およそ一千年前の一夜に
彼は女の人からそのからだけを買いました
およそ一千年前の一夜に彼は
首都の街で
女の人から からだだけを売って貰った
自分が働いて 手に入れた金で
肉体の欲 ....
好きな人がいる
当然
嫌いな人もいる
それ以上に
好きでも嫌いでもない人がいる
私という人間の 質と量
私という人間の 存在する理由
私という人間に 与えられた時間
私という人間が ....
指の先には爪が伸びる
それは
人も獣の証なんだろう
指の先に爪が伸びると
たいがいの男はほっとけなくて
爪切りを探し切ってしまうのに
たいがいの女が
やわらかい指の先に爪を綺麗に ....
嘘には二通りある
それは
他人につく嘘と自分につく嘘
嘘の取り扱い説明書なんてなくても
嘘は誰でもついてしまう
僕は君を愛しているという嘘
君は僕を愛しているという嘘
お互い ....
拍手も喝采もなく
ただ過ぎていく日々
日常の暖炉に火はなくて
冷めていく体温
暖炉に火が欲しい
見えないものも温めたくて
最初の出会いは
最期の別れに繋がり
その間に
蔦のよ ....
演歌がやたら心に染みるのさ
何だか気がついたら年寄りになっちまってた
還暦過ぎちまってよ
どうしようもねえ 巻き戻しは効かないんだから
このまま先に行くしかないよ
老後はのんびり釣糸 ....
寝台の上で瀬死に横たわっていた
虫のように息をしている
何人も神にも仏にもなれない
死人にしかなれない
死人にしかなれない
死人以外になれない
冬の夜は寒くて
冬の明かりは冷 ....
隣で女は濁音立てて鼾をかいている
ついさっきまで
愛しい人も発情すれば夜中に哭いてやたら煩かったのに
事が終われば
疲れて眠ってしまったんだろう
だけど
事が終わっても
男は眠れなくてぼ ....
桜並木が校庭を一周していたわけではなかったのかもしれません だけど桜並木に咲く花などどうでも構いません
確かに彼の記憶は水分を失い干からびていました
全ては不確かな世界のぼんやりとした景色だったの ....
深夜
名もない公園の駐車場に車を停めていた
他にも数台停めていたが人が乗ってる気配は感じられなかった
そこへ巡回中のパトカーが入ってくる
俺の車の横につけて停まった
警官が二人降りてきて私の ....
空は一面しかない
大地も一面しかない
あり得ない世界には
空が何面もある
大地も何面もある
私は
真面目に詩を書き上げるつもりなどない
真面目に詩を書き上げる才はないのだ
....
爽やかな風が吹いていた斎場には
一人の人生に済みの印を押してあげる為に
集まった親族身内たち
果たしてその人の旅の行く先が
天国でもその反対方向でも構わない
もしかしたら
宇宙の知らな ....
急な坂道が前触れもなくあらわれて
そこを登り詰めたら目前には予想だにしなかった崖っぷち
そんなのこの人生には普通に待ち構えているさ
他人にはつけない嘘を自分自身につきながら
不細工な顔と ....
茄子の煮浸しではないけれど
この星に入り浸っている
それが何の因果応報かはわからないけれど
人間が
人が
ヒトが
そして私が生きている実体
生きている正体
ヒトの煮浸しは
美 ....
詩は朝食前に書いている
夜が明けない前に起き出して
詩は出勤前に書き上げる
汚れた水を絞り出すみたいに
私が私であるためには
どうしても詩が必要だ
理由はわからない
たとえ解 ....
電信柱と電信柱を繋ぐ電線の上に
天使が羽を休めている
天使を数える場合
鳥同様に羽がはえているから
一羽二羽と数え始めたが
途中で断念した
数えきれない
電線が重みで垂れ下がる
....
昔からパジャマを着た事がない
寝る時は冬場でも下着だけ
それでも
夜中に悪い夢に魘されて
はっと目が覚めた時は大概冷たい汗をかいている
そんな時はなぜかオシッコも満タンになっていたりして
....
たとえ愛情の持ち合わせがすっからかんでも
財布に現金とカードが入っていれば
ウキウキ気分
それが程度の低い人生だと言うなら
高い人生って何だよ
俺だって金に困っていなければ
美味いもの ....
誰かが誰かを呼んでいる
しきりに名前を呼んでいる
しかし
その声は辺りの喧騒にかき消されて
落日の空の彼方に吸い込まれてしまう
なにも知らない子供らは
何者かに
何処かわからない遠く ....
目を離した隙に
幼い子供は大人になってしまい
取り返しのつかない歳月は
アルバムの中に閉じられた
明日へとかかる橋の欄干に寄りかかって
遠くに見える昨日の夕陽は
泪に霞んでしまう
....
地球儀を回して世界一周し少年はもう老いてしまった
そっと咲く花より花壇のなかに咲き競いあいたい女でいたい
人混みの人の匂いを避けたくて空いた電車を待ち続けてる
肌に薔薇彫っているのに ....
化粧をしない女と
化粧をする女
口紅を塗らない女の唇は渇くばかりで
あったかもしれない
口紅を塗る女の唇は艶やかに濡れていたに違いない
朝
彼が目を覚ましたのは誰かの足音が耳障りだ ....
人間
生きている間は生身
時には本能に逆らえなくなって
欲望に従順になるさ
男と女
女と男
たとえ愛し合ってなくても
一つ屋根の下に暮らしてしまう事はあるだろうよ
一つ屋根の下 ....
食材と生活用品。
まとめては買わないから日々近所のスーパーマーケットに行く
私は詩人の真似事している。それはどこまでも真似事であって本物にはなり得ない。
私の妻は詩に興味もかんしんの欠片も見 ....
ある日
休日でした
朝から無性に海を見たくなってしまい
妻を誘い、まだ小さかった二人の娘も車に乗せて
一路海に向かって走りました
天気は晴れでしたが雲は浮かんでました
海岸道路から海に ....
父親から電話がかかってきた
滅多に電話なんてかけてこない人だ
よほどの事がないかぎり電話をかけてこない人が
その日、その時かけてきた
電話口に出ると
いきなり
ひろしか、父ちゃんだ
....
夜、娘が言った
明日は彼氏に会ってくる
父親は何も言わない 黙って聞いている
母親は
母親らしい言葉を口にした
帰りは遅くなるの
たぶん
と娘は曖昧な答えを口にした
父親は黙って聞きな ....
私はまさに根のない草だった。
飲食店の厨房の仕事を転々と渡って歩いた。
三十歳に手が届く頃は出身県の県庁所在地の街で働いていた。
そこはパブレストランで駅ビル周辺の繁華街にあった。朝七時から ....
その小さな洋食屋はオープンキッチンになっていた
店内には四人がけのテーブル席が三つとカウンターに椅子が五つつ並んでいた。
マスターは二十代半ばの男性で、その街に独立して店を出す前は都心の割りと大き ....
空から水滴が無数に堕ちてくる
違うか
落ちてくる
あれは地球の涙だなんて
普通に生活してたら思わないだろう
だけど
毎朝
毎日
毎夜
蟻みたいにに詩が湧いてくるから
雨 ....
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