ....
薫風に
似つかわしい歌を思いつけなくて
だんまりのまま歩いている
視界が明るくなっていくのに
人影は色濃さを増す早朝を

のどかな光景が
電車の窓を塗りつぶす
その平穏な生活は ....
浴そうに張ったお湯に
指を挿し入れる


前のめりになれど
湯垢の帯を隠すことなどできもせず


立ち尽くしたまま夜を明かせば
ふやけた皮膚の中には
誰の後悔が詰まるのだろう
 ....
夕ぐれ時に
快晴だった青空が
東へ押しやられているのを見つめる
ひとすじの雲が
分かちているようだ
逃れられないこの先と
とりこぼしてしまった出会いを


ひこうき雲 ....
どうにもならんわ
ため息でとばした怠惰
過眠のさなかに溜められた
暑い呼気に目眩を起こす


汗に揺られながら
夢のはしばしで
けだるさの正体を占った
額のニキビをうっかりつぶしたせ ....
茜井ことは(46)
タイトル カテゴリ Point 日付
五感に、刻みこんで自由詩6*14/6/13 10:54
マリア、どうか邪気のなく自由詩1*14/5/16 15:31
土踏まずで花を自由詩3*14/4/23 15:25
遠い日の歌はバスにひかれる自由詩6*14/4/15 10:26
夕暮れに溶けていく自由詩4*14/4/11 12:41
中絶自由詩2*14/4/9 12:05
あなたにやわらかな朝を自由詩4*13/12/19 14:12
蜜月と迷子自由詩9*13/12/17 12:39
桃源郷が砕けた夜に自由詩3*13/12/15 17:22
ちいさくなりたい自由詩4*13/11/7 15:45
ビィ ハッピー自由詩1*13/10/31 0:03
季節、夏、咳自由詩3*13/10/30 10:39
よう、孤独を口説こうよ自由詩3*13/10/25 21:38
手のひらから火の手自由詩1*13/9/28 9:28
ソラゴト自由詩2*13/8/14 19:26
空のある雲の意味自由詩5*13/8/5 18:35
死に魅せられた女の顛末自由詩1*13/6/21 17:09
涙の犯した悪ふざけについて自由詩3*13/6/3 20:38
寝惚けまなこの冷静自由詩2*13/5/25 20:54
タブラ・ラサ(再生紙)自由詩5*13/5/13 19:16
ないものねだりをするように自由詩3*13/4/29 13:28
足の裏のカタツムリ散文(批評 ...2*13/4/21 18:44
恋に染まった淡い夕焼け自由詩1*13/4/13 17:28
スラング自由詩2*13/4/10 14:52
シスター自由詩1*13/4/1 22:58
結ぼれる雲路自由詩2*13/3/26 12:22
グッドモーニングと言えるだろうか自由詩3*13/3/21 11:17
お題/君の居ない景色自由詩2*09/8/20 19:26
時間/その絶対的なもの自由詩5*09/6/11 0:00
【創書日和】鼻息荒くつめを切る[group]自由詩0*08/8/31 19:37

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