思わずため息が出た。
とことん甘い。
「コーヒーをお願い。苦いやつね」
笑った。とびきり下品に。
外は雨が降っていて、空は白かった。
皆、カラフルな傘を持っている。この町は曇りでも明るい ....
針のような棘がある
その棘を全て抜いてやると
水気を失って干からびた葡萄に似ている
俺はそれを食べる
種も一緒に噛み砕く
そして唾液と共に吐き出す
愛は緑色をしている
それは俺にとって
....
『赤い朝』
おはよう。
それは夕日に言ったのだろうか
カーテンの外の赤い朝はためらいがちに
おやすみも言わず、暮れていく
そして夜が来る
おはよう。
また明日も
言うのだろうか ....
「私は戦地で負傷者を救命する医者だった。
ある日、重症の少年が母親に連れられて
私の元へ駆け込んできた。
しかし私は、少年を一目見て
彼は助からない、と悟った。
酸素ボンベをつけて ....
太陽を眺める/彼は仰向け/
で/空に銃を向け、
俺に言った。(こっちを向け。)
俺は言った。おとなしく(帰れ。)
彼は銃を上に向け、
去って/いった。
「あの頃、陽炎が消えて、跡には日 ....
翔太は自分のことしか考えてないと思う
そうかな
自分の見栄とか体裁しか考えてないよ
そうかな
そうかなって…そうやって冷静な振りしても私には分かるんだから
なにがさ
冷静な振りをして ....
父親から教えられた一番印象深い言葉は「Never Give Up」と「負けるな」言う言葉だ。何があっても絶対に諦めるな、負けるな。この言葉は、常に信念を持ちその信念を信じ続けた父の生き方そのものだ。
....
振り返れば、蒼ざめた空
眩しすぎる光が、あたしを責める
光が、眩しすぎる
5年もの歳月
あたしはずっと
ひとりぼっちで
部屋のなかで暮らした
外に出ることは極稀で
....
あるとき私は、一輪のスミレだった
ひび割れたコンクリートの僅かな隙間に根を張り
強い紫色の花をリンと輝かせた
けれど陽の当たらない場所に生まれた私は
誰にも見つけられることなく
静かに枯れて ....
マーガレットジャムがテーブルを流れていく
ブラックコーヒー、そしてパンと銀色のサジが
流されていく
マーガレットジャムが
テーブルを染めていく
街並みは夕陽の匂いで溢れていた
日の出と ....
回っている。
ロングスカートをはいた女が
スカートの傘の中央でバランスを取りながら。目を閉じて。
右手は垂直に天井に。左手を横にゆるやかに伸ばし、回転する。
長い間、ただ一心に回り続ける。
....
二十一回目の春は、砂の味がした
進むべき道には視界を曇らせるほどの砂嵐が渦巻いていて
物心付いた頃から刻み残してきた足跡さえ消し去ってしまうようだった
彼は喫茶店の中で苦いコーヒーを飲 ....
あたし…
ずっと一人で薄暗いアパートに暮らしていたの
何日も洗っていない頭を床に落として、
部屋の隅に転がって、
ずっと一人で保存食の愛を食べていたの
窓の外は、緑色の大空が、紫色に染ま ....
一人でウォークマンを鳴らす。
賑やかな教室から逃げる。ウォークマンを引っ掴んで。
休み時間になると決まって屋上に忍び込み、赤錆びでザラついた柵の
隣に捨てられた小汚いパイプ椅子に座り、ウォークマ ....
コモレビーム発射!!
この前4ヶ月ぶりに美容院に行った
それまで伸ばしっぱなしだったのだ
美容師は言った
「モッサモッサ!はい、ご一緒に!モッサモッサぁぁ!」
「・・・」←僕 ....
動物には偽善が無いというけど、それは彼らが本能のままに行動するからだ。
もし頭で考えて決断に迷い、真実を探してそれでも何かを決断するという時があれば、それはどのような選択をしようとも偽善と呼ばれる可 ....
空に飛沫を上げ
雨飛ぶ
暗雲しかし
太陽の眼光
硬直した頬を打つ
漆黒の夜しかし
太陽の眼光
蒼ざめた心臓を打つ
蒼ざめた空を見上げる
蒼ざめた夜がやがて来る
それでも ....
冬も近くなって日の落ちる時刻もだいぶ早くなった。少し暗くなった渋谷の駅前ではいかにも胡散臭そうな50過ぎのロシア男がショパンの別れの曲に合わせて操り人形を躍らせていた。ロシア男は渋谷をうろつく数人の ....
とてもなんて美しい光だわ
と変な日本語で感嘆する前に
その服装を何とかしろよ と
全身網タイツの彼女に一言申したところ
貴方はなんてとても必死なNiceGuy。
なんて言われたものだからNi ....
駅の前のLightが1・2・3・4・点燈
Bicycle/Right右折
前輪は前方に矛盾していたのに
それでもRightは右のように証明された
暗い/ところで/泣いている
以上、以下のよう ....
父なるイエス、ただいま帰還しました。
そういえばイエスタデイ、渡して欲しいものがあるのって言われてベンジーからパンジーの植木鉢を受け取った。植木鉢があまりに汚かったので買ったばかりの花瓶に入れよ ....
[六月の午後の雷雨]
放課後/定時/時折
石造りの教会に足を運ぶ
窓に打ちつける激しい雨
外ではまだ幼い葉が風雨に圧され
ぐっしょりと頭を傾げていた
それを見て
窓際でしゃがみこんだ ....
いつの日も真実を追い求めた
朝も昼も朝も昼も朝も昼も朝も昼も朝も昼も
神や道徳が僕に揺ぎ無い信念を要求した
朝も昼も朝も昼も朝も昼も朝も昼もそして夜も
母親は僕に言った
「優しいだけでは駄目 ....
サヨナラ
黄色い雨と共に木の葉が落ちてくる
静かに影を空に灯す
ライブハウスの狂ったイチゴ
『夕影』
ため息が凍え白く堕ち
駅で大きな魚類が微笑みかけた
....
駅の片隅に
捨てられたものがあって
ホームレスみたいだって
君は笑ってた
空が青すぎて
吸い込まれていった
呼吸の数だけ
消えていった
分かっている、とてもよく
それは遠いところ ....
「斉藤さん、ちゃんと仕事しないとダメだよ。皆、頑張ってるんだ。突っ立ってないで、それ運んでよ」
感情の見えない斉藤さんはやる気のあるのか無いのか分からない低調な声で答える
「はーい」
主任は続け ....
電車の窓の向こう側の、外の風景のその先
右から左へと過ぎ去っていった心象の中に
少年の頃の自分が口をパクパクさせて泳いでいる
僕は餌なんか持っていない、それなのに
少年の頃の自分が口をパクパク ....
終焉は終焉だった
終日、涙が流れた
泣いたカラスが電線で踊った
嘘は虚言で戯言で
教室の窓ガラスの向こうに
虚構の街が見渡せる
白線、延々と流れていく
スピードは規制していく
青信号、 ....
およそ人の来ない舗道に倒れてから、ずっと静寂に身を預けていた。手や足は動き方を忘れてしまったようだ。
このまま寝てしまおう。駅まで20分。終電にはもう間に合わない。歩く気力も無い。
音楽は流れては ....
電気を付けたまま寝ていると
母が怒って消しに来た
俺は無意識に
「暗いから、怖い」
と言って泣き出した
すると父がやってきて
「付けておいてやれ」
と優しく言いつけて
二人で静かに去っ ....
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