妄のような鈍色の怠惰の森に
いつの頃からか迷いこんだのだろう。
俗世のあらゆる愉楽求め豺狼
どもに約された暖かい世界に。

十九世紀純粋詩人に
なろうとして気負った日々は蜃気楼。
偽宝石 ....
夕暮れどきに 女が眠っている
うっすら目を閉じて 薔薇色の頬の
うれいを秘め 冷たくあおい額の
仄かに浮かぶアルカイック・スマイル。

唇のうつろいゆく刻に魅入る
はるかな肉体の悲しい記憶 ....
虫食イ田圃 残ル 郊外ノ町
青イ夜空ノ下 イツモノアヤマチ
二人乗リノ影ガ {ルビ童画=めるへん}ノヨウニ

マバラナ商店ノ灯ヲ ヌウヨウニ
広イ舗装道路ヲ マッスグ走ル
春風ニ きらりト ....
ぼくの愛する人 ぼくの恋人よ
きみの歯が入れ歯になるまでの{ルビ一世=ひとよ}
その時までずっと一緒に居たい

あの遠い山宿に生まれた期待
かぎりなくつづく田舎道の散歩
きみの部屋でともに ....
隔離された仄赫い闇に影二つ。
兄妹のようにも見え恋人のようで
単なる友いや仇敵の頭骸骨。
何故どうして一緒にいるのかあくまで

秘密のようだ。だあれも知らない三月。
それぞれの幻灯をもって ....
君はもう去ってしまうと言うのか
遥かに飛翔して行く詩人よ
一瞬触れ得たあのきらびやか
な言葉の魔術はまさに天与

見者の君はあmりに冷ややか
今残る傍線だらけの詩書
色のついた母音ぼくの ....
海のうねりのあの彼方
青空は遠のいて行く
不透明な愛別離苦
風も無い時の{ルビ泡沫=うたかた}

浮び上がる島の姿
眩しい二人の淪落
光る緑の不整脈
そこに酔い痴れてくたくた

愛 ....
そとはあかるいさあみんな
もうきたかぜはさったから
のはらにいっておどろかな
かわのほとりでうたうなら

ちいさなはなもかわいいな
めをだすこみちあるくなら
ぼくらのくんだこのかいな
 ....
ある日のこと
散歩してると
ふと
ユウコのひとみがかがやいて
つぶやいたのです。

アオゾラニ
ホラ
ハルガヒカッテル

ユウコと
ぼくと
ふふっと
ほほえみあって
うたっ ....
タイプライターのキーボード
整列したアルファベット

やわらかい白い指が舞う
日にゆれて互いに感応

華麗な音楽を奏でる
ぼくの瞳に映っている

あれは懐かしい愛の夢
そしらぬ顔の ....
青い草の原によこたわる{ルビ石女=うまずめ}よ
おまえの頬は桃色にかがやいている
それは太陽の光がつよいからだよ
かつておまえを生んだ母のあのスマイル
あれはそんな風にかわいてはいなかった
 ....
太り豚 たらふく喰って
寝惚けた まなこを空けて
太り方 洞窟のよう

よく見ると その目が異様
おどおどと 笑いを浮かべ
密か事 何をつべこべ

滑稽な 豚のくせして
悪の花 その ....
秋の日の
夕暮れに
悲しみの
行く影の

散り行くは
{ルビ邂逅=わくらば}に
もうとうに
骨と皮

心なし
千鳥足
よろめきて

色も無く
音も消え
影は泣く。
コーヒー色の 闇の中
誰かがぼくと 会話する
言葉は煙 その効果

タバコにまぎれ ダンスする
あの軽やかな 音楽か
寄りそう恋が 吐息する

記憶のように 色仄か
半透明の意味探る ....
うすっぺらい僕らの骨が浮かんでいる
遠くに流れる灰色雲に染み入る

戦争に負けたような色した怠惰
水槽に泳ぐ透明な魚みたいだ

太陽のある風景はもう吐き出され
旋回し流れ行くこの秋の夕暮 ....
ぎりいん ぎりいん ぎりいん

おっそろしく陰気な目つきして
錯綜した{ルビ鉄路=レール}を踏みしめて
いったり
きたり

ぎりいん ぎりいん ぎりいん

干からびた臓の腑をずりあげ ....
十七歳の遅い秋の夜が更け
虫の声消えた後あなたの命懸け

後に残した全集一巻胸に
少年は密かに誓うのです切に

どこまでもあなたの心を見つめますと
四十歳になるまでにきっときっと

 ....
何だか変だ。
熱ある変だ。
腐ったようだ。
少女もだ。
勉強もだ。

何も知らない。
自意識も無い。
あの子恋しい。
名前知らない。
目元が綺麗。

何だか肥る。
掌肥る。
 ....
愛は、奪うか,与うるか。
女の影に呆けたか。

金が無いから夢を見る。
夢の中へと紛れ入る。

恍惚と不安と二つ。
脳に膨らむ生き菩薩。

青い花は遠く離れ。
額から胸まで溢れ。
 ....
妻瘠せて 秋天高し 犬笑う

堰消えし 歩道歩めり さびしいな
叔父叔母の 味噌田楽の 馳走かな
上州に わが猫町を 歩みし日
大楓 年輪赤く 濡れており
八十の叔母 神様のごと 微笑めり ....
十七歳は朝日を浴びてほほ笑む
十七歳は夜の幻想に悩む

青白い頬に紅を差して泣き叫ぶ
おまえなんか大嫌いさ凡庸な虻
中也の「茶色い戦争」吹き荒ぶ
なにも恐ろしいことなど無いよ耳朶

掴 ....
学芸会の 幕あがり
風になぶられ どよめいて
青きドナウの 波の果て
美神憧れ 染めあがり

真白ドレスの 裾たぐり
ぼくは惚れ惚れ 君を見て
幻のみの 君を見て
幼い恋慕 詩人なり
 ....
夜のお茶は、つめたくて、うまい。
夜の話はまた、とりとめがない。

夜の部屋は、シーンと更けていった。
箱根にも、熱海にも、詩は無かった。

まだ起きている二人の声は,落ち
顔は青い。そ ....
狸亭(173)
タイトル カテゴリ Point 日付
似非詩人自由詩003/9/21 12:17
いのち自由詩003/9/20 10:55
愉快ナ風景自由詩003/9/20 10:48
恋人よ、君の入れ歯が見たい自由詩303/9/19 9:17
幻灯自由詩103/9/18 9:30
せんちめんたる自由詩103/9/17 9:56
江ノ島自由詩203/9/16 8:58
はる自由詩103/9/15 18:14
青空とユウコ自由詩103/9/15 8:58
タイプを打つおんな自由詩103/9/14 23:05
石女自由詩103/9/14 11:40
自由詩103/9/13 10:23
晩秋自由詩003/9/12 9:14
寂しい眺め自由詩003/9/12 9:10
病める秋自由詩103/9/11 8:52
機関車ー人夫時代ー自由詩103/9/7 6:02
作家へ自由詩203/9/7 5:54
きちがいになる自由詩103/9/6 5:43
その時、ぼくは十七歳自由詩0*03/9/3 18:24
四季折々俳句003/9/3 10:10
焦り、十七歳自由詩003/9/3 8:58
片恋、十七歳自由詩103/9/2 9:13
「お茶くれ」と言った自由詩103/9/1 9:10

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