数年ぶりに泥のように寝た。幼い頃はよく熱を出した。その度に母にせがんで何度も熱を測った。私は体温計が好きだった。ガラス製で冷やりとしていて、何よりも、中に収まっている銀色の液体はとても美しく危なげで .... 学校では
孤独が一番怖かった
そうならないように
必死になればなるほど孤独だった

昨日のおわりが
今日のはじまりではなく
今日のおわりが
明日のはじまりではなく

あらゆる不幸を ....
全か無かになる前に
全から少しだけ引いてみる
自分にはこれだけできるはずだ
という根拠のないプライドが
少しずつ擦れていって
それでも切れることなく
切れないためにも
苦笑いして
何か ....
眠れない夜は
頭の中に白いひもを思い浮かべる
そのひもの先を
喉の奥からちょいと引っ張ってあげると
頭蓋骨がくいっと締まって
ちょうど良い具合になる
あまり引っ張りすぎると
すとんと落っ ....
どこかから迷い込んできたカブトムシは
黒々とした鎧に似合わない
くにゃりと甘い匂いがした
冷蔵庫にキウイフルーツがあったので
それでも与えて手なずけてみようかと思ったが
私の手のひらに収まら ....
隣に寝ている祖母の髪をいじるのが
幼い私が眠りにつくための儀式だった
人差し指で祖母のぱさついた白髪交じりの髪を
くるくる巻き取る
眠る寸前までやっているものだから
翌朝の祖母の髪は縮れて
 ....
暗いところから出てきた
あそこはぬくかったけど
この世界はどうなってんだい
じりじり痛いんだ

あいしたいやつもいない
あいされた記憶もない
ただ
ひからびる前に
だれかを
あいし ....
ねぼけまなこで
冷え冷えの水羊羹を食べる
思いがけない甘さに
舌が痺れて覚醒
幸せ。

夏の夜
絵本を読んでくれた母の
白い首元を
流れる汗の玉が
とても綺麗だったのを
なぜだか ....
大事な人がいなくなったら、
ひとりぼっちになったら、
どうやって耐えればいい?
悲しいことに私はひとりで、
お母さんが死ぬ前に、
ひとりでいる練習をしているんだけれど、
そうすることでお母 ....
だだっぴろい雪原の中
大の字に寝そべって
どんよりとした空を仰ぐ
雪片が目にちらつく
耳たぶがじんじんと凍みるが
寒くはない
埋もれていく雪の重さが
むしろ心地よい

小鳥のさえずり ....
それなりに成績は良いほうだけど、
発想力とか推理力とか、
所謂持って生まれた知的能力はおそらく平均以下。
それでも頭良い人の振りはできちゃうの。
最近読んだ本に小難しい小説を挙げてみたりね。
 ....
オレンジ色の光の中
ゆらゆらとただよう水面の下で
記憶の断片をつなげていく
切り取られた写真
数コマの映像
丁寧に一列につなぐ
お母さんが宝物のようにつなげてくれた

どうしようもなく ....
耐えることは得意だ
潜水は気を失うまで
長距離走は手足が千切れるまで
あなたがストップと言うまでどこまでも
痛くも痒くもない
なんともない
なんともない

無でいることは楽だ
私はひ ....
なんとかここから這い出そうと
あらん限り手を伸ばしても
握りしめるのは砂ばかりで
こっちだよこっちだよと
地底から伸びる生ぬるい手に
足首を絡めとられる

もがくたびに砂を呑み込み
喉 ....
きみの胸には
破裂しそうなほどふくらんだ風船があるから
あっぷあっぷなって苦しいね
誰かがそれをパチンとつぶそうとするから
両手いっぱい抱えて守るんだね

風船はそのままでいいよ
誰かが ....
心をひっくり返してみた
雑多なものたちが床に落ちた
ざらついた猫の舌
尖った黒曜石の破片
排水溝にこびりついた髪の毛
紫色に変色した米粒
証拠を隠滅してやろうと
慌てて足の裏で踏み潰した ....
ベランダにビニールシートを広げ
寝そべって星を見た
焼けた地面にぺたりとつけた背中の熱っぽさ
母親は綺麗ねとだけ言った
私は黙っていた
真暗な虚空に私は吸い込まれそうだった
小さな光の粒が ....
話すことは、離すこと
話すことは、放すこと

距離をとること
分離させること
解放させること
自由にさせること

はなした鬱積は、
そこら辺に垂れ流しにされているか
どこかに引っか ....
鼻をさ、ずーって吸うと、宇宙にいるみたいだよね。

少年はぽわんとした目をして、
さも気持ちよさそうに鼻をすすりつづける。

少年の鼻の穴はブラックホール。
そこから続く無限の世界は、
 ....
丁寧に裏ごしされた
かぼちゃの色が鮮やかで
牛乳の甘い香りがほんのりやさしい

鍋でことこと温めて
真白いスープ皿に注ぐ
手と手を合わせて
厳かに
ひと匙
口に含んで
こくり飲みこ ....
精神科のスタッフルームで、
あっち側にはいきたくないと、
面接を終えた上司が呟く。

あっちとこっち
異常と正常
障害者と健常者
病人と医者
クライエントとセラピスト
助けてもらう人 ....
先生、
私はめだかを飼っています。
卵から孵化させました。
毎日餌をすりつぶしてあげています。
ぱくぱくぱくぱく
みんな美味しそうに食べます。
おいかっけこはしょっちゅうです。
お母さん ....
私はね、
別にお金が欲しいわけじゃないよ。
昔のどうでもいいことを、
穿り出して責めたりしてごめんね。
こんなんでごめんね。

本当はね、
あなたの胸の中でわんわん泣けたらどんなに楽か、 ....
ほら
早くしないと
小指の先から
砂になって
あなたがまばたきする速さで
崩れ去ってしまうよ

崩れ去ってしまった私は
突風に吹かれて
跡形もなく
そこらへんの砂と混じり合って
 ....
嘘に嘘を塗り重ねて
このまま自分を守り続けたら
どこかから結び目がほつれて
するすると狡い中身が出てしまいそう

たとえほつれなくても
少しゆるんだ結び目の隙間から
顔を覗かせた何かしら ....
さっき、
ガリガリ君買った時、
本当はビニール袋いらなかったんだけど、
2円引いてもらえるし、
で、悲しいことに、
レジのマイバックのカードがなくなってたから、
せーのって感じで、
あ、 ....
ひらりひらりと人をかわして
くるりくるりと回転する
手のひらは上向きに指を揃えて
相手の胃の辺りめがけしなやかに差し出す

笑顔をぺたりと貼り付けて
別にダンスを踊っているわけじゃないけれ ....
私が一番恐ろしかったのは
少女の瞳の中に絶望が見えなかったこと
少女はあまりにあっけなく
まるで空でも飛んでみたかったのと言うかのように
とんでもないことをやってのけてしまう

死んではい ....
真っ暗な夜
今日も私はひとり
青臭い川原を歩いている。

人間たちは
時々撫でてくれ
時々餌をくれ
そして笑い声とともに
立ち去っていく。

人間たちは
時々私の尻尾を踏み
時 ....
お母さんに会いたい。

風邪を引くと、
かさついた手で私の背中を一晩中さすってくれた
お母さんに会いたい。
太陽の眩しさの中で両手を広げ、
一心不乱に走っていく私を捕まえてくれた
お母さ ....
ららばい(31)
タイトル カテゴリ Point 日付
インフルエンザに罹る散文(批評 ...216/12/12 22:30
教室自由詩016/12/6 23:03
黒曜石自由詩3*16/9/19 12:46
眠れない夜に自由詩216/9/11 0:10
さよならとありがとうを自由詩415/7/20 0:31
日常自由詩415/7/19 1:36
世界自由詩315/7/15 19:28
うだる自由詩315/7/12 22:42
お別れ自由詩015/7/6 22:59
孤独自由詩414/11/24 22:53
17歳自由詩414/11/18 21:32
つなぐ自由詩214/9/5 22:53
なんともない自由詩214/8/10 21:32
嘘っぱちの権力自由詩614/6/15 20:18
風船自由詩114/6/13 22:57
私の正体自由詩11*14/6/4 22:55
家族自由詩8*14/5/31 22:24
話す自由詩4*14/5/31 0:07
ブラックホール自由詩5*14/5/25 15:02
おすそわけ自由詩8*14/5/25 14:22
あっちとこっち自由詩8*14/5/22 22:07
生き物係自由詩7*14/5/20 22:51
つよがり自由詩3*14/5/20 7:28
タイムリミット自由詩0*14/5/19 23:16
ほつれる自由詩4*14/5/19 21:58
少年の試練自由詩6*14/5/18 14:12
渋谷のティッシュ配り自由詩5*14/5/17 22:46
私にはできないことがたくさんある自由詩3*14/5/17 19:11
野良猫自由詩3*14/5/16 9:27
会いたい自由詩10*14/5/15 21:31

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