あめが・ふる・すきとおった・あめが
おともなく・ふゆを・とかしてゆく
もしも・このあめが
ほんとうはすきとおっていなかったなら

やまはだは・まだしろい・けれども
はだかぎの・もりの・ほそ ....
あなたを腕に抱いて、
わたしの背丈ほどの桜の若木の前に立った。
背丈ほどでも、小さな花が四、五輪咲いていた。
あなたにとっては、生まれて初めて見る桜。
なんでも触って確かめたい年頃だから、
 ....
やわらかな ・ ひのひかり ・ ぬるいかぜ ・ はるのあめ
ゆきがとける ・ つもり ・ つもった ・ ときが ・ とける
とけて ・ あらわれる ・ いろたち
いまが ・ うごきはじめる

 ....
たくさんの・かれた・ちょうが・おうだんほどうを・わたってゆく・
ように・みえる。
あすふぁるとにひかれた・しろいせんのうえに・とまった・と想ったら
すぐに・また・いちどきにとびたってゆく。

 ....
なぜだろう ひとりで見上げたい空がある
なぜだろう ひとりで歩きたい小道がある

踏み拉かれるのはいつも名もない草花たちだ
(ほんとは名前があるのだが
(呼ばれてうれしいか 知らないが
美 ....
林檎が地面に落ちるように
名前がきみに落ちてきたのか
それともきみが落ちたのか
兎にも角にも
もはや後戻りは出来ない(と、思う
柔らかな髪の一本一本に
小さな指の桜貝に
きみの名前が刻印 ....
名前がつけば安堵する
しわしわで ふにゃふにゃで 
べたべたの
泣いてばかりの赤ん坊が
可愛いわが子に変身だ
名付け辞典と首っ引きで
ノートにいくつも書き出して
字画を数え 占って
若 ....
空になった子宮は
痛みをともないながら
少しずつ
小さくなっていったけれど
物語はまだ
そこに残っている
気配がした

だれもが
語りたい と
思っていた
産むという行いは
ど ....
優しい眼をしている。街角で行き交う
人たちはみな忘れている。周りにある
危険を。ふいに背後から、あるいは前
から、加えられる危害を。そうでなけ
れば互いの距離を取らないで、どうし
て正気でい ....
どこからか草刈り機の音が聞こえる
生ごみをコンポストに入れる
夕方の風は涼しくて
空には五本
爪で引っ掻いたあとがある
端っこの赤いところから
ゆっくりと解け、崩れていく
なにかもっと真 ....
四ツに割ったリンゴを
庭の木の枝に刺しておく
この冬を越せますように
 ヒヨドリたち
どうか無事に越せますように

海峡を越えていく鳥もあるという
敵に襲われぬよう波のうえ低く
 群れ ....
海に
忘れ物をとりに行っているあいだに
植物はそろりそろりと
水を探して気根を伸ばしている気配
あなたは海辺をさまよいながら
まぶたの下から不安げにそれを視つめている
あばら骨が上下して呼 ....
どうして夏は暑いのだろう
南半球の八月を思い
冷たく白い夏を想像してみるけれど
ひんやりともしない
フローリングに横たわっていると
少しは涼しいから
寝転がって
窓越しに雲が
左へ左へ ....
別れを告げるための時間と
別れを告げるための言葉
小鳥にはふたつともなかった
死は
あまりにも突然訪れたので

空のほかには誰も見ていなかった
体には傷一つ無く
見開いたままの目は
 ....
0・1秒で世界は脆くも崩れ落ちた
すべてを呑み込んで時間は
いつもと変わらぬ速度で流れていった
それがあなたの「痛み」だった
それはあなたの「痛み」だった

けれども
真夜中に目が覚め ....
いま 窓の向こう バスが通り過ぎた
家の近くの停留所
僕の乗ったことのないバス
バスは走っていく
静かな夜の街路に
大きなエンジン音を響かせて
十字路を真っすぐに横切り
マンションの四角 ....
たいていの場合 視界不良
でも あなたの運がよければ ごくたまに濃い霧が晴れて
一瞬クリアになることがある 遠くの山々の稜線を構成する
木々の一本一本がはっきりと確認できたり (その枝振りまでも ....
子犬はふくふくと温かかった
抱くのに心地よい重さだった
ゆっくりと地べたに子犬を置いて
あたしは
5階まで全速力で階段を駆け上がった
息を弾ませながら窓の下をのぞくと
子犬はきょとんと座っ ....
少し甲高い おさないその声を
目を細めて 懐かしむ人がいて 
はじめて
失われることに気づく

風はとどめてはおけないから
目を細めて 懐かしむ人に
自分を重ね 手を重ね
それでも 吹 ....
カチリと電気を消す音
布団を直す音
眠れないと
体をもぞもぞさせていた子どもも
やがては静かになって
規則正しい呼吸の音がひとつ
それが夜の音

冷蔵庫は低くうなる
時計の音は少し間 ....
根は分解されて土に還っていた
枝の先にわずかに最期の吐息が残っていた
去年咲かせた花の種を形見に取っておくんだった
オー マイ リッラ 
後悔はいつだって遅刻する

ぽっかりと丸い穴が空席 ....
まぶたが無いので
眠っているのかどうかわからない
閉じたカーテン 夜のやみのなか
ポンプの音だけが部屋に低く響いている
水槽の底には赤い金魚が三匹
(いや 実際は一匹は赤くて あとの二匹は金 ....
夜に爪を切ります
迷信は知っています
そのとき をあれこれと想像してみます
みっともないほど泣きわめくかも と思います
ハンカチが二枚は必要でしょう それとも三枚かな?
鼻紙も忘れずに用意し ....
鳥の名前を覚えることから
始めようと思うの
と、その人は言った

たとえば、つばさを一瞬たたんで飛ぶ
あの鳥の名前を覚えたら
あの鳥はもう
見知らぬ鳥ではないでしょう?

さらりと雪 ....
千両梨の
胸のつかえはすこし緩んで
いよいよ白線の前に立ちました
ようい、どんのピストルの音で
きっとぱあんと弾けるふうせん
いつかは開けなければいけないドアの前で
自由落下を待っている
 ....

と思ったのは、鳥の羽だった
くるりとやわらかに丸まった羽毛が
風で、路上に転がって

ここで何が起きたのか知らない
鳥の姿も、形も無い
アスファルトには点々と
わずかな血痕が残され ....
たとえばマリアナ海溝のヴィチアス海淵に
古びた靴が片方だけ沈んでいたとして
その古靴が本物の牛革で
しかも、腕のいい職人の手によるものなら
そこから物語は始まるかもしれない

用水路の土手 ....
ほろほろと
風もないのに落ちてくる
きいろいなみだの
しずく

たおれた青草には霜
子どもはハアッと息を吐き
(みて、しろいよ)
目を丸くする

掃いても掃いても尽きることはない
 ....
おはよう と言うよりも先に
十二歳になったよ と
報告をする朝
きみはまだ翼の下
生まれてきて良かった? の問いに
素直に微笑む
きみのまだ知らない
悲しみと苦しみ 
平坦な道のりを願 ....
とりだって
なきながら とんでいる
なきながら はばたいている
ごらん あのほねを
アルミパイプとおなじに
からっぽ
くちびるをあててふいたら
さぞかし さみしいおとがするだろう
ても ....
北野つづみ(64)
タイトル カテゴリ Point 日付
あめ自由詩118/4/24 10:18
自由詩918/4/5 11:56
はる自由詩313/4/14 21:31
たくさんの・かれた・ちょうが自由詩412/10/29 10:55
草花たち自由詩312/1/21 23:33
命名自由詩311/5/30 21:07
名前自由詩411/1/1 12:32
産む自由詩10+10/11/27 20:19
優しい目をしている自由詩7+10/11/27 20:17
見失う自由詩810/8/28 14:43
祈り自由詩510/3/7 14:05
七月、あなたは海にいる自由詩209/10/7 9:28
金魚自由詩2*09/6/1 8:31
埋葬自由詩309/4/3 20:58
余命宣告自由詩009/4/1 10:07
バスが通り過ぎた自由詩409/3/31 13:04
世界自由詩309/3/30 8:53
拾った子犬自由詩709/3/30 8:38
創書日和「声」 声[group]自由詩4*08/10/8 14:36
夜の音自由詩3*08/10/7 13:22
リラ/小さな庭から自由詩6*08/9/24 8:07
創書日和「夜」 金魚[group]自由詩1*08/9/22 23:06
創書日和「爪」 爪[group]自由詩2*08/8/17 10:34
名前を覚える自由詩11*08/2/25 8:07
創書日和「月」 臨月[group]自由詩3*08/2/22 11:13
確かめもしないで自由詩5*08/2/9 10:18
創書日和「靴」 物語の始まり[group]自由詩1*08/1/30 8:51
創書日和「指」 銀杏[group]自由詩4*07/11/19 10:13
十二歳自由詩12*07/11/15 12:33
とり自由詩7*07/10/30 8:21

Home 次へ
1 2 3 
0.06sec.