もう何年もおまえをまっている。
とてつもないながい時間がすぎて、   
過熱した脳がすうっと凍結する。
雨のはげしくふる朝、ぬれねずみのおまえがやってきて、

にっこりわらう。ラオスとの ....
常夏の夜の底でぼくはアジアを抱いた。
こがね色にきらめくまばゆいタレーの中で
すぎさったはずの貧困がものがたられた。
あくことのない想像力の肉の中で、

一〇〇〇人の男とまじわった女はも ....
よあけの、ふかいしずかなタレーの中にも、    
やりきれない嫉妬がまっていて、
ほんのわずかなぼくの不在をうらんでいて、
おそいかかってきたのだ、手にも脚にも。

ひさしぶりの海水の感 ....
あけぼのにそめあげられた、タレー
乾季の、おだやかな海がぼくをさそう。
貴婦人のやわらかい肌に、抱かれ、
羊水の中で、いつまでも寄り添う、

おおきな愛のような、感触にたわむれ、
ただ ....
パーサータイ(タイ語)では、
海のことをタレーと発音する。
この道をまっすぐ行くとタレーに達する。
椰子林と湿地帯の交互につづく道の果てには、

佛暦二五三六年の浪のしわ
まんまんとた ....
佛暦二五一三年三月生れの
ヤーとよぶ女に出会った夜
細胞の隅々まで思い溢れる  
早朝の散歩に眺める干潮の

タレー。遠のいて行く波の
後ろからあがきながらみる
果てないアヴァンチュ ....
プーケット島であそびつかれて
男たちはミニバスによこたわり高鼾。
たおした座席に足をなげだして
ふとめざめて窓越しにみあげるとき、

ああ空がとんでゆく。雲がながれて
刻々と色をかえる熱帯 ....
タイ南東にうかぶコ・サムイ
サムイ島の 常夏の夜はすずしい。

海の微風に椰子の葉葉がおおきくゆれる
ヤーという女とふたりで満月をみあげる。

風にのるあかるい会話
耳に心地よい片言の童 ....
マレー人たちが群れ遊ぶ夜
路地裏に押し潰された家並
薄明りのしたで媚びを売る
タイの女たちの問いの意味 

なにも特別な意味などない
男たちが女たちにもとめる
たったひとつの部分的な哀
 ....
首都 クルンテープの花
観光地 プーケット島の花
南国 スラータニの花
国境の街 ハジャイの花。

咲き乱れる花、花花。

  「花の命は短くて、」(林芙美子の)
  「花よ。
   ....
乾季にはいったらしく日毎
陽射しも強くなってまこと
南国らしいあかるい空の下 
元気ですと書いた手紙の後

ひどい雨がやってきました
ナイヤガラの大漠布の真下
さながら、川に浮かぶ船 ....
ぼくにはあしが二本あり
うでが二本ある。
どうたいが一つあり
しかもそのどうたいには
おもてがあり
うらがある。
あたまが一つ、かおが一つあるのだが
左のあしを三十分
右のあしを三 ....
血みどろの肉塊みつめ ふるえおののく
愛死の恐怖に そそぐ熱湯の滝
ほとばしる白い飛沫でも消せない記憶
耿耿と夜空にうかぶ 摩天楼の秋。

欲望の体系埋めてねむれる都市の
清潔な熱帯の緑は ....
天使のようにすんだ青い空
みあげている目にうっすら
涙がにじんでわかいみそら
浮世に見捨てられ上のそら

オレンジのように光る大地
いつもいつもゆれてる位置
だからいつもひとりぼっち ....
さがしあぐねた太古の村里
官能の奥にゆれうごく川面 
頑迷な細根の入り組む過去
身悶える蒼白い肌が密かに

産卵する苦悩の狡猾な意図
かも知れないのにもっとも
外見は無口な黒いシャム猫
 ....
ウオルト・ホイットマンは世界にひとり
一八一九年 ニューヨーク州ロング・アイランドにうまれた
四歳の時ブルックリンにうつり 五五年 突如 火の鳥
三十六歳のホイットマンにより『草の葉』第一版は書 ....
一八五四年十月二十日 
北仏アルデンヌ県シャルルヴィルに生まれ     
南仏ブウシュデュローヌ県マルセーユに倒れ
空遠く消え去ったのは一八九一年十一月十日

一九九一年 ランボー没後一 ....
あつい陽射しの中にいつのまにか
とうめいな光がましてきて空は青い
『ジッドの日記』新刊本の表紙の白い
色に金と黒と朱の印刷文字があざやか

世紀末から新世紀をのぞむ思想家
にじみだすイ ....
雨が好きという小説を読んだことがある
雨が嫌いというのはあまり聞いたことがない
やらずの雨は都都逸にもあり乙なものである
城ヶ島の磯にふるなみだ雨はせつない  

雨よふれふれも悩みをながす ....
あなたも五十すぎたら定年になる
ささやかれてから 今年でちょうど 四年
第二の職場 わたりに舟と観念
世間には 不景気の風 吹きはじめてる

まだ浅い春の 山にきて ふと見上げる     
 ....
びっしりとつまった細字はかすみ
秋のかわりやすい天候のような
さむい冬のうすい存在と時間のような
たよりない国のざわめく都市の片隅

あたたかい寝床の中にもぐりこみ
じっと息をころし ....
一陣の風とともに
夏が 去る
この夏もついに
去年の夏はすでにくちはてる

おさない日
戦火
くりかえされた汐の満干
階段にひしめいた軍靴

あれる海も
もえる恋も
一族の歓談 ....
むかしある男がいた
異国の都市に行って
いい女にめぐりあって
恋の虜になった

裸の女をだきしめた
あまい時がながれて
つらい涙をながして
盲目の奴隷になった

海峡に黒い風が ....
漆のように黒い闇が無限にひろがる宇宙の
おぞましい永遠の闇また闇の中に白い服が
浮かび小さな一点の眼がみつめる青い星の
なんという美しさ神様あれが人類の隠れ家

それにしてもあれは何だろ ....
途方もなく繰り返される通勤という愚行
なんとか自由になろうと編み出した歩行
いまでは神保町から西新橋まで徒歩強行
満員すしづめと戦いながらの空しい思考

電車と速歩各一時間でストレス解消成功 ....
インドの魔術師から花束をもらった夜
ぼくはなぜか平安時代の日本にいる
うらわかい細身の美女にかこまれて   

宴はすでにはじまっていて
ひとりの女をだきしめながら
官能がたかまりおもわず ....
あ ら るしぇるしゅ でゅ たん ぺるでゅ 
ア ラ ルシェルシュ デュ タン ペルデュ 

呪文のように くりかえす 音声 
円環のように くりかえす 人生

探し求めて 時 失われた  ....
あ あんこ
い いんこ
う うんこ
え えんこ
お おんこ 

母音たちよ
ぼくらの言葉についてまわる
たった五つのわが母音にまじわる
子音たちよ

あ あかさたなはまやらわ
 ....
真冬の外房の海は重く静かに
藍色に拡がり風も無く澄んでいる
寄せて来る波は高く聳え立つ岩に
強く白く砕けてその音に聴き入る
城ヶ崎海岸に立っても染み入る
目の届く限りの海は幻覚を乗せ
 ....
まだ若かった三十年前、薄っぺらいクラシックラルースをテクストに辞書と首っぴきで
ランボーを読み、痴がましくもその全訳を夢見たものだったが、十歳の少年が「金利生活
者になりたい」などと書いているの ....
狸亭(173)
タイトル カテゴリ Point 日付
タレー 5自由詩204/1/13 9:24
タレー 4  自由詩104/1/12 9:15
タレー 3自由詩304/1/11 9:59
タレー 2自由詩004/1/10 9:29
タレー自由詩204/1/9 9:12
ヤー 自由詩104/1/8 10:07
飛ぶ空自由詩104/1/6 9:04
コ・サムイ自由詩204/1/5 7:16
パヤオの女自由詩304/1/3 6:51
タイの花、花花自由詩204/1/2 9:35
カノムは雨です自由詩204/1/1 9:52
古式タイマッサージ自由詩303/12/31 6:54
星港自由詩103/12/30 10:55
透明な平目 2自由詩203/12/29 7:06
透明な平目 自由詩203/12/28 9:00
ホイットマンは世界にひとり自由詩203/12/27 9:17
ランボー讚歌自由詩303/12/26 9:15
夏休み 自由詩203/12/25 9:03
雨が怖い自由詩503/12/24 8:47
定年自由詩103/12/22 9:09
白い頁自由詩103/12/21 9:27
夏、去る自由詩203/12/20 9:44
ソネット自由詩203/12/19 9:01
いまでも地球は青いの自由詩503/12/18 9:25
歩行による思考の試行 自由詩403/12/17 9:28
インドの魔術師自由詩403/12/16 9:02
失われた時を求めて自由詩203/12/15 9:19
わが母音自由詩303/12/14 6:48
冬の海のバラッド自由詩303/12/13 9:13
自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー散文(批評 ...1803/12/12 11:04

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