明日はなにをしようかな
そうだ、
生きよう
誰でもなくていい
幸せでなくたって
季節の風が吹いている
それなりに成長した木なので
横たわるとベッドからはみ出してしまいそうだ
実際、回診の時
医師は枝分かれした根っこの末端を
注意深くよけながら
ベッドの周りを移動しなければならなかった
根っ ....
木と木が戦争を始めた
理由は
神から見れば些細な話だったが
当事者にとっては重要な案件だった
どちらの枝がより高く
空を侵しているか
どちらの根がより深く
土をまさぐっているか
....
目が覚めてカーテンを開けると
一面の大海原だ
小高い丘や孤島すらない
たった一晩で
こんなに様変わりするとは
人生何が起こるか本当にわからない
隣の布団を見るとすでにもぬけの殻で
光る鱗 ....
木が
出勤する
細長い体を折り曲げて
平べったい車のアクセルを踏む
木が
押印する
枝のような指と指の間に器用にはさみ
重要書類にぺたり、と押し付ける
木が
驚愕する
予想外の出来 ....
眠りの国に戻りたいけど
扉はすぐに閉ざされてしまった
誰も知らない金属でできていて
こじあけるのは容易ではない
布団の中で孤児になり
なくした祖国を懐かしもうか
そうこうするうち外が明るむ ....
思い出し笑いよ
いつの日か
いくつかの
別離の後の
いくつもの
沈黙の先に
やってくる
明後日の群れ
名前を忘れても
台詞を忘れても
同じ匂いの風が
頬を
....
人は変わる
かなしみか、よろこびか
雲の形が変わるように
誰かの声も変わる
その声で呼ばれても
きっと気が付かないだろう
わたしもまた
変わってしまった
にくしみか、いとおしさ ....
あなたはつづき
かつていた
誰かのように歩き
かつていた
誰かのように迷う
纏っているのは
誰かの悲しみのつづき
そうやって続けていれば
いつかは悲しみ終るかな
いや
....
答えは無人駅に
各駅停車ではないから
いつもは拾えない
長いまどろみの後でふと
車窓から外を眺めると
満開の桜並木
目がくらむ
駅の方では知っていた
足が言うことを聞かない
聖地に赴くはずが
とある浜辺に着いてしまった
あの日
地面は大きく揺れて
その日
夜空は異様に瞬いていた
おそらく
人がたくさん流されたからだ
そ ....
知らないうちに
パンがふくらんでいる
予言者が記したごとく
町の胃袋を満たすため
欲望は時に静かで
時に神聖だ
魚の風上にもおけない
言葉なんて
エラはどうした
ヒレはどうなる
どうやら夜は
終わったみたい
陸に上がった輩は
明後日の方向につぶやく
海は素敵だ
歯磨きをするように
詩を書くといい
日に三度
多い人なら五度か六度
前歯や奥歯を
乳歯や親知らずを
そして栄えある
永久歯を
いつくしむように
いましめるように
だらしない悲しみが
寝そべっている
海までの通り道に
誰かほうきで
掃いてくれる人はいませんか
と呼びかけてみるが
返事がない
仕方なくそいつを
折り紙のように折り畳ん ....
宝石は眠っている
と偉い詩人が言った
こんなに美しいものが
眠ったままとはもったいない
起こしてやろう
とハンマーを振り上げ
振り下ろす
宝石は粉々に
いよいよ深く
....
海は涙の何滴分か
確かめるには
小さなスポイトが要る
それと吸い上げた
塩水を溜めておくため
海とおんなじ大きさの
容れ物が要る
いのると
いきるは
似ている
とどくとか
とどかないとか
そういうことで
なく
しあわせでも
ふしあわせでも
ないものが
心にあたる
ことがある
貨物列車は
北北東へ
思い出すのは
遠い国のお話
どうしてあのときあんなにも
どうやらこのごろすこしずつ
骸骨になって
自分の中を旅している
好きな色だけでなく
そうでない色も
いつの日かカンバスを
汚すかもしれない
そしてそれがまた
素晴らしい絵に
仕上がってしまうかも
絵を書く技術を
持たない者こそ
画家に ....
海中に降る雪があるなら
海中に降る雨や
海の中の太陽があっても
おかしくはないだろう
いや、やはり
おかしくてたまらない
深海魚が鋭い牙で
笑いを嚙み殺している
心が凪ぐ
のを待つ
青いかなしみ色のペンが
水平線をなぞるまで
名も無きジョンの
ままでいる
あさっての次はしあさって
その次はやのあさって
と言うのだそうだ
その話を聞いたときわたしは
山明後日
と聞き間違えてしまった
なんて素敵な言葉だろう
今日を越え明日を越えたその向こうに ....
もう一度だけ
手紙を渡す機会があるなら
ひかりあれ、と書くだろう
そんな資格も
余裕もないけど
だからこそ
とは言えないか
闇あるところに光が
なんていう噂ではないか
....
一生かけて
一枚の自画像を
雨の日も晴れの日も
鉛筆を動かす
長い年月を経て
現れたのは
自分とは似ても似つかぬ
見知らぬ誰かの肖像だった
呆然と立ち尽くす
これはいった ....
ほほえみなさい
と
ある人に言われた
けれどもそんな気分になれないし
税金は高いし景気は悪いし
そういうことじゃなくて
ほほえみなさい
と
ある人に言われた
けれどもいろんなことが裏 ....
あなたの前から消えてあげよう
ごめんね
それくらいしか
してあげられなくて
案外難しいのだ
ある種の人には容易なことが
別の人には簡単でない
ただいなくなることが
こん ....
なつかしい感じの家を見かけたので
インターフォンを押してみた
現れたのは見たことある顔
なんだ、わたしじゃないか
あちらはあちらで驚いたよう
とりあえずどうぞ、と
室内へ招かれた
リビン ....
ずっとは続かない
この音楽も
あのため息も
時に染み込む
風の匂いや
夕焼けの橙
着古したパーカーに
ずっとは続かないのだ
そのいたみも
かの光も
どこにも行けない
....
あなたについて考えた
雲について考えていた
空について
青について
海はいいなあ
全部忘れて
全部覚えている
いつでも赤ん坊で
いつでも老人だ
親愛なる
深海魚たち
きみらにすべ ....
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