窓の外は夕焼けだった
西の空が燃えてしまうのじゃないかと
男は本気で心配をした
世界が端から燃えてゆくなら
何を持って逃げようか
あの手紙
あの写真
あの画集
あの女
一体どこへ逃げ ....
僕は目を開ける
僕は目を閉じる
僕が見ていても
見ていなくても
それは起こっている
僕は目を開ける
サンタマリア
僕はただ見る
真っ赤な顔で
立ち尽くすその象を
あばら骨の隙間を
 ....
君は猫舌だから
猫語しか話せない
だから大抵話が通じず
そのせいでこれまでも
ずいぶん痛い目にあってきた
けれどどうだろう
それでも頑として
猫語を話すことをやめなかったら
次第に話の ....
白いシーツをかぶり
君をおどかしたいな

君の怯える顔が
僕は好きだから

ねえ、知ってた?

この世は全部
空っぽなんだよ

君が愛する草花たちも
みんな幽霊なんだ
それが ....
詩人と娼婦が恋をした。

詩人は娼婦を
身請けする金を持たなかったので
詩を書いた。

娼婦は感動を
伝える頭と言葉を持たなかったので
体を捧げた。

硬いベッドの上
二人は一つ ....
細胞たちが目撃した。
貨物列車の荷台には
先住民族が座っていた。
主題歌を口ずさみ
夜明けの花に聞かせるつもり。
トーテムポールの先っぽを虹で濡らし
黒い小鳥の思い出を指で奪い
風のチュ ....
これは本当の猫じゃない
昼間は猫のふりをしているが
真夜中、家人が寝静まる頃
ぼんやりと白く光って
人のかたちをしたものに
そして私の布団に
勝手にもぐりこんでくる
私はそれをだきしめる ....
あら、あなたも?
実は私もなのよ
事務員の女性と
思いがけず話が弾んだのだ
深海魚を
飼っているという
全く気付かなかった
日ごろ仕事のやり取りをしていると
明朗快活で、そんな様子を感 ....
だれかの中に
深い森があり
そこから時折
聞こえてくる
ピアノの旋律

たどたどしく
弱弱しいので
耳を澄まさなければ
上手く聞き取ることができない

鳥は生まれつき
歌の遺伝 ....
町を出る日
旅人は一粒の種子を
宿屋の庭にそっと植えた
宿屋の主人にも女将にも
内緒でこっそりしたことだった

次に旅人が戻ったとき
種子は芽を出していた
旅人は快活に
海辺の村落の ....
とある船乗りがいて
心に窓を持っていた
長い航海を終えて
陸に上がると
海の上はもうこりごり
これからは陸の上で
のんびりと暮らすんだ
なんてぶらぶらしていたが
しばらくすると
窓が ....
皆、同じことをやってる

 けれど、君のオカリナは
 君だけのものだ

皆、同じことをやってる

 けれど、君のためいきは
 君だけのものだ

皆、同じことをやってる

 けれ ....
教室では
四十名近い生徒が
ひしめきあっている
各々が心の中に
深海魚を飼っている
十数年教壇に立っていて
唯一発見したことだ
このせまい教室の中で
信じられない形の魚が
一つとして ....
最後の列車が出て行くと
ホームの照明は全て落ちる
やがて通りの建造物は
砂のように崩れ落ち
後には
魚の骨が突き立っている
古びた予言で言われたとおり
忘れ去られる花言葉
無表情な三日 ....
地球の最も深い場所には
信じられないような形をした
魚たちが住んでいる
しかし非常に暗いので
その姿は
お互い知らないままである
眠れないときは
ピストルを撃つに限る
男は二階に上がり
机の引き出しから
真っ黒い拳銃を取り出す
そして四方八方にむけ
引き金を引きまくる
弾丸弾丸弾丸弾丸
欲求欲求欲求欲求
星屑星 ....
あんぱんを買って
自由席に座ろう
窓の外を眺めるのに飽きたら
文庫本を読もう
何を読んでいるかなど
乗客は誰も気にしないだろう
昼過ぎには着くだろう
次はバスに乗り換えよう
冷たい水を ....
浜にうちあげられた
一六〇頭のイルカを
一頭一頭確かめて回る
天使

あの頃
南の海で戯れたイルカが
どこかに混ざって
いないものかと

いない、いない
けれど
ふと気付く
 ....
ただ生きる
可も不可も
好きも嫌いも
ない

感想は持たない
ただそうであるだけ
それがどうした
そういうものだ

これが私の敬虔さ
祈ったりしないけど
だからこそ

雲が ....
私は恐れる
あなたがいないことを
あらゆる色が黒ずんで
呆ける、まるで雲のように

どこにも秘密はない
偶然鍵穴があいているだけ
いくつさしこんだろう
時には思い出をまさぐって

 ....
夫をオオアリクイに
殺されたという女と
安い居酒屋で会うことに
いかがわしいサイトに
けったいなメッセージを書き込む割には
きちんとした身なり
容姿もそれなりに整っている
平日の夜だとい ....
そろそろ
おいとまをしようか
たくさんご馳走になったし
ずいぶんと愉快に笑った
これ以上長居をすると
ますます帰りづらくなる
それに遠慮がなくなって
無礼なこともしてしまいそう
今なら ....
ありがとう
僕を空っぽにしてくれて
大きな歌で
満たされることだろう

ありがとう
僕をつかまえていてくれて
トンボになって
飛んでいくところだった

ありがとう
僕を自由にして ....
車の運転が苦手な私でも
紙の上なら滑らかに生きられる
比喩を追い、比喩に追われ
比喩が笑い、比喩が泣き
比喩のためなら死ねる
一体誰が幸せになる?
無意味という意味へ
言葉狩りをかわし
 ....
雨上がりだから
道がぬかるんでいるだろう
長靴を履いて外に出た
商店街を歩いていると
なんだかクスクス
視線が痛い
美容室のガラスに映してみると
長靴をはいた猫
これは一体
どういう ....
忘れるよ
君の事
君からもらったバタークッキー
君からもらった限定版詩集
君からのメール
君からの合言葉
忘れることにするよ
僕の全身全霊をかけて
津波よりも果てしナウ
こんな夕暮れ ....
またしても
寄り道
君のところに
行く前に
まるで
はぐれた
カモメのように
旋回して
後悔して
花言葉信じて
合言葉忘れて
嫉妬は黒ずんでゆく橙である。西の空を焦がしてゆく夕焼けのようにそれは魂に暗闇をもたらすだろう。
喜びはまぶしすぎる黄色い光だ。虫のうちほとんどは目が潰れている。
悲しみはうっすらと青いので、春先に ....
6時に起きて水を飲み
コーヒーを沸かす
新聞を読みながら
鉛筆で印をつける
本日はどこをまわって
職務を遂行するとしようか
ティシューでメガネを拭いて
ついでに頭上の輪っかを磨く
寝室 ....
「おかーたん、
 やねのうえのねこたんは
 こんなじかんになにをないてるの?」
「黒猫はね、
 本当のことを知っているのよ。」
「ほんとうのことって、なあに?」
「それはね、
 私たちに ....
やまうちあつし(476)
タイトル カテゴリ Point 日付
胸焼け自由詩215/6/21 16:54
夢闇自由詩115/5/27 12:54
猫舌自由詩2*15/5/26 13:32
オバケ自由詩115/5/25 11:16
魂の商売自由詩115/5/21 14:48
出発A自由詩2*15/5/20 20:49
寝子自由詩3+*15/5/12 16:25
西荻窪深海譚自由詩315/5/11 17:47
ピアニシモ自由詩115/5/7 12:07
旅人の木自由詩1*15/5/1 17:58
船乗り自由詩115/4/30 12:12
きみのもの(エピタフ)自由詩315/4/29 11:50
ホームルーム自由詩6*15/4/26 10:00
幻滅自由詩2*15/4/24 15:03
深海魚自由詩3*15/4/22 16:17
冒険活劇自由詩4*15/4/20 15:18
透明湖自由詩115/4/19 19:51
うちあげられたイルカのソネット自由詩015/4/14 15:45
雲のソネット自由詩2*15/4/13 11:22
おそれのソネット自由詩3*15/4/12 17:25
アリクイのララバイ自由詩015/4/10 18:45
おいとま自由詩5*15/4/7 12:58
地球天使自由詩315/4/6 10:28
ペーパードライバー自由詩7*15/4/2 21:34
長靴をはいて猫自由詩3*15/4/1 17:23
忘れるよ自由詩015/3/31 17:35
寄り道自由詩215/3/30 17:35
色愛自由詩215/3/26 15:02
勤勉な天使自由詩2*15/3/23 12:32
HONTOU自由詩2*15/3/22 12:52

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