オナモミのように世間にしがみつく奴
落花生のように自分の殻に閉じこもる奴
球根のように地に足つけて生きる奴
綿毛のようにふわふわと漂っている奴

その

遥か遥か上をトンビは飛んで

 ....
風が語りかけます
という詩的なフレーズからも
白い饅頭しか連想できない
埼玉県民の悲しき性に
想いを巡らせつつ
北風に逆らってペダルを漕ぐ
世の中とちょっと
気が合わないだけの今日
生活のバグを点検するように
家の隅々まで丁寧に磨いていく
どのようなプログラムで
この暮らしが動いているのか
詳しいことを私は知らない

5枚目の雑巾が真っ黒になったころ
致命的なミスを ....
苺は毒があって然るべき
姿形をしている
どんな顔をして
パティシエはそれを
ショートケーキにのせたのか
幸福のなかで死ぬ
誰かの最期を思い浮かべて
今年も
だるま収め所に
だるまを捨てに行く
よかった
捨てられるのが
自分じゃなくって
そんな気持ちで
右目を書き入れた
だるまが
転んだまま
起き上がらない
海が泳いでいく
そんな夢を見て目を覚ました
真夜中 真っ暗闇 
何も見えないから
この部屋がどこまでも
広がっているような気がする
世界がもっともっと広がれば
僕らは淋しさなんて感じない ....
ダビングしようと
君はいった
それはとても
素敵な提案に思えたけど
僕たちは
ダビングすべきものを
なにも持ってはいなかった
だからふたりは
ちょっと高価な
ビデオカメラを買って
 ....
きみはキッチンに立って
フライパンで喋りはじめる
押したり引いたり
きみが規則正しく振るたびに
フライパンが言葉を紡ぎだす
それは、
「美味しいですよ」とか
「残さず食べてね」とか
そ ....
ひとつの比喩もない
なにも隠されてはいない
夜明けの街の風景を
まだ群青が滴る道の上を
だが、人は読み解こうとする
昨夜だれかの見た夢が
白線のうえで細分化されていく
三丁目の曲がり角で ....
あなたは帰還した
本能ではなく
知識によって
懐かしい海 
夕日に染まる
新しい血液
骨のあなたに
命を選択し
整えられていた
この小さな庭に
あなたの命が
バラ撒かれている
色のない八月の跡
君の右眼は
スピードメーターになっていて
時速はいまや
300キロを超えようとしている

そんな夢を見て目覚める
とりわけ悲しい夢でもないが
涙を流す理由は充分に内包していると思う

 ....
学研ムーの編集局に仕掛けた地雷が
いい塩梅で爆発したよ
分かるとは
不感症になることと似ている
15の頃は
マンフレッド・マンで反射的にイケた
今の俺の反射神経じゃ 
月面すらも行けやし ....
真夏の海岸でのたれ死ぬ
そこから私の旅ははじまる


   *


毎日のように続く毎日の中で
呼吸をするのと同じくらい自然に
私の言葉は溢れ出てくる
笑顔のように涙のように
あ ....
街を歩いてゆくのは
君が10年前に落とした指だ
かつて、君の右手の中で
もっとも小さな指だったそれが
今では、親や子などという
不条理な力関係から解き放たれ
何に属することもなく
ただ一 ....
風のなかで風を探して
気が付けばもう
誰も居ない
原っぱでひとり
終わることのない
鬼ごっこをつづけていた
少年はいつしか
風によく似た季節に
連れ去られ
四月になれば
アネモネと ....
鳥が散っていく
春の風が吹くたびに
周囲の木から
ぽとりぽとりと
しずかに散っていく
その下で
人々は今日も
失うものを
探すことに忙しい
百年もすれば
鳥も人も
すべてが土に還 ....
いつの間にか
昨夜の雨はあがり
小さな水溜まりには
薄い氷がはっていた
飴細工のように
脆そうなそれの上に
理由もなく
足を乗せてみる
みしっ
と微かな音を立てて
氷は割れた

 ....
お母さんが種を蒔いた庭の土を
小さな女の子が
一生懸命踏み固めています
そんなに強く踏まなくてもいいのよ
なんて言いながら
お母さんは女の子の様子を
やさしく見守っています
やや離れた場 ....
鈴木が首を吊ったという知らせをうけて
テーブルの上を見てみれば
なるほど
胡椒入れの横で
鈴木が首を吊っているから
いたたまれない気持ちになって
伸びきった首を掴んでロープを外してやると
 ....
カードをめくるたびに
弱っていく
記憶の中の私たち
いくつかの成功と
たくさんの失敗を繰り返して
ふたりに残されたものは
ずいぶんと少なくなってしまった
それでも
消していくことで ....
テーブルの上に広がった海へ
そっと釣り糸を投げ入れる
古びたソファーに腰を深く沈め
ダージリンを一杯
それから
小さく溜め息をついて
今日一日分の孤独を釣り上げる
爆発する
夕日
の上を
駆け抜けていく走者
の影を
追いかけて
いく轍
に足をとられて
転びそうになる走者
の右手に
握られている
バトン
は理由のように
あやふや
だから ....
足を拾いに行きました
海の匂いのする街でしたが
この街に海はありませんでした
足を拾いに行きました
この街にも海があればいいと
子供の頃から思っていました
父に海をねだったこともありました ....
今日も
整備士が
街のいたるところに
油をさしてまわる
錆び付いていた風景が
滑らかに動きだす
時計台の時計が
ボーンボーンと音をたて
時間の螺子を弛ませている


 おはよう  ....
台所の片隅で
冷蔵庫は
昨日よりもちょっと
ナーバスになっている
海の見える場所に住みたい
そう思ったのは
二十世紀の終わり頃だった
さようなら
という言葉は
ずいぶんと
細長 ....
地面を掘り続ければブラジルに行ける
そんな話を簡単に信じる子供だった
なにひとつ疑うことなく
銀色のバケツに小さなスコップを入れて
近所の公園へと向かった
掘る場所といったら砂場に決まってい ....
言葉なんて大切にするな
おまえの横には
もっともっと大切な人がいる
その人をじっと見つめろ
その人のための言葉を探せ
封筒をあけて
君から届いた手紙を開くと
薄紫色の蝶が
ひらひらと
飛び立っていった

拝啓
それから
空白

君も僕も
本当に伝えたいことを
伝えるための
正しい言葉を持って ....
JR総武線は今日も素敵な形で走っていて
俺は運転席と客席を隔てる壁に
もたれかかる感じで車内を眺めている
隣ではカップルが終始くだらない話しをしているのだが
ふと見てみれば
女の方はこの世の ....
Tsu-Yo(87)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
彼岸文書グループ07/8/23
考察文書グループ07/7/29
投稿作品
種と空自由詩120/2/6 0:02
今日風自由詩420/1/20 15:49
大掃除自由詩613/1/8 15:38
3時の疑問自由詩412/6/29 22:05
だるま自由詩312/1/10 22:01
淋しい自由詩311/12/22 13:56
ダビング自由詩511/7/29 16:17
フライパン自由詩711/3/25 20:19
定点観測自由詩408/7/15 23:26
帰還自由詩308/6/9 21:48
自由詩308/6/9 21:47
速度自由詩208/5/16 3:01
偽物ロケット自由詩5*08/4/16 0:25
Reproduction自由詩508/4/14 23:51
指詰め自由詩008/4/8 19:32
アネモネ自由詩608/4/3 17:36
喪失自由詩308/4/1 15:53
脆いもの自由詩208/3/6 21:30
種蒔き自由詩308/2/26 20:33
目の前でゆっくりと死んでいくあなたが、トーストにマーガリンを ...自由詩208/2/6 13:51
神経衰弱自由詩008/2/1 17:55
ダージリン自由詩408/1/28 22:44
走者自由詩408/1/6 17:12
帰郷自由詩1108/1/4 0:44
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冷蔵庫自由詩107/12/15 21:13
ブラジルの穴自由詩507/12/5 18:39
爪楊枝未詩・独白207/12/4 21:33
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救いについて(総武線にて)自由詩7*07/11/29 15:56

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