この夜には日溜まりがまだ残っていて
所々に家の明かりがつき始めていた
それなのにこの灰色の町では
何処を探しても星空は見えない
電車の窓から
あの人の家を探している
もし貴方が笑っ ....
前頭葉の破損した
黄緑色の花
その雫に映る機械都市
無音で作動する化学工場
時計仕掛けの月明かりと点滅する電燈に
反射し黒光りしているコンクリートの河
立ち並ぶ病的に白い蛍光の列
点々と ....
傾斜/午後の光
射す灰色の空は
立ち並ぶビルの
すぐ上に落ちて
夕焼けが始まる
前の憂鬱を伴った眩しい公園で
少女はぶら下がっていた/傾斜
「久しぶりに土の匂いをかいで
あの ....
太陽がセパレートコースを直角に照らして
スタートラインで静かに永久を刻む
その時大気は止まった
(筈だった)
直線の向こうに見えたジャージ姿の教師
あの日のゴールは今は ....
真夜中の耳はアーアーという幼子の怯えたようなかすかな声を聞いていた、鼻腔にはプラスチックを焦がした時に嗅ぐような悪い気が入り込み、瞼は闇の中に二つの重なった円(或いは流れる光の川)を見つけ出していた ....
クレヨンの記憶を透視して心酔する
実景を曲解することで救済を求める
孤独に凍える青年の無防備な嘲笑は
赤みを帯びて夜に没する
―赤いランドセルの中身が飛散したある朝に
純粋すぎる挨拶 ....
八月十三日 晴れ
病院を出ると、涙目の太陽に染められた入道雲が住宅街の上に広がっているのが見えた。振り返ると安住さんのいる白い病室は真夏の街の賑やかな光からも隔離されていて、まるでそこだけ別な空間に ....
空の青に風が線を描く
空の青に流されていく
薄紫色の花を持つ
貴方の笑顔と空気が
透明な街の中に浮かんでいる
貴方は
不意に後ろを振り返って消えた
赤い風船が飛んでいる
透明な ....
金属が激しく鳴り響くような盲目の世界で
sufferの影の歩みに合わせ荒い呼吸を繰り返す大地
風すら消えた暗闇の空間には星すら瞬くことがなく
――夜の螺旋階段を登っていく音がする――
幾千 ....
白く沈黙する病室の内で
遠くに寝ているあなたと共に
403号室は透明に生まれ変わる
ベッドは意味も無く回転している
風は、呼吸もせず感情も持たずに
無機な白いカーテンを翻すだけである
....
道路に燃やした黄色い花が夏を点灯して
遠方の優しい風は透明であった
そこに震動して遠くに人々の足音が停止したときに
枯れ始めたという即座の真実
汗に濡れた頬の上で見られたどんな意味も ....
・・・*1*・・・
後ろから追ってくるキリンの
長い脚と首と黄色い胴体と
短い角と
真夜中の草原を逃げ回る
恐れる僕の手足と裸足と
小さい寝巻きが
交差する
長い脚と短い角 ....
記憶は左から右へ過ぎ去り
流れる雨に歪んだ街並みは
僕の黒い顔を窓に映している
暗い路地にぼやけた蛍光灯は
6等星にすらなれなかった
歩道を照らす銀色の光達
僕達は何処へ行くんだろ ....
木々が音を立て死にゆく
睡眠の音さえ失せる
夏の日々
僕は今日生まれて
昨日死んだ
死体の様に冷たいシーツの上で
僕はさっきまで倒れこんでいて
息をすることさえも苦痛だった
....
私は倒れている
私の左手は破壊されている
私の薬指は錆付いて動かない
先ほど玄関の扉から入ってきた男が呟いた
「お前は存在の無意味だ」
私は倒れている
私の部屋にはかつて私の写真が ....
黒く闇に染まる硝子窓よ
僕の声を知らないか
風に押されゴトゴト音をたてる
個室の扉
僕の声を知らないか
あの娘の写真
外は風が呻いている
風よ 僕の声を知らないか
風よ
....
真夏の一本道は何処までも続く
と思っていたのに気づくと僕は
廃墟の街で佇んでいた
強烈な西日を受けながら
僕は少年の影を追いかける
街が暖かく流れていき
ランドセルを地面に置い ....
知らない女の子
泣いた
知らない女の子
家にいた
僕の父親 帰ってこない
僕の叔父 家にいた
寝室を開けると
父親がウィスキー飲んでいた
叔父が笑った
女の子も笑った ....
変わりいく季節は
・少年が林の中に消えていく・
の後ろ影
僕の中の水彩画は泥をつけられて
パステル絵具はいつからか泥まみれ
青空は僕に別れを告げる
変わり行く季節は
・黄土色の空が目 ....
凍死しそうな真夏の夜に
電線に止まっているカラス
銀色のグラスに注がれた
オレンジジュース
私の体は透き通って
喉を通過する無感動
何も飲んでいない
凍死しそうな真夏の夜に
女は去 ....
死体は下水道に浮かんでいた
黒い顔だった
灰色の壁のトンネルの中を歩いた
黒い闇は全てを飲み込もうとしている
俺の死体は下水道の中で
泡に集られている
その泡は
シャボン玉が綺麗だ
....
砂が空に舞い上がるゆうべ
日差しは糸を伴って零れ落ち
砂は雲となり赤い雨と共に
散々と降り注いだ
空の上には校庭がある
校庭の雲平線はどこまでも白く
子供たちは白い綿絨毯の上で
無邪 ....
?.無意識の夢なのだと気付き
茹だる暑さに目を覚ます
僕は何かを見ていて
僕は何かを知っている
時計の針は回っていて
午前三時の音がする
?.無意識の夢中 ....
僕はいつからか
裸足を履くようになった
田んぼの後ろで揺らめく
蜃気楼はオフィス街の
青い結晶だった
暑い…
昨日の夢では七の地蔵が
後ろを振り向く
(赤い涎掛け)
蝶が花に ....
僕は灰色の影を彷徨い
遂にトンネルの前で躊躇した
目前の空洞に絡む蔦が懐かしく
黒い世界に
鼻先から痛みの涙が迸る
ゆっくりと進行する光の無い世界で
僕は音も立てずに
いつまでも歩いた
....
僕の顔をそっと撫でていたのは
一体誰の手だったのか
美しい溜息
あれは母の手だったのだろうか
それとも夢だったのだろうか
台所では
夕飯の支度が進んでいる…
風、吹き
障子が揺れた時
襖から、祖母が顔を出した
時は既に遅く
襖から、祖母が顔を出した
葬儀の前夜
その白い布の下から
祖母が顔を出した
少年が泣いた 時は既に遅く
祖母が死 ....
両手の指と指の間から
音もなく零れ落ちた
赤い後悔
それらを また
両手で掬い上げようと
するのだけど
どうして
止め処なく 打ち寄せる嗚咽の波が
流れ落ちてまた僕は顔を歪めた
....
少年が笑った
夢の中でも笑った
「そうかもしれない」
笑ったまま
少年は夢の中
二度と醒めない世界へ
精神は溶けて
永久に失われた
その後ずっと
黒い歌を歌っているだけ
目は虚 ....
薄暗い理科室には真っ黒な机が並んでいて
白衣の教師は訥々と…
橙の柔らかい光を放つ豆電球を見つめる
とても明るく
少女と目が合わぬように
見つめる
そして思い出す
暗い部屋にポツンと浮か ....
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