伝えたいときに
伝えたい相手がいないというのは
なんと苦しいことだろう
猫の手をいくら借りても
そのへだたりを
消し去ることはできないだろう
だから
ひかりでできたえんぴつが要る
空気 ....
よりよい幽霊になりたくて
悪い橋を何度も渡り
金色の蟻たちを埋葬してきた
完璧な駅
にわか雨の神
遠くから聞こえる近眼
ハレルヤ、ハレルヤ、
零がどんどん溢れ出す
無限大まで少し足りな ....
課題を最初の一週で終わらせる。
ゲーセンから逃げない。
友達と遊ぶ。
かき氷作りをする。
日にちがたっても焦らず「ぐ~たら」する。
旅行をまんきつする。
カブトムシをもとめて虫とりをする。 ....
きれいな音楽を聴きたい
わたしの心は汚れているから
水で洗っても取れない
風に吹かれても落ちない
けれども音符なら
生まれ変わるかもしれない
イヤフォンで耳をふさぐ
聴きたくないものがあ ....
おかえり
やってくるものたちよ
君らのことは
昔から知っていた
真っ赤な顔して
小さな手足をぐーぱーしていたころから
思えばそのころ
宇宙のすべてを知っていたはず
だんだん忘れたわけな ....
失われるべきものは
はじめからそのように決められていた
細胞のなかにあらかじめ
自死プログラムが内蔵されているように
それを否定することは
生まれることをも打ち消すことだ
細胞は運命の可視 ....
自慰をするカニエ
自傷するカニエ
自愛するカニエ
自爆するカニエ
挑発するカニエ
恫喝するカニエ
獰猛なカニエ
臆病なカニエ
裕福なカニエ
有能なカニエ
理不尽なカニエ
貧しいカ ....
胸に張り付いて剥がれない夕焼けがある
そのまま世界を焦がしてしまいそうな
夕焼けが
爪でカリカリこすっても
裏側にこびりつきいっこうに剥がれない
夕焼けの下では
とある母子が散歩していた
....
平日がやってくる
少し傷ついて
少しなぐさめて
そのうち
何も気付かなく
そのうち
何も感じなく
やがて
何も呪わず
やがて
何も祝わず
平日がやってくる
明日には駄目だろう
けれども明後日なら
どうにか
なっているかも
かの国で
明るい挨拶が交わされるのは
かの山で
母親が顔を上げるのは
かの街で
小さな光が天に昇るのは
かの海で
....
まだ飛んでいる
すぐにどこかへ
着陸すると思ったが
気まぐれな風にあおられ
思いのほか高く
遠く
街の奥には森があり
森を越えれば海がある
ふらふらと
心もとない放物線
巷で流れる ....
その人はよく読む
新聞・広告の類はもとより
ゴシップ雑誌から哲学書まで
どんなものでも選り好みなく
目的は特にない
賢くなりたいわけでも
褒められたいわけでも
ただ
愛を探すように
....
紙でできた飛行機が
街の上空を飛んで行く
折った人は
わけあって何処にも行けない
代わりに紙の飛行機が
飛び立つというわけだ
日曜の午後
雲一つない青空
街全体に
あきらめとなぐさめ ....
今日は日曜だから
少し泣く
だって明日から新学期
少し泣く
宝くじが当たらないから
卵焼きが上手く作れないから
メールの返信が来ないから
誰かの声が聞こえないから
少し泣く
空は晴れ ....
ご存知の通り
猫は足音を持たない
そのことについて
当事者から相談がある
上等な紳士のような
靴音とまで言わないが
せめて幼児が裸足で歩くときの
ぺたぺた音くらい
よかろう
それでは ....
真夜中の冷蔵庫には
大切なものが保管してある
賞味期限のとうに切れたチョコレート
芽が伸び放題になってしまった玉ねぎ
炭酸が抜けきる手前のコカ・コーラ
そして冷凍庫には
あ ....
別々の星で生まれたわたしたちは
別々の星に帰ってゆく
何の不思議があるだろう
それぞれの星にはそれぞれの神が棲む
岩場で昼寝していたり海底で欠伸していたり
だからわたしたちは
それぞれの理 ....
どうぞ
お好きなように
マフラーがはためいた
すっかり
忘れてしまわなければ
きちんと
思い出すこともできやしない
人類の一番の失敗は
残しておくことが最善と
思い込みす ....
ただのいきものになる
勇気はありますか
ただ水を飲むためだけに
目を覚ます勇気が
さっきまで咲いていた
花が萎れてしまった
それは
君のせいじゃない
地球が回ってい ....
わたしには
笑わない権利が
誰にでも
幸せになる権利が
あるのと同じように
空は晴れ渡っているが
笑わない
隣人は親切だけれど
笑わない
優勝チームの凱旋で
街はかまびすしいが
....
爪弾く指は
同じところを行ったり来たり
そのくせしばらく経つと
悲しみを言い当てる
もどかしさの中に
光とどまる
存分に
やさしくなるといい
それは権利
そして好 ....
はやく
思い出になりたい
そうすれば
やさしい言葉の
ひとつやふたつ
遠い浜辺の夕暮れや
非常階段の語らいが
一枚の絵になるといい
はやく
ずっと
転勤が決まったという。何処へ、と尋ねると別の星だという。夕暮れの河原に人影はなく、二人のために飾られた絵画のようであった。たまには戻って来られるのか、とか、いつまでの予定で、という私の質問に対し、こち ....
思い出が風化した頃に
また会おう
まあたらしい帽子をかぶり
まったく別のいきものとして
北へ向かおうか
南へ向かおうか
それとも
垂直を愛そうか
わらないまま飛んでいるうち
やあ、あ ....
ただの妄想かもだけど
その人が側にいる
私が猛るとき
ツマラナイカラヤメロとつぶやく
私が震えるとき
コワガラナクテモイイとささやく
本当にひどいときには
後ろを向いてもう見ない
私が ....
人と会う
PCの画面には
変わらない表情
顔色が青白いのは
パンデミックの現状のためか
それとももっと
大きな理由のためか
いずれにせよ
顔を見るのは久しぶり
まずは献杯をする
今 ....
こんなにも鳥が
渦巻いているのだ
疑いとか憎しみとか
そういうことではなくて
渦巻いているのだ
鳥が
昔の映画のように
ぎこちなく
けれども切実に
まったく容赦なく
どこか牧歌的に ....
落とし物を拾いに
金星と火星のあいだ
銀色の楽器か
瑠璃色の小鳥か
橙の夕暮れか
透明な言葉か
思い出せそうで思い出せない
一生かけてたった一つを
おそらく
さみしい思いをしていたら
母親がゾウを買ってきた
我が家は1DKだけど
ゾウ一頭くらい
生活する余地はある
問題はどうやって
ゾウを部屋の中に入れるかだが
販売業者はお手のもの
手際よ ....
絵を飾る
遠い砂浜
日が沈む五分前
遠くに人影が
犬の散歩だろうか
それとも
心の散歩だろうか
気がつけば
絵の中に立っている
橙色に染められて
描 ....
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